じじぃの「チョークポイント・エネルギー・持たざる国・日本に活路はあるのか?報道1930」

食料・エネルギー自給率が低い 「持たざる国」ニッポンの生き残り策は?【6月22日(水)#報道1930】

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https://www.youtube.com/watch?v=ivKZtbuSPds

先端半導体製造技術つくば拠点オープニングシンポジウム_全体版(日本語)

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https://www.youtube.com/watch?v=VwFg3ss9AnQ&t=5s

TSMC半導体のニュースでは必ず目にする名前だ


半導体受託生産最大手TSMCが研究拠点設置 茨城 つくば

2022年6月25日 NHK 首都圏のニュース
半導体の受託生産で世界最大手のTSMCは先端半導体の研究拠点を茨城県につくりました。
今後、日本が強みを持つ製造装置や素材の知見を生かし、研究を加速させることにしています。
およそ370億円の事業費のうち、半分に相当するおよそ190億円は日本政府が支援していて、24日はTSMCや日本政府の関係者が集まり、開所式を行いました。
このなかでTSMCの魏哲家CEOは「日本と台湾は世界の半導体サプライチェーンで重要なつながりがある。この施設での協力関係がより多くのイノベーションにつながると確信している」と述べました。
TSMCジャパン3DIC研究開発センターの江本裕センター長は「日本で研究をすることで開発のスピードを高めたい」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20220624/1000081351.html

「日の丸半導体」の現在地と未来が分かる。世界を「中毒化」させる戦略に活路を見よ

2022年04月21日 ハフポスト NEWS
「日の丸半導体」時代の再来か、と思いたくもなるが、まずは日本の立ち位置と、あるべき未来を探ってみたい。科学技術政策などに詳しい東京大学大学院の鈴木一人・教授に話を聞いた。
■日本が圧倒する「川上」とは
ここまで、日本の半導体シェアが凋落の一途を辿っていること、そしてTMSC誘致が直ちに最先端技術の入手につながるわけではないことを見てきた。
しかし、絶望的な状況ばかりでもない。日本が世界トップクラスのシェアを誇る分野もある。それが半導体の「川上」、つまり製造に欠かせない材料と製造装置だ。例えば「レジスト」や「フッ化水素」など、シェアが80%、90%を超えるものも少なくない。
つまり、日本企業なしでは世界の半導体生産が滞る可能性がある。半導体が国際戦略物資となった今、一見すると有利な状況に見える。
「これはチョークポイントを握った状態だと言えます」と鈴木教授は指摘する。チョークポイントとは、 締められると供給が滞りかねないサプライチェーン上の弱点のことだ。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_622ed4d0e4b02961583d36dc

TSMC誘致だけではない、半導体戦略の狙いと誤解

2021.6.8 細川昌彦(明星大学教授)
自民党半導体戦略推進議員連盟の旗揚げは、甘利明税制調査会長を会長に、安倍晋三氏、麻生太郎氏の両首相経験者を最高顧問とする、かつてない異例の強力布陣だ。経済産業省も専門家を集めた戦略検討会議をつくって、その提言を大臣自らが発表した。
台湾積体電路製造(TSMC)の誘致が注目されているが、ポイントは他にも最先端のEUV(極端紫外線)露光装置は独占供給しているオランダのASMLが頼りだ。
台湾TSMCとオランダASMLは、サプライチェーンのチョークポイントを握ります。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00062/?P=2

報道1930

2022年6月22日 BS-TBS
【キャスター】良原安美、松原耕二 【コメンテーター】堤伸輔 【ゲスト】森本敏(元防衛大臣)、細川昌彦(明星大学教授)、鈴木一人(東京大学教授)

食糧・エネルギーが“武器化”した世界・“持たざる国”・日本に活路はあるのか

●世界トップの強みを作れ 台湾の安保戦略
台湾は最先端半導体製造が世界シェア92%を占めている。
台湾は空前の半導体投資ラッシュ。
投資額は約16兆円、TSMCなど4企業が20の新工場建設中。

●「持たざる国」日本 いま何が必要なのか

戦略物質となった台湾「半導体

●最先端半導体製造世界シェア
台湾 92% 韓国8%

国立台湾大学の教授、「台湾有事になれば工場が止まりアップルやスマートフォンが出荷されなくなる。使われているのは全部台湾の半導体だからそうした事態が起こる前に世界は未然に防ごうとするはずだ」

松原耕二、「台湾にしろ、イスラエルにしろ、スイスにしろ、生き残りをかけて必死さを感じます」
イスラエルは国土のほとんどが砂漠だが食料自給率は日本より高い。またスイスは国土のほとんどが山岳地帯だが動物性食品の食料自給率はほぼ100%。

堤伸輔、「日本のような食糧自給率が低いのは問題だ。しかし、世界が自由化された状態で動いているので国の安全を食糧自給率だけで見ることは難しい。台湾でいうと米国に留学生をたくさん出してその留学生が帰ってきて台湾TSMCを作り、バイオなどに進出していった。一方で日本では海外留学を希望するのは4パーセントしかいない。日本は何を目指すのか決められないでいる」

松原耕二、「日本に何が一番必要なのか、書いていただきました」

細川昌彦 「チョークポイント」
 チョークポイントとはこれがないと首が閉ってしまう。半導体でいうと台湾はチョークポイントを抑えている。半導体で大切なサプライチェーンはどこなのか。例えば半導体製造装置には露光装置がある。この装置はオランダが抑えている。量子コンピュータでいうと冷却装置がある。これを安定的に作り出せるか。これはフィンランドが抑えている。中国はこれらチョークポイントの技術を虎視眈々と狙っている。日本には半導体の素材、製造装置に強みを持っている。量子コンピュータでいえばソフトウェアに強い。これら技術が海外に流出しないように守っていく。

鈴木一人 「自由貿易が生命線」
 日本は石油・エネルギーはどんなに掘っても出て来ない。日本は自由貿易を守ることが大切、TPPでも米国が抜けた後も守り抜いていく。

森本敏 「日本の自主・自律性」
 日本は米国から脱却していない。例えばバイデン大統領が日本にくる。お土産は何か、それを見てから態度を決める。先日、アジアの世論調査を見た。あなたの国にとってもっとも重要なパートナーはどこか、中国だった。中国のほうが日本より信頼がある。結果的に日本は何を考えているのかわからない、となる。
https://bs.tbs.co.jp/houdou1930/

じじぃの「科学・地球_365_気象の世界ハンドブック・行動のとき・未来のシナリオ」

The RCP 8.5 Cheat: Debunking the IPCC's favorite climate-change forecast.

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6SOEs0LzZCg


Manabe pushed Japan’s supercomputer progress

October 8, 2021 The Japan News
Syukuro Manabe, a cowinner of the 2021 Nobel Prize in Physics, is not only a meteorologist but also a contributor to the development of a domestic supercomputer in the 1990s.
His contribution is now linked to the Fugaku supercomputer, the world’s fastest, developed by Japanese research institute Riken.
In the past, weather maps were generally based on observations of clouds and atmospheric pressure. Manabe thought of creating formulas to numerically predict the flows of the Earth’s atmosphere and oceans based on the laws of physics.
https://japannews.yomiuri.co.jp/society/general-news/20211008-30483/

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

行動のとき より

気候にかんする学際的で国際的な科学研究がはじまってまもなく30年、おかげでわたしたちは気候変動の正確な分析を手にすることができている。この変動の背後にくっきりと影を落としているのが産業革命だ。それを機に、化石燃料が人間活動全体に導入され、そうしてわたしたちは現在、生活様式を見なおさざるをえなくなっている。

現在進行中の転換は、おもに2つの軸に沿っている。温室効果ガス排出の軽減、さらには削減と、もはや避けられない気温上昇のさまざまな結果に、わたしたちの社会が適応することだ。

未来のシナリオの研究

2014年に発表されたIPCC第五次評価報告書は、大気中の温室効果ガス濃度による結果の変化を、4つのシナリオで紹介している。温室効果ガスに対応する社会の選択と、気候変動のコストを比較し、行政の決定者に、対処する責任をとるよううながしている。そのなかでただ1つのシナリオが、地球の平均気温の上昇を2℃に抑えられるのだが、しかし、そこにいたるにはいくつもの道をたどらなければならない。

IPCCの仕事

気候変動に関する政府間パネルIPCC)は、1988年11月、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により、G7の主導で創設された国際的組織である。課せられた業務は、気候変動を対象とした科学的研究の点検と、気候変動の影響の評価、わたしたちの社会の未来を展望して、温室効果ガス排出緩和と、気候の新しい状況に適応する戦略に取り組むことだ。

未来のための4つのオプション

IPCCの科学者が、文献として発表された300のシナリオから最終的に決定したのが、21世紀から2300年までの温室効果ガスとオゾン、エアロゾルの前躯体濃度の変化を予測した4つのタイプのシナリオ、いわゆるRCP(Radiative Concentration Pathways=代表濃度経路)シナリオだ。これら4つのRCPモデルはそれぞれ、大気中の温室効果ガス濃度の変化と、地上ですべき社会・経済対策に対応したものだ。

RCPシナリオ

RCP 2.6 これは未来にかんする最初のオプションである。放射強制力が2100年のかなり前に3W/m2でピークになり、以降、地球全体の気温上昇を2℃以下に抑える政策が功を奏して排出量は減少に転じる。
RCP 4.5 これは2100年以降に放射強制力が4.5W/m2で安定する予測で、平均気温上昇は最高で2.6℃。
RCP 6 これは2100年以降に放射強制力が6W/m2としているが、この場合の気温上昇は1.4℃から3.1℃のあいだである。
RCP 8.5 これは2100年以降に放射強制力が8.5W/m2になるもので、平均気温の上昇も高く2.6℃から4.8℃。もちろん最悪のシナリオである。

すべては生活様式しだい

気象学者がこれらRCPに対応した気候の展望に着手したのに対し、それと並行して、社会学者や経済学者も社会的・経済的発展(都市化、消費、輸送、人口…)のシナリオ作成に着手、各RCPの温室効果ガス排出に対応する緩和と適応にかかるコストを計算した。これらの研究は、5種類のシナリオで発表された。
それがSSP(Shared Socio-economic Pathways=共通社会経済経路)シナリオで、各RCPに応じて、社会変化のさまざまな組みあわせを描いたものだ。それによると、一部のSSPはRCPの排出モデルと部分的に両立するが、ほかはそうではなく――つまり、想定されたSSPに対応する生活様式では、温室効果ガス排出量を必要なレベルに抑えることができないのである。このことからわかるのは、政治の責任者や経済の決定権者のほうが、より政策を決断できる立場にいるということだ。

じじぃの「ダーウィン・モースの大森貝塚!150年前の科学誌『NATURE』には何が」

Omori Shell Mounds 大森貝墟の碑 Edward S. Morse "Finding the First Forager" Forager Japan Tour Part 1

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tGjSlEa93_I

Edward S. Morse Memorial - Omori Shell Mounds Garden - Omori


150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか 紀伊國屋書店

瀧澤 美奈子【著】
【目次】
序 なぜ今、150年前の科学雑誌を読むのか(本書の目的)
第1章 Nature創刊に託された思い
    ・
第7章 モースの大森貝塚
第8章 Nature誌上に見る150年前の日本
付録 初期のNatureに何度も載った日本人
【感想・レビュー】
●うーん、面白い。最初のカッコウの卵の色を巡るやりとりからずっと。ダーウィンの「種の起源」対するオーウェンのリアクションは、嫉妬なのかな?分かっていたけど、発明品のほとんどが、海の向こう。この漢字だって中国の漢民族。日本の再興がロケットスタートできたのは、西洋文明のおかげと肝に銘じたい。大森貝塚の知られざる事実には驚いたし、モースが本を寄贈してくれたことに感謝。

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『150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか』

瀧澤美奈子/著 ベレ出版 2019年発行

第7章 モースの大森貝塚 より

大森貝塚の発見をnatureで報告

1877年6月19日、2日前に日本に到着したばかりのアメリカ人動物学者、エドワード・モース(Edward Sylvester Morse:1838-1925)が大森貝塚を発見しました。大森貝塚は、今では縄文時代後期から末期の貝塚として広く知られています。
その大森貝塚について、発見から5ヵ月後の1877年11月29日号のnatureに、「初期の日本人の痕跡」という題名の報告記事が出ています。日本に滞在していたモース本人が、発掘を始めてから5日後の9月21日に書いたものです。貝塚発見に至った経緯と、発掘の様子や発掘物についてのことが明快に書かれていますので、本書で紹介したいと思います。
すでに明治維新から10年近くたっていましたが、欧米の学術界にとって日本はまだ研究対象として新鮮だったようで、次のように始まります。

  日本の起源に、非常に大きな関心が寄せられている。日本の初期の人種に関するどんな情報でも、Natureの読者は興味があるだろう。貝塚(shell heap)の発見と調査は、この島を先史時代に占拠した人種についての多くの足跡を明らかにするだろう。

そして大森貝塚を発見した経緯については、次のように述べています。

  今年の6月、初めて東京に向かったとき、汽車の窓から大森と呼ばれる駅の近くで、貝塚の細かい部分を見つけました。それは私がニューイングランドの海岸沿いでよく研究したものと似ており、すぐに貝塚だと認識できた。

のちほど述べるモースの報告書によると、モースは来日したときから「貝塚がないかと注意を怠らなかった」といいます。

大森貝塚に関する間違ったレビュー

それから3年後、モースの大森貝塚を話題にした記事が1880年2月12日号のnatureに掲載されました。幕末にイギリス海軍軍医として来日し、帰国後は日本文学を翻訳したことで知られるフレデリック・ディキンズという人物による投稿です。
なぜこのタイミングでnatureに大森貝塚の話題が取り上げられたかというと、前年(1879年)の9月に、モースによって発掘報告書が発表されたからです。

モースの代理投稿をしたダーウィン

その2か月後に、ついにモースからのディキンズへの反論がnatureの読者投稿欄に掲載されます。1880年4月15日です。
ただし、これは少し変わった体裁の投稿でした。署名がモースではなく、あのチャールズ・ダーウィンなのです。
モースがディキンズのレビューに異議を申し立てる手紙をダーウィンに送り、ダーウィンがその私信を「モースが公表されることを願っている」としてnatureの読者投稿欄に投稿したのです。
なぜモースが直接nature編集部宛てに投稿しなかったのかはわかりません。投稿したのに掲載されなかったのかもしれません。このころのnatureの読者投稿欄には投稿が殺到していたようで、「なるべく短い文章で書いてほしい」という編集部からの注意書きがついています。そういう状況ですので、ダーウィンの投稿なら、多少長くても掲載されるという判断をしたのかもしれません。ダーウィンやハクスリーは、たびたびこの種の代理投稿をしています。
ダーウィンはモースのために一肌脱いだわけですが、モースとダーウィンはそもそもどういう関係だったのかというと、モースはダーウィンの進化論を信奉しており、二人には親交がありました。そのため、モースは、日本滞在中には講義や講演で熱心に進化論を日本人にも紹介しました。
面白いはモースじゃもともと米国動物学の祖といわれたルイ・アガシーの弟子です。アガシーは、ダーウィンの進化論に反対する立場をとっていたことが知れ渡っていました。ふつうに考えれば、モースもその立場に従うところです。
しかし、モースは腕足類の研究を重ね、自分で進化論をテストするうちに、徐々にその正しさを確信し、結果として師匠の立場に背いたのです。

じじぃの「科学・地球_364_気象の世界ハンドブック・気候温暖化の衝撃・気候難民と人口の移動」

Bangladesh town offers new life to climate migrants

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=KEiKMLqPoTg

Climate Change and Environmental Risk Atlas 2013


Climate Change and Environmental Risk Atlas

30 October 2013 Development Workshop
The economic impacts of climate change will be most keenly felt by Bangladesh (1st and most at risk), Guinea-Bissau (2nd), Sierra Leone (3rd), Haiti (4th), South Sudan (5th), Nigeria (6th), DR Congo (7th), Cambodia (8th), Philippines (9th) and Ethiopia (10th), which make up the 10 most at risk countries out of the 193 rated by the CCVI. However, other important growth markets at risk include: India (20th), Pakistan (24th) and Viet Nam (26th) in the ‘extreme risk’ category, in addition to Indonesia (38th), Thailand (45th), Kenya (56th) and, most significantly, China (61st), all classified at ‘high risk.’
https://www.dwf.org/en/blog/climate-change-and-environmental-risk-atlas

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

気候温暖化の衝撃 より

2℃、3℃、4℃…、と予想される平均気温の上昇温度は、一般の目にはささやかに見えるのかもしれない。とくに、冬の北半球から夏の南半球に行く機会があり、30℃から40℃の高温差を実感できる人にとってはそうだろう。しかし、平均気温が2℃上昇――今世紀末に人類を待ち受けるもっとも楽観的な予想値――すれば、人間活動全体に大きな打撃をあたえるだろう。すでに記録された平均気温の上昇[IPCCの報告では1800-2012期で0.85℃上昇]でさえ、異常気象、氷の融解、海水面の上昇、人口移動、動・植物の消滅、病気の蔓延…などが起きている。

大気は確実に温暖化しており、この傾向が今後も長期にわたって継続するのは避けられないだろう。仮に、排出される二酸化炭素(わたしたちがますます多く排出しつづけている)の一部が、比較的速く大洋に吸収されるとしても、排出量の25パーセントは何千年にもわたって大気中に残るだろう。そうなるとわたしたちは、温暖化して、平均降雨量が変化する地球に住むすべを学ばなければならないだろう。

気候難民と人口の移動

気候難民は、複雑でさまざまな状況から故郷をあとにしている。突然の異常気象(ハリケーン、暴風雨、洪水など)に襲われたからであり、国土や生態系が徐々に、ゆっくりと悪化(干ばつ、海水面の上昇、氷の融解…)したからでもある。被害者の大半は、地域内で移住するのだが、ただし、居住区域が浸水したか浸水しつつあり、戻れる希望のない人々は別である。

地域全体がおびやかされる

2008年から2013年にかけて、気候変動の圧力で、119ヵ国の平均2700万人が自宅をあとにし逃げなければならなかった。中国では、ゴミ砂漠が年に1万平方キロメートル近く拡張し、北京に近づいている。北極では永久凍土が融解して、北極圏の人々は集団脱出を余儀なくされている。気候変動にもっとも弱い国々の状況は、二酸化炭素を大量に排出する国々とは大きくかけ離れている。
デルタ地方。
海水面の上昇でとりわけ影響を受けるのは、広大なデルタ地方で、人口が密集している地域が多い。たとえば、ガンジス川ブラマプトラ川のデルタは、インドとバングラデシュにまたがり、フランスの半分ほどの広さがある。その海面から高さわずか12メートルにも満たない土地に、1億5200万人のバングラデシュ人が住み、うち約10パーセントの土地は海面より低い。現在の水面上昇のペースでは、今後2100年までに[2050年との予測も出た]バングラデシュの国の面積の17パーセントが水に沈むといわれている。いっぽうナイル川のデルタでは、海面から2メートル以下の高さの土地2万4000平方メートルに1940万人が住み、そこでエジプトの農業の40パーセントが生産されている。もし海面が1メートル上昇したら、デルタの4分の1は浸水し、国の人口の10パーセントは移住を余儀なくされるだろう。それだけではない。今後2100年までに地域の土地の60パーセントで、地下水の塩害の影響がおよぶだろう。

問題をはらむ人口移動

国民的な移動。
気候変動が原因で、数百万人の人々が住居をすて、多くはいちばん近くの被害をまぬがれた都市に移動している。もっとも顕著な大陸はアジアで、2014年は気候変動による国内移住者の87パーセントを占めている。次に位置するのがアフリカだが、しかし人口が2050年までに倍増すると予想されるこの大陸では、人口移動によるリスクはほかの地域より速く高まるだろう。アフリカでは巨大都市周辺で人口が増えつづけており、資源や基本のインフラへのアクセスが混乱し、それとともに貧困国で緊張が高まるリスクがある。
先進国も例外ではない。日本では平成25年台風18号(アジア名マンニイ)で26万人が非難を強いられ、2013年、オクラホマ州アメリカ)の竜巻では21万8500人が非難している…。ヨーロッパでも、1998年から2002年にかけて、洪水で50万人が移動を強いられた。しかし、いくつかの大災害が新聞の一面を飾っても(思い出すのは2005年、ニューオーリンズを襲ったハリケーンカトリーナ)、先進国には非難した住民を管理する手段があるのに対し、途上国(低開発国)はもちあわせていないのが実情だ。
気候難民を受け入れる負担が重くのしかかっているのは、ほとんどが途上国である。国連によると、今後2050年までに約1億5000万人が気候難民になるとされている。

じじぃの「序・創刊後すぐに日本を特集!150年前の科学誌『NATURE』には何が」

科学のネットワーク:Natureの論文の150年

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GW4s58u8PZo

Nature, 1888 南方旧蔵の『ネイチャー』誌表紙


[Photo: cover logo of Nature, 1888] 南方旧蔵の『ネイチャー』誌表紙

https://www.pinterest.jp/pin/491103534349767075/

『いつのまにやら本の虫』

出久根達郎/著 講談社 1998年発行

猛勉 より

民俗学者にして植物学者の南方熊楠(みなかたくまぐす)は、18歳の日記の巻頭に、「憲法」を記した。自分自身のおきてである。
一、朝六時に起き夜十一時に臥(が)す。 一、今日出来ることは明日迄のばさず、万事敏捷なるべし。 一、間食を厳禁す。但し日曜は許す。 一、飯は三盃(杯)より以上なるべからず。 一、土曜、日曜及び其の他休日には図書館へ行く。
頭の中に百科事典が詰まっている、と言われた熊楠も、このころは、土日と休日くらいしか図書館にでかけなかったのだ。
10年後、熊楠は英国にいる。大英博物館図書館に、5月から連日通い独学。日記は次の如し。
「七月八日 二時四十分より七時まで書籍室」 「九日 一時七分より七時迄」 「十日 十二時五十分より七時迄」 「十一日 二時より七時」 「十二日 一時四十五分より七時」 「十三日 十一時二十分より七時」
休館日の日曜を除いて、7時閉館まで居る。

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150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか 紀伊國屋書店

瀧澤 美奈子【著】
【目次】
序 なぜ今、150年前の科学雑誌を読むのか(本書の目的)
第1章 Nature創刊に託された思い
    ・
第7章 モースの大森貝塚
第8章 Nature誌上に見る150年前の日本
付録 初期のNatureに何度も載った日本人
【感想・レビュー】
●150年前の雑誌「NATURE」に書かれていた内容から現代を読み解く一冊。「NATURE」はイギリスの科学雑誌で、ノーベル賞などのさまざまな論文を掲載してきた、150年間続いていることがそもそもの驚き。初期の「NATURE」は、現代のSNSのごとく雑誌上で専門家・一般読者を巻き込んだ論争が掲載されていたり、明治維新直後の日本が描かれていたり非常に面白かった。南方熊楠の論文が大量に掲載されていたという事実も初めて知った。

                  • -

『150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか』

瀧澤美奈子/著 ベレ出版 2019年発行

序 なぜ今、150年前の科学雑誌を読むのか(本書の目的) より

創刊後すぐに日本を特集

natureは1869年11月4日にイギリスのアマチュア天文家、ノーマン・ロッキャーが出版社のマクミラン社の資金提供を受けて創刊し、以降毎週木曜に刊行されました。
natureの創刊がちょうど150年前であったことに加え、それが日本では明治維新(明治に改元された年)からわずか1年しかたっていないことを知ったとき、私は胸が高鳴るのを感じました。
鎖国を解いて近代化への道を歩みはじめたばかりの日本は、どのようにして科学や技術を導入したのでしょうか、多くの日本人がヨーロッパに国費派遣され、西洋の知識を貪欲に学んだ時代です。そのころ、ヨーロッパの現地ではいったい何が起きていたのでしょうか。そこで日本人は科学や技術をどのようなものとして学んだのでしょうか。
そんな思いで創刊当時のnatureのページを繰ってみて驚いたのは、西洋の人々もまた日本を好奇の目で凝視していたということです。創刊からまもなく、natureには日本の特集記事が組まれ、江戸を中心とした当時の日本の姿が生き生きと描かれていました。
詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、そこに描かれている日本は、それまで私がイメージしていたものとはだいぶ違いました。
私は大学の理工系の学部で教鞭をとる傍ら、講演することもありますが、いくつかの大学の理工学部で当時のnatureに書いてあったことを話してみました。すると学生は「へえー」と言って目を輝かせていました。それはたぶん、私たち自身が知らない文明開化前の日本人や日本文化の素の姿を、西洋のフィルターを通して見せてくれているからなのだと気づいたのです。
当時の日本のことは最終章に紹介してあります。さらにその章ではnature創刊後の10年間に日本がどのように登場しているかも追いました。日本が猛烈な勢いで変わっていくのと同時に、彼らの認識が変容していった様子が浮かび上がり、この先の私たちの進むべき方向も、少し見えた気がします。

じじぃの「科学・地球_363_気象の世界ハンドブック・気候温暖化の衝撃・海の生物多様性が危機」

グレートバリアリーフのサンゴ白化、過去最大規模に

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=RgPJAQRRQ6s

The map, detailing coral loss on Great Barrier Reef


Great Barrier Reef Dying, Suffering Worst Coral Bleaching Ever Recorded

11/28/16 International Business Times
The most impacted zone stretches 700 kilometers (about 435 miles) of the northern area of the Great Barrier Reef, scientists say. That region lost an average of 67 percent of its shallow-water corals in less than a year.
https://www.ibtimes.com/great-barrier-reef-dying-suffering-worst-coral-bleaching-ever-recorded-2451877

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

気候温暖化の衝撃 より

2℃、3℃、4℃…、と予想される平均気温の上昇温度は、一般の目にはささやかに見えるのかもしれない。とくに、冬の北半球から夏の南半球に行く機会があり、30℃から40℃の高温差を実感できる人にとってはそうだろう。しかし、平均気温が2℃上昇――今世紀末に人類を待ち受けるもっとも楽観的な予想値――すれば、人間活動全体に大きな打撃をあたえるだろう。すでに記録された平均気温の上昇[IPCCの報告では1800-2012期で0.85℃上昇]でさえ、異常気象、氷の融解、海水面の上昇、人口移動、動・植物の消滅、病気の蔓延…などが起きている。

大気は確実に温暖化しており、この傾向が今後も長期にわたって継続するのは避けられないだろう。仮に、排出される二酸化炭素(わたしたちがますます多く排出しつづけている)の一部が、比較的速く大洋に吸収されるとしても、排出量の25パーセントは何千年にもわたって大気中に残るだろう。そうなるとわたしたちは、温暖化して、平均降雨量が変化する地球に住むすべを学ばなければならないだろう。

海の生物多様性が危機に瀕している?

海の生物多様性は、「健全な」大洋(光合成、魚の繁殖…など)に欠かせないものである。気候変動が海域の豊かさと多様性、何百万種という魚の分布を変え、それだけではなく、食糧状況や生育、繁殖、また、魚類同士のあいだで保たれている関係も変えている。一部の海域では、生物多様性の損失や、海のバイオマスの減少がいちじるしくなっている。

温暖化に直面する海の種――適応、移動、または消滅

大洋は地球最大の生物圏で、35億年前、最初の生命があらわれたところでもある。水温や海水の酸性化、酸素濃度の変化は、海の生物の代謝や種のライフサイクル、被食者と捕食者の関係、そして生息環境に多大な影響をあたえている。
たとえば、ここ50年間で、生命の春の躍動――植物・動物プランクトンが最大限に繁殖・動物プランクトンが最大限に繁殖、無脊椎動物や魚類、鳥類の繁殖と移動など――が以前より早くなり、10年で平均4.4日前倒しになっている。一部の種は適応し、ほかの種は新しい生物圏へ移動するか、または消滅している。一般に、魚と海の無脊椎動物は、温暖化に対応して、より高緯度か、より深海部へと向かっている。そんな異種混合の大集団が極地へ移動していく平均距離は、10年で72キロメートル。こうして北のベーリング海バレンツ海、北海には暖かい海の種が増大し、極地的に生物多様性が豊かになっている。
いっぽう、異常気象による浸食で沿岸の生息環境は劣化し、二酸化炭素を吸収して種の繁殖には好条件のマングローブや海草などが衰退している。海水の酸性化では、骨格やカルシウムの殻のある海の生物(植物性プランクトン、甲殻類、軟体動物)に害をあたえている。

危機に瀕するサンゴ

サンゴ礁が大洋の表面積に占める割合はわずか(0.08から0.16パーセント)なのだが、そこには既知の海の生物の3分の1近くが生息している。水温の変化や海の酸性化にはきわめて敏感で、骨格の形成や、繁殖などの生命機能が乱されている。算定では、サンゴ礁の約20パーセントが消失し、25パーセントが現時点で危機に瀕し、仮に保護活動がいっさい行なわれなければ、2050年までにさらに25パーセントが危機におちいるといわれている。

じじぃの「アメリカ人の陰謀論好き・Qアノン!トランプ信者 潜入一年」

【衝撃】トランプを崇める、「Qアノン」に会ってみた

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Ek0TrvNDzB4

QAnon Is a Wolf in Wolf’s Clothing


QAnon Is a Wolf in Wolf’s Clothing

AUGUST 26, 2020 Christianity Today
He doesn’t know much about the QAnon conspiracy theory, President Trump told a reporter this month. But “I understand they like me very much, which I appreciate,” he added.
“I have heard that it is gaining in popularity, and from what I hear, these are people … that love our country.”
https://www.christianitytoday.com/ct/2020/august-web-only/qanon-is-wolf-in-wolfs-clothing.html

今もトランプは米保守派の1番人気! 集会には「金ぴか像」まで登場

2022年3月9日 Yahoo!ニュース
2月24~27日にフロリダ州オーランドで開かれた保守派の政治家や活動家の年次集会、保守政治活動会議(CPAC)会場で丁寧に布拭きされる黄金色のトランプ前米大統領像。26日には本物のトランプも登場して演説した。
2024年の次期大統領選に向けた共和党候補指名争いの模擬投票では、トランプが59%の支持を得てトップに。根強い人気を見せつけた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/40ff35932ce6f475b2bc7f7f0d9095d04786f2a9

『トランプ信者 潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』

横田増生/著 小学館 2022年発行

第10章 Qアノンと行く「連邦議事堂襲撃」への道 より

ワシントンDCに向かうためライシングのアパートを早朝に出発し、デトロイトの空港で飛行機を乗り換えたのは、5日の朝8時台のこと。
3人掛けの座席で私が座るのは通路側。真ん中の席は空席で、窓際には白人女性が座っていた。朝食代わりなのかラズベリーパンを食べながら、数独の升目を埋めていた。
ブルーのシャツの上に同系色のジャケットを着ていた女性の胸元を見ると、ビーズ細工で《Qanon》の文字があった。
私は慌てて名刺を探し出し。自己紹介してから、
「Qアノンの信者なんですか?」
と尋ねた。
「そうよ、Qアノンの信者(フォロワー)よ」
と、笑顔で答えたのは、ミシガン州ミルフォードに住むホーリー・スパルディング(47)だった。
スパルディングが、トランプ再選を後押しするため、ワシントンDCに行くのは、3回目になる。《アメリカを救え》という集会が開催され、それに参加していたのだ。前の2回は知り合いと車でワシントンDCに来たが、今回は、これまで貯めた航空会社のマイレージを使い飛行機に乗った。
QアノンのQとは集団の主宰者を差し、そのQが出す質問に対し、匿名(アノニマス)の信者がその答えを探し出す。Qアノンとは、小児性愛者と闘うという極右の陰謀論集団のことだ。FBIは、Qアノンが国内テロの脅威になり得るととらえている。
私は1年近く、このQアノンの信者に取材したいと思っていたのだが、それが、あっさりと叶った。

アメリカ人の陰謀論好き

Qアノンにしろ、”闇の政府(ディープステイと)”にしろ、アメリカ人はどうしてここまで陰謀論にのめり込むのか。日本人からすると、アメリカ人の陰謀論好きは理解を超えている。だが、そこにはアメリカの歴史が深く絡んでいた。アメリカ人の陰謀論好きには、この国の原型がキリスト教の信教の自由のために作られたことが深い関係している。
また、キリスト教陰謀論には親和性がある。
キリスト教では、この世界の背後には神という目には見えない支配者がいて、自らの意思で宇宙全体を導き、計画を実行しているというのが、その基本的な考え方。現実世界で見えている点と点を結ぶと、いつの間にか大きな絵が浮かび上がってくる。これは陰謀論と同じ構図だ。
アメリカは近代の合理主義と啓蒙主義から生まれた国なので、物事はすべて合理的に進むという歴史的認識がある。だから、少しでも不合理なことや、意図せざる物事が起き始めると、何かがおかしいのではないか、だれかがよからぬことを企んでいるのではないかという論理が自然に発生する。
説明のつかないものを、どうにかして納得しようとする時、キリスト教の基本構造とアメリカ固有の合理主義史観が合わさることで、陰謀論の温床ができあがる(「中央公論」21年5月号 国際基督教大学教授・森本あんり談)。
アメリカ史において陰謀論の対象と対象とされてきたのが、魔女やカトリック教徒、フリーメイソンアメリカ先住民などである。
トランプが2016年に大統領になったことと、陰謀論アメリカの隅ずみにまで浸透したことには深い関係がある。

唯一のデモ

ちょうど、バイデンが就任演説をしているころ、私は、議事堂から徒歩数分ほど離れたアムトラックのユニオン駅前にある公園で、この日、唯一実施していたデモを取材していた。
中絶反対を掲げる南部のキリスト教右派で白人男性中心の団体。総勢10人ほどが、
「中絶は殺人」
「悔い改めよ、さもなくば消え去れ」
「同性間の性行為反対、イスラム教反対」
「どうしてお前が地獄に行かなければならないのかを教えてやろう」
――といった過激なメッセージが書かれたプラカードを掲げていた。
彼らの前には、同じぐらいの数のデモに反対する人たちが対峙している。
キリスト教右派のデモと大統領の就任式に、どのような関係があるというのか、
トランプは、中絶反対を最も鮮明に打ち出した大統領だった。ちょうど1年前トランプは現職の大統領として初めて、中絶反対団体《命のための行進》に参加して、演説をした。中絶反対派の票を固めるためだった。
私はここで、6月のミネアポリスの取材で知り合った在来のカメラマンと半年ぶりに顔を合わせた。彼は私にこう教えてくれた。
「「ヤツらは、ガチガチのトランプ支持者たちで、南部でトランプが集会を開くと、必ず現れる連中です。僕は見飽きているので、写真を撮る気にもならないですね」
トランプの再選という夢が破れた鉄板支持者が、その主張を中絶反対と衣替えし、怪気炎を上げる。

信者との再会

就任式の翌日21日、議事堂やホワイトハウス周辺の柵はまだ残っていたが、多くの柵は取り外されていた。前夜、テレビに映っていたリンカーン記念堂まで行けそうだ。リンカーン記念堂は、デモや集会が開かれる場所だ。
そこまで行けば、もしかしたら、トランプ信者に出会えるかもしれない。
私は毛糸の帽子を被り、リンカーン記念堂に向かった。
しかし、そう考えたのは私1人ではなかった。
記念堂には多くの軍人が自動小銃を構えて立っており、トランプ信者が近づく隙もなかった。
やっぱりだめか、と思っていると、見覚えのある長身の男性が、角笛を手に、祈るように跪(ひざまず)いている。
プロバスケットボール選手のデービッド・ウッドである。
私が、この前は話を聞かせてくれてありがとう、と言うと、一拍の間があって、あぁ君か、という表情が返ってきた。

――あなたは先日、つまり就任式の翌日の21日、バイデンが辞任すると言いましたが、その兆候はないようですね。

「そうだね。私も本当にびっくりしているんだ。けれど、それはすべて神の計らいなんだ。神がどこまで深く、物事の真相を見きわめようとしているのかは、だれにも分からない。私は、トランプが3月4日に大統領になる、という情報をつかんでいるんだがね」
3月4日就任説、初代大統領のジョージ・ワシントンからフランクリン・D・ルーズベルトまで、大統領の就任式が3月4日に行われていたことから湧き起ってきた新たな陰謀論である。陰謀論というより、ここまでくると単なる願望、いや妄想か。
私がそう思っていると、極東から来た無信心なジャーナリストを憐れんでか、ウッドはこう話し始めた。
「君は、自分の髪の毛の数が何本あるのか知っているかい? 神は君の髪の毛の本数まで正確に知っているんだ。それくらい、神は君のことを深く愛しているんだよ。分かるかい。じゃあ、ここで一緒にお祈りをしよう」
そういうウッドに敬意を表して、私は被っていた毛糸の帽子を脱ぎ、彼の言葉を復唱した。