じじぃの「くたばれトランプ・献花・BLM暴動!トランプ信者 潜入一年」

the bouquets of flowers at Mr. Floyd’s memorial withered


Pie for Minneapolis: A Small But Mighty Thing to Do

June 5, 2020 The World Needs More Pie
the bouquets of flowers at Mr. Floyd’s memorial withered, the four officers handed down their prison sentences, Minneapolis will still get free pie.
https://theworldneedsmorepie.com/2020/06/pie-for-minneapolis-small-but-mighty.html

『トランプ信者 潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』

横田増生/著 小学館 2022年発行

第5章 BLM暴動で闇に響いた銃声 より

ジョージ・フロイド事件

私がミネソタ州ミネアポリスに到着したのは、5月30日の土曜日のことだった。
黒人男性のジョージ・フロイドが、市内にある《カップ・フーズ》という食料品雑貨屋で偽札の20ドルを使おうとして、警察に通報されたのが25日。
現場に現れた白人警官のデレク・チョービン(44)が、手錠をかけられて身動きの取れないフロイドの首筋に膝を落とす。フロイドは、
「息ができない! (I can't breathe!)」
と何度も訴えるが、チョービンが9分以上、膝で気道を圧迫した結果、フロイドは命を落とす。
事件が起これば、警察が捜査をして容疑者を逮捕する。検察が起訴するか不起訴かを決め、裁判所が量刑を決める。仮に容疑者に極刑が宣告されれば、司法長官が指示し刑を執行する。
デレク・チョービンは、そうした過程をすべてすっ飛ばして、ジョージ・フロイドを殺した。そうした超法規的な手法は、1960年代まで続いた、白人による黒人への死刑(リンチ)を想起させる。ジャズシンガーのビリー・ホリディが歌った「奇妙な果実」の世界である。
チョービン以外にも3人の警官が現場にいた。周囲の目撃者が、その警官たちに、チョービンの行為を止めるようにと頼むが、誰も目の前の殺人を止めることができなかった。
現場近くに居合わせた地元の女子高生が、一部始終をスマートフォンで撮り、ソーシャルメディアに投稿。あまりに残酷な動画であったため瞬く間に拡散。動画に誘発され、抗議デモが全米のみならず、世界中を席巻する(彼女が撮った動画は21年、ピュリッツァー賞の特別賞を受賞した)。
    ・
私は当日の朝、カーナビに事件現場である《カップ・フーズ》の住所を打ち込んで出発した。
到着したのは午後6時だった。ジョージ・フロイドが殺された店の壁には、大きな似顔絵が描かれており、数多くの献花が並んでいた。
事件現場を歩いてすぐに気づいたのは、集まった人びとの人種の多様性だった。もちろん黒人が多いのだが、白人も数多くいた。アジア系アメリカ人のグループは、「アジア系がこの黒人の問題で沈黙すれば、アジア系が同意したのも同じだ。黒人たちのために立ち上がれ」と書いたプラカードを持っていた。
次に気づいたのはマスク着用率の高さだ。目測では半分以上の人がマスクを着けている。これら2つの点は、ほぼ白人だけで、マスクもしないトランプの支援者集会などとは真逆の位相にあった。

「くたばれドナルド・トランプ!」

事件現場に献花が並んでいる場所があり、そこに「くたばれトランプ 2020」というプラカードがあった。臨時の演説場からは、大音量でラップが流れてきた。参加者が踊る。サビになると全員が声を合わせて叫んだ。
「くたばれドナルド・トランプ! (Fuck Donald Trump!)」――と。
私と同年代の白人女性に話を聞かせてくれないか、とお願いすると、
「一緒にきた娘の話を聞いてくれない。彼女は少し戸惑っているみたいだから」と言う。事件現場から車で30分ほど離れた郊外に住むキャラ・ジョンソン(25)は、初めてこの黒人街に足を踏み入れた。
「人種の対立の現場を知りたいから、ここに足を運んだの。私が生まれ育った郊外は、周りの9割以上が白人で、治安もよく、人種間の緊張した関係を感じることなく今まで生きてきたわ。結婚した親戚を探しても、黒人は1人もいないわね。
 フロイド事件には本当に驚いたわ。動画も、最初はとても正視することができなかった。2、3分見るだけで、本当に、気分が悪くなったから。どうしたら、無抵抗の人間をあんな残酷なやり方で殺せるのかが分からなかった。その動画も、ここに来る前に、どうにか最後まで見たわ。まずは、事実を向き合うのが大切だと思ったから。
 事件現場に立つと、私たちじゃなく、白人が多くいることを知った。ここに集まっている白人は、この事件を黒人の問題としてではなく、社会の問題としてとらえ、共感を寄せているんだと思う」

――ここには反トランプの空気が充満しています。

「トランプがアメリカの大統領であるというのは、悪い冗談のようなものね。フロイド事件後も。抗議デモに理解を示すことなく、各州の知事に、抗議デモを抑え込むために軍隊を投入して街を制圧しろ、なんて言っているじゃない。とても正気の沙汰とは思えない。トランプには人の痛みを感じる能力が欠けているのよ。大統領選でトランプに投票することは、決してないわ」