じじぃの「科学夜話・第5講・奇跡的な宇宙・宇宙定数・ダークエネルギーとは?宇宙の雑学」

【気づいたんや】宇宙が存在し生命が偶然生まれるとは都合良すぎでは?【ゆっくり解説】

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https://www.youtube.com/watch?v=KWHhbZBsXhw

ダークエネルギーの量は変化していた?


ダークエネルギーの量は変化していた? 膨張する宇宙の謎に一石投じる発見か NASA

2019年2月1日 ライブドアニュース
米航空宇宙局(NASA)は1月30日、運営するチャンドラX線観測衛星から取得したデータを分析し、宇宙の膨張を加速させる仮想上の「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」が時間とともに変化していることを明らかにした。
今回の発見が膨張する宇宙の謎に一石を投じることが期待される。
https://news.livedoor.com/article/detail/15960858/

『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第5講 微調整問題と人間原理 より

奇跡的な宇宙

我々の宇宙だけでなく、たくさんの宇宙がある、それも無数にあるという「マルチバース論」が出てくるのには、必然性があると言える背景があります。

単純に言うと、この宇宙があまりにも奇跡的な存在だということです。生命や人間が存在する宇宙は、ものすごく大変な条件を重ねなければできません。

それなのに、現実にこの宇宙が存在するのはなぜかと考えたとき、マルチバースは1つの解決策になります。無数に宇宙があれば、その中に1つくらい奇跡の宇宙があってもおかしくありません。ある意味では、この奇跡的な宇宙への疑問を、安易に解決する方法がマルチバースなのです。

ではどのくらい奇跡的なんでしょうか。今回はその話をします。

測定してはじめて決まる「パラメータ」

自然界には、測定によってはじめて決まる定数がいくつもあります。物理の法則には、こうした物理定数が必ず含まれています。

たとえば、電気力は電子の電荷がどのくらいかによって決まります。電荷とは粒子や物体が帯びている電気の量のことです。電気量を測ると、最小単位の整数倍になっており、その最小単位を電気素量と言います。電気素量はどこで測っても同じです。一定の値が見つかるわけですが、なぜその値なのかという理由は見つかりません。理論上は、その値である必然性がなく、どんな値であってもいいはずです。

重力定数もそうです。
ニュートンが見つけた「万有引力の法則」は、万有引力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。この関係における比例定数は重力定数と呼ばれます。重力定数は、測定によって決まったものであって、この値でなければならない理由がありません。
    ・
どうも自然界のパラメータは、この宇宙に生命が誕生するように微調整されているふうに感じます。なぜか我々にとって都合のいい値になっているんです。まるで神様がパラメータを自由に変えることのできる機械を持っていて、生命を誕生させようと細かく調整しているかのようです。パラメータの値には必然性が見つからないため、いまの物理学では説明ができないのです。

これを「宇宙の微調整問題」と呼びます。
宇宙には、測定してはじめてわあるパラメータが、現状見つかっているもので40個あります。そのすべてが、この宇宙を成り立たせるのに微妙な値をなっています。
いくつかのパラメータを見ていきましょう。

トリプル・アルファ反応

生命にとって、もっとも重要な元素の1つが炭素です。炭素が無ければ、今の生命は確実に存在していません。

炭素原子核は、星の中でヘリウムヘリウム原子核が3つ集まることで作られます。
    ・
トリプル・アルファ反応によって炭素が作られることを見出したのはイギリスの天文学者フレッド・ホイルなのですが、この反応を起こすためには、炭素がある特定の値のエネルギー順位(具体的には7654.2keV)を持たないと成り立たないことがわかりました。

人間原理の成功例

ホイルの考え方は典型的な「人間原理」です。

前回も紹介した人間原理です。あらためて、人間原理とは、「この宇宙が人間に適しているのは、そうでない人間が宇宙を観測できないから」という論理を使って宇宙や物理を説明する考え方です。要するに、「人間が存在するんだから、宇宙はこうなっていなさい」ということです。

人間原理には大きく分けて「弱い人間原理」と「強い人間原理」があります。

「弱い人間原理」は、現在の宇宙の年齢や太陽系の位置関係などは、偶然に決まったものではなく、それを観測している人間がいるという前提のもとに定まっているという考え方です。
    ・
対して「強い人間原理」は、宇宙の法則や定数は人間が生まれるようなものでなくてはならないという考え方です。人間の存在を理由に「だからこうなっている」と説明するので、順番が逆になっているんです。

ホイルの予言(炭素の元素合成過程を説明するために理論的に存在を予言した)は「強い人間原理」の典型例です。それまで、この論理で予言をした人はいなかったので、みんな半信半疑でした。というより疑っていました。ところが、実験してみたら本当にそうだったので驚いたんです。

俄然「強い人間原理」に期待が持てそうな感じがしますが、そうでもありませんでした。同じ考え方でうまくいった例は他にないのです。ホイルの予言が唯一の成功例です。

とてつもない精度で調整されている宇宙定数

いろいろとお話ししてきましたが、最大級の微調整問題、つまり、すごい精度で調整されているとしか思えないのが、「宇宙定数」と呼ばれるパラメータです。

宇宙定数とは、もともとアインシュタイン一般相対性理論を最初に応用したときに導入した定数です。

アインシュタインは、宇宙は、膨張も収縮もしない、静的なものだと想定していました。
ただ、アインシュタインが提案した一般相対性理論の基本方程式をそのまま宇宙に当てはめても、静的な宇宙になってくれません。放っておけば自分自身の重力で自然い収縮していってしまうからです。そこで1つの項を付け加えてつじつまを合わせたんです。それが「宇宙項」と呼ばれるものです。宇宙定数は、この宇宙項にかかっている係数のことです。

宇宙定数は正の値を持つと、宇宙空間が膨脹することになります。それに対して、物質は宇宙空間を収縮させる働きをします。2つの力が釣り合って、宇宙は静的な状態に保たれるとアインシュタインは考えていました。

しかし、現実の宇宙はアインシュタインが考えていたような静的なものではありませんでした。すでにみなさんも御存じの通り、宇宙は膨脹していることがわかって、アインシュタインは宇宙項を捨ててしまいました。のちに「わが生涯で最大の過ち」と語ったとすら言われています。

アインシュタインは捨ててしまったのですが、宇宙項は理論的には存在可能です。膨脹する宇宙の中に宇宙項があっても矛盾はありません。いや、やはり宇宙項があったほうがいいのではないか。そういう議論が長いことあったんです。そして宇宙が加速膨脹していることがわかると、やっぱり宇宙項、宇宙定数がないと困る、という流れになってきました。宇宙の膨脹のあまりに急激な加速は、宇宙項がないと説明できない、ということです。

宇宙の膨脹は加速している……そう、第2講でお話ししたダークエネルギーです。
ダークエネルギーは、宇宙全体に広がっている未知のエネルギーのことでしたね。

観測はできていないのですが、宇宙全体にごく薄いエネルギーが満ちあふれていることが必要です。宇宙の膨脹が加速していることは観測事実です。膨脹が加速するためには、宇宙に薄いエネルギーがなくてはなりません。そうでなければ宇宙の膨張は遅くなる一方です。

ダークエネルギーが存在すると仮定して計算すると、観測とピッタリ合うのです。
そんな取ってつけたようなものは気に食わないと言っていた人たちも、結局これ以外に加速膨脹を説明できないので、受け入れざるをえない状況です。

しかし、ダークエネルギーとはいったい何なのか。
ダークエネルギーを理論的に解明することは、現代の物理学の大きな課題の1つです。
宇宙定数はダークエネルギーの有力候補と言えます。ただ、その値があまりにも小さいのがどうにも不自然なんです。
観測から見積もられた宇宙定数の値は1.109 X 10-34m-2という小ささです。

宇宙定数のエネルギーは、真空の空間がもっているエネルギーだと解釈できるのですが、量子論から予言される真空のエネルギーは、宇宙定数のエネルギー量より123桁大きくなるんです。
    ・
この宇宙定数は、非常に問題視されています。想像を絶する微調整が働いている宇宙定数を方程式に勝手に付け加えて、それで宇宙の性質を説明したことになるのでしょうか。

本当は、もっと深い理由とメカニズムがあるのかもしれません。宇宙項を入れて計算することは簡単なのですが、その物理的根拠ははっきりしません。ダークエネルギーの正体も謎に包まれたままです。

この微調整の問題を本当の意味で解決することが、ダークエネルギーの正体を暴くことにつながるでしょう。

なお、宇宙定数の微調整問題をマルチバースによって解決しようとするなら、少なくとも10の123乗個以上の宇宙が必要です。同時に他の微調整問題も解決するためには、もっと多くの宇宙が必要になるでしょう。

もちろん微調整問題の解決方はマルチバースだけというわけではありません。我々がまだ知らない仕組みがこれから発見されるかもしれませんね。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本に、「とてつもない精度で調整されている宇宙定数」というのがあった。

約20年前、超新星爆発を起こした天体までの距離を計測する際に、宇宙の膨張が加速することが判明した。

この宇宙の加速膨張を説明するために、宇宙定数を一般化した仮想上のエネルギー「ダークエネルギー」が宇宙全体に浸透するという説が提唱された。

ダークエネルギーが存在すると仮定して計算すると、観測とピッタリ合うのです。そんな取ってつけたようなものは気に食わないと言っていた人たちも、結局これ以外に加速膨脹を説明できないので、受け入れざるをえない状況です」

なぜ宇宙は膨張しているのか?宇宙物理学者が語るダークエネルギーの謎と、過去、現在、未来の宇宙

2024/3/14 Yahoo!ニュース
松原:観測事実として、宇宙が加速膨張していることは確かです。でも、ダークエネルギーは、理論的な仮説に過ぎないんですよ。存在が証明されているわけでもありません。

アインシュタイン一般相対性理論では、時空がゆがんでいることや、時空が膨張あるいは収縮することを示しています。一般相対性理論によって、恒星の振る舞いを計算すると、観測データと一致します。

ただ、一般相対性理論を宇宙全体に適用させようとすると、ダークエネルギーがないとできないんです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c9d9f6cc83ccc271d7f3d68f8aaf98166110290?page=3

だそうです。

何となく宇宙の膨張は、水が相転移するように、ダークエネルギーの値も変化しているような気がします。

じじぃの「カオス・地球_273_すばらしい医学・たばこ・急増した肺がん」

「教えて!日医君!新型たばこも吸っちゃダメ!」

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https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=d6DnOzjZcPs

年齢調整済みの喫煙率 (WHO,2018年 男性)


喫煙率

ウィキペディアWikipedia) より
国別にみると、全人口および男性の喫煙率は、東南アジア・東アジア諸国、ロシアを含む東欧諸国の一部や近東で高く、欧米諸国の先進国では低い傾向にある。 逆に、女性の喫煙率は東アジア諸国の方が極端に低い傾向があり、欧米諸国の先進国ではやや高い。

OECDの資料(2017年)によると、OECD36ヵ国の平均が18.0%(男:22.5%、女:13.9%)であり、日本の喫煙率は、17.7%(男:29.4%、女:7.2%)と平均並となっている。日本たばこ産業JT)は、喫煙率は既に先進国並みの水準になっていると評価している。

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すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険

【目次】
はじめに
第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術

第5章 人体を脅かすもの

おわりに

                  • -

『すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険』

山本健人/著 ダイヤモンド社 2023年発行

第5章 人体を脅かすもの

長らく知られなかった肺がんリスク より

急増した肺がん
イギリス統合統計機関は1947年、国内で起こる不穏な現象を捉えた。肺がんによる死亡が、直近20年で15倍に増加していたのである。

原因不明の病気が、凄まじい勢いで国民の健康を脅かしている。早急に対策を講じる必要があった。専門家らが集まって会議を開き、原因として考えられる候補をあげた。
大気汚染、排気ガスアスファルトの素材、インフルエンザ、日照不足、あらゆる原因が検証されたが、決め手はなかった。

肺がんの危険因子を探るため、イギリスの疫学者オースティン・ブラッドフォード・ヒルは、医師のリチャード・ドールとともに研究を開始した。ロンドンにある20の病院で入院患者に聞き取り調査を行い、肺がん患者とそれ以外の患者に何らかの違いが見られるかどうかを調べたのである。

がんはそもそも複合的な因子が絡み合って発生する病気だ。原因の特定は、そう簡単ではないと予想された。だが得られた結果は、疑いようのない1つの事実を示していた。肺がんには、明白な危険因子があったのだ。喫煙である。
    ・
実はこの時期から現在に至る約半世紀は、疫学が大いに進歩した時代だ。疫学とは、大人数の人間集団を対象とし、健康に関するさまざまな事象の頻度や分布、影響を与える因子を明らかにし、社会的な対策に役立てる学問のことである。

例えば、ボストン郊外のフラミンガム町に住む5000人もの健康状態を徹底的に追跡し、高血圧や肥満、糖尿病、高コレステロールなどが心血管病の危険因子になることを歴史上初めて明らかにしたフラミンガム研究は、その最たる例である。

慢性疾患の危険因子を明らかにし、病気との関連性を探り出す方法論は、この時代の疫学者たちによって劇的に磨かれた。たばこの有害性を明らかにする営みは、こうした流れの中で実現したのだ。

たばこはどのように普及したのか
たばこは、ナス科たばこ属の植物を原料とする嗜好品で、もっとも多い種は「ニコチアナ・タバカム」である。この学名「ニコチアナ」や、成分も「ニコチン」は、16世紀にフランスにたばこを広めたフランス人外交官ジャン・ニコの名前に由来する。

たばこの起源は、「新大陸」にある。1492年、アメリカ大陸を「発見」したイタリア人探検家クリストファー・コロンブス率いる探険隊は、先住民たちの間に広がる不思議な習慣を初めて目撃する。彼らは、たばこの葉を燃やして煙を吸う「喫煙」や、たばこの葉を口の中で噛む「噛みたばこ」、粉状にした葉を鼻から吸い込む「嗅ぎたばこ」など、さまざまな方法でたばこを楽しんでいたのだ。

特に「吸うたばこ」である喫煙には、たばこの葉で巻く葉巻、トウモロコシの皮などで巻いた巻きたばこ、パイプを使って吸うパイプたばこなど、煙を吸う方法にさまざまな種類があり、ヨーロッパ人たちの興味を引いた。

のちに、トウモロコシやジャガイモなどの穀物とともに、たばこは新大陸から世界中に広まり、各地で栽培されるようになったのだ。

さらに、19~20世紀には紙巻たばこ(シガレット)の大量生産が可能になったことで、世界中でたばこが爆発的に普及した。その背景には、ニコチンに対する喫煙者の病的な依存があった。血液中のニコチン濃度が一定以下になると強い不快感を覚えるため、喫煙者は喫煙を繰り返す。喫煙すればするほど、体はニコチンに依存的になる。この悪循環がたばこの世界的な売り上げを支えていたのだ。

たばこの売り上げは指数関数的に増え、巨大企業を次々と生み出し、とてつもない勢いで新たな市場を形成していった。20世紀中頃のアメリカでは、たばこの年間売上高は約50億ドル、1人あたりの消費量は年間4000本という、かつてのない規模に膨れ上がっていた。

ヒルとドールの研究だなされたのは、このような時代であった。当然、破竹の勢いで急成長してきたたばこ産業にとって、「喫煙が健康被害を引き起こす」など決してあってはならないことだった。

たばこ産業は莫大な広告費を使い、この流れを止めるべく猛攻撃を仕掛けた。医師をたばこのCMに登場させ、安全性を主張し、消費者に不安や恐怖を与えないよう、あの手この手を使って研究結果を巧みに否定しようとした。

だが、流れは止まらなかった。現在に至るまで、おびただしい数の研究が、あまりに恐ろしいたばこの有害性を明らかにしてきたからだ。

たばこには約70種類の発がん性物質が含まれ、16種類のがんを引き起こす。喫煙者は肺がんに15~30倍かかりやすく、寿命が10年短く、1本たばこを吸うごとに寿命が11分短くなる。

また、喫煙は気管支に炎症を引き起こし、肺胞を破壊する。こうして起こる慢性閉塞性肺疾患COPD)が、ひとたび起こると元通りに戻す手立てはない。ひどい息切れで日常生活もままならなくなってしまう。

喫煙者本人のみならず、周囲の人がたばこの副流煙に晒(さら)される受動喫煙のリスクも明らかになってきた。たばこを吸わない人であっても、副流煙によって、肺がんや脳卒中、冠動脈疾患(心筋梗塞狭心症)のリスクが20~30パーセント増える。

手術を受ける患者にとっても、喫煙は重大なリスクになる。喫煙者は、手術後に肺や心臓の疾患(呼吸器・循環器疾患)を起こしやすく、非喫煙者より手術後の死亡率が高い。喫煙は、傷が感染するリスクも上昇させる。たばこの害は、これほどまでに大きいのだ。

じじぃの「科学夜話・第5講・奇跡的な宇宙・人間原理の成功例!宇宙の雑学」

どうして宇宙は人間に都合よくできているの?【人間原理

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https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=24wX8U5_R0w

宇宙を旅する生命―フレッド・ホイルと歩んだ40年


フレッド・ホイル

ウィキペディアWikipedia) より
サー・フレッド・ホイル(Sir Fred Hoyle, 1915年 - 2001年)は、イギリスウェスト・ヨークシャー州ブラッドフォード出身の天文学者SF小説作家。ケンブリッジ大学エマニュエル・カレッジ卒業。

元素合成の理論の発展に大きな貢献をした。研究生活の大半をケンブリッジ大学天文学研究所で過ごし、同研究所所長を長年に渡って務めた。地球物理学者の竹内均によれば、カール・ポパーが提唱する批判的合理主義に基く論客であったという。
【天体物理学への貢献】
ホイルの初期の論文では、人間原理が面白い使われ方をしている。
恒星内部での元素合成の経路を明らかにする過程で、ホイルは、ヘリウム原子核3個から炭素を生成するトリプルアルファ反応と呼ばれる核反応に注目した。この反応が働くためには、炭素原子核がある特定の値のエネルギー準位を持っている必要がある。宇宙には多量の炭素が存在しており、この炭素を材料として地球上の生命は存在しているが、このことはトリプルアルファ反応が実際に上手く働いたはずであることを示している。
この考えに基づいて、ホイルは炭素原子核があるエネルギー準位を持つと予言した。これは後に実験によって裏付けられた。この状態はホイル状態と呼ばれる。

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『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第5講 微調整問題と人間原理 より

奇跡的な宇宙

我々の宇宙だけでなく、たくさんの宇宙がある、それも無数にあるという「マルチバース論」が出てくるのには、必然性があると言える背景があります。

単純に言うと、この宇宙があまりにも奇跡的な存在だということです。生命や人間が存在する宇宙は、ものすごく大変な条件を重ねなければできません。

それなのに、現実にこの宇宙が存在するのはなぜかと考えたとき、マルチバースは1つの解決策になります。無数に宇宙があれば、その中に1つくらい奇跡の宇宙があってもおかしくありません。ある意味では、この奇跡的な宇宙への疑問を、安易に解決する方法がマルチバースなのです。

ではどのくらい奇跡的なんでしょうか。今回はその話をします。

測定してはじめて決まる「パラメータ」

自然界には、測定によってはじめて決まる定数がいくつもあります。物理の法則には、こうした物理定数が必ず含まれています。

たとえば、電気力は電子の電荷がどのくらいかによって決まります。電荷とは粒子や物体が帯びている電気の量のことです。電気量を測ると、最小単位の整数倍になっており、その最小単位を電気素量と言います。電気素量はどこで測っても同じです。一定の値が見つかるわけですが、なぜその値なのかという理由は見つかりません。理論上は、その値である必然性がなく、どんな値であってもいいはずです。

重力定数もそうです。
ニュートンが見つけた「万有引力の法則」は、万有引力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。この関係における比例定数は重力定数と呼ばれます。重力定数は、測定によって決まったものであって、この値でなければならない理由がありません。
    ・
どうも自然界のパラメータは、この宇宙に生命が誕生するように微調整されているふうに感じます。なぜか我々にとって都合のいい値になっているんです。まるで神様がパラメータを自由に変えることのできる機械を持っていて、生命を誕生させようと細かく調整しているかのようです。パラメータの値には必然性が見つからないため、いまの物理学では説明ができないのです。

これを「宇宙の微調整問題」と呼びます。
宇宙には、測定してはじめてわあるパラメータが、現状見つかっているもので40個あります。そのすべてが、この宇宙を成り立たせるのに微妙な値をなっています。
いくつかのパラメータを見ていきましょう。

トリプル・アルファ反応

生命にとって、もっとも重要な元素の1つが炭素です。炭素が無ければ、今の生命は確実に存在していません。

炭素原子核は、星の中でヘリウムヘリウム原子核が3つ集まることで作られます。
    ・
トリプル・アルファ反応によって炭素が作られることを見出したのはイギリスの天文学者フレッド・ホイルなのですが、この反応を起こすためには、炭素がある特定の値のエネルギー準位(具体的には7654.2keV)を持たないと成り立たないことがわかりました。

人間原理の成功例

ホイルの考え方は典型的な「人間原理」です。

前回も紹介した人間原理です。あらためて、人間原理とは、「この宇宙が人間に適しているのは、そうでない人間が宇宙を観測できないから」という論理を使って宇宙や物理を説明する考え方です。要するに、「人間が存在するんだから、宇宙はこうなっていなさい」ということです。

人間原理には大きく分けて「弱い人間原理」と「強い人間原理」があります。

「弱い人間原理」は、現在の宇宙の年齢や太陽系の位置関係などは、偶然に決まったものではなく、それを観測している人間がいるという前提のもとに定まっているという考え方です。

たとえば宇宙の年齢が138億歳程度であるのは、そうでないと人間が存在できないからです。星の中で炭素などが作られ、超新星爆発によってそれが宇宙にばらまかれ、太陽系ができて惑星が生まれ、そこに生命が誕生して進化し、高度な知性を持った人間が生まれるまでを考えると、100億年は必要です。

逆に、宇宙ができて1000億年くらい経ってしまうと、太陽のような恒星の大部分が燃え尽きてしまっており、たとえ地球のような惑星があったとしても知的生命体が存在する可能性は低くなります。

また、我々は広大な宇宙の中で、太陽の近くという極めて特殊な場所にいます。その場所でないと存在できないからです。

このように、観察する人間の存在の原理に基づいて、現在の宇宙の時間的・空間的な位置が決まるというのが「弱い人間原理」です。

これはまあ、考えてみれば当たり前の話です。観測者が存在できる条件でしか観測できないので、偏りが出ることを「観測選択効果」と言います。観測選択効果により、宇宙の中で人間がいる時間よ場所が限定されるのは当然です。

対して「強い人間原理」は、宇宙の法則や定数は人間が生まれるようなものでなくてはならないという考え方です。人間の存在を理由に「だからこうなっている」と説明するので、順番が逆になっているんです。

ホイルの予言は「強い人間原理」の典型例です。それまで、この論理で予言をした人はいなかったので、みんな半信半疑でした。というより疑っていました。ところが、実験してみたら本当にそうだったので驚いたんです。

俄然「強い人間原理」に期待が持てそうな感じがしますが、そうでもありませんでした。同じ考え方でうまくいった例は他にないのです。ホイルの予言が唯一の成功例です。

「強い人間原理」は、宇宙の微調整問題に1つの説明を与えてはくれます。なぜこのような物理定数になっているのか、という問いに対して、それは人間が存在するからだと説明します。

ただ、それを「論理」と呼べるのかは、微妙なところがあります。この宇宙は不思議だと思って法則や物理定数を調べていたのに、もともとの疑問を放り出して「不思議じゃないんだ。人間が存在するためには、そうでなくてはならないからだ!」と言っている感じで、何も言っていないのと同じです。面白い考え方だし、ホイルのやり方はうまくいったですが、「あまり意味がないよね」と思っている人は多いです。

ただ、「強い人間原理」も、前提がマルチバースであるなら納得できます。いくつもある宇宙の中で、この宇宙はたまたま人間が存在できる宇宙になっている。そうであるなら、この宇宙においては、人間の存在を理由に説明していいという話になります。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本に、「人間原理の成功例」というのがあった。

「『強い人間原理』は、宇宙の微調整問題に1つの説明を与えてはくれます。なぜこのような物理定数になっているのか、という問いに対して、それは人間が存在するからだと説明します」

地球は奇跡の存在か?

物理定数や物理法則の一部は、泡宇宙ごとに異なっていると考えられている。

私たちが住む泡宇宙の様々な物理定数は、生命の存在にとって非常に都合がよい値に「微調整」されているように見える。

クォークどうしを結びつける強い力がほんの少しでも弱かったら、炭素は誕生せず、地球生命は誕生しなかった。

もし宇宙が無数に存在し、それぞれの宇宙で物理定数が異なっているのなら、物理定数の微調整問題は解決する。

だそうです。

じじぃの「カオス・地球_272_すばらしい医学・一酸化炭素中毒の症状」

排気ガスによる一酸化炭素中毒の危険 「車の立ち往生」に注意…日頃から車に毛布や防寒着の準備を

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2OI78AvqMM8


新型コロナと思ったら、まさかの一酸化炭素中毒 冬のいろいろな発生条件

2022/12/11 Yahoo!ニュース
一酸化炭素中毒は風邪と似ている
一酸化炭素を吸うと、ものすごいスピードで肺から血液中に移行します。酸素を一緒に運搬するはずだったヘモグロビンが一酸化炭素に乗っ取られてしまうことから、体中に酸素が行き渡らなくなります。

一酸化炭素は、無色・無臭の気体です。いつの間にか、頭痛や吐き気などの中毒症状が出現して、重症になると死亡するリスクもあります。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5bffaacb11a696288bbd32ffa52d23627ff62725

すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険

【目次】
はじめに
第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術

第5章 人体を脅かすもの

おわりに

                  • -

『すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険』

山本健人/著 ダイヤモンド社 2023年発行

第5章 人体を脅かすもの

目に見えない脅威 より

一酸化炭素は怖い
経済産業省が発行する「CO(一酸化炭素)中毒事故防止技術」というテキストには、一酸化炭素中毒に関して「専門家でも誤診する場合がある」との注意書きがある。

実際、医師は一酸化炭素中毒について「見逃されやすい救急疾患」として再三教育され、救急医療の教科書には必ず詳細な解説が掲載されている。

なぜ見逃しやすいのだろうか? それには理由がある。
まず、一酸化炭素中毒の患者は、体に酸素が足りていないのに「血色が良い」という点だ。私たちは、顔が青白い状態を「顔色が悪い」と表現する一方で、適度に赤らんだ状態なら「顔色がいい」「色つやがいい」とポジティブな印象を持つ傾向がある。そのため、一酸化炭素中毒患者の顔色の良さは、一見すると病的に思われにくいのだ。

では、なぜ一酸化炭素中毒の患者は「血色が良い」のだろうか。これを理解するには、体内での酸素運搬のしくみを知る必要がある。

私たちは、呼吸によって大気から酸素を取り込まなければ生きられない。全身の臓器が正常に機能するには、酸素を使ってエネルギーを産生する必要があるからだ。
    ・
さて、実は酸素が結合したヘモグロビン(酸素化ヘモグロビン)と、結合していないヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビン)は色合いが異なる。酸素化ヘモグロビンは明るい赤、脱酸素化ヘモグロビンは青みがかった暗い赤を呈するのだ。酸素を多く含む動脈血は明るい赤色に、酸素の少ない静脈値は暗い赤色になるのは、それが理由である。

酸素が足りないときに、皮膚が青白くなることを「チアノーゼ」という。これは、脱酸素化ヘモグロビンが増え、透けて見える毛細血管の中の血液が青みがかっているために起こる現象だ。

一酸化炭素が恐ろしいのは、酸素の200倍以上もヘモグロビンに結合しやすいことだ。一酸化炭素を少量でも吸入すると、ヘモグロビンは一酸化炭素と次々に結合し、血液中にあっという間に浸透してしまう。「荷台」を一酸化炭素で占められた赤血球は、酸素に運搬できなくなる。

厄介なのは、一酸化炭素ヘモグロビンが明るい赤色を呈することだ。これが、一酸化炭素中毒患者の血色が良い理由である。臓器は著しい酸素不足に陥り、顔色が良いまま「窒息」するのである。

さらに厄介なのは、血中酸素飽和度を示す「SpO2」という指標を持ってしても、一酸化炭素中毒は見抜けないことだ。

SpO2は、指に装着するだけで血液中の酸素飽和度を簡易的に測定できる検査機器「パルスオキシメータ」を用いて得られる数値だ。血圧計や体温計とともに、医療現場では毎日のように使用されるモニタリング機器である。

この機器は、指先の血管内に流れる血液中の酸素化ヘモグロビンの割合を検出し、これを「パーセント」で表示する。正常値は約98~99パーセント、つまり、「ほとんどのヘモグロビンが酸素と結合している状態」が正常だ。

パルスオキシメータは血液の「赤みの差(吸光特性の差)」を感知して、酸素飽和度を簡易的に知られるしくみだ。だが、一酸化炭素ヘモグロビンと酸素化ヘモグロビンを区別できないパルスオキシメータは、一酸化炭素中毒でも正常値を表示してしまうのである。

一酸化炭素中毒を診断するのは、血液を採取し、血液中の一酸化炭素濃度を測定しなければならない。疑わなければ見抜けない――。それが「見逃されやすい」といわれる所以(ゆえん)だ。

一酸化炭素中毒の症状
空気中の一酸化炭素は、たとえ低い濃度であっても人体にさまざまな症状を引き起こす。わずか0.16パーセントでも20分で吐き気やまいが起こり、2時間で死亡する。1.28パーセントに達すると、わずか1~3分で死に至る。

一酸化炭素は、自宅や車内などの身近な空間でも発生し得る気体で、一酸化炭素中毒は毎年絶えず発生している。例えば、暖房器具の不完全燃焼は、その最たる例だ。また、屋外で使用すべきコンロや七輪、火鉢などの火気器具を屋内で使用したことが原因で、一酸化炭素中毒になる例もある。

2022年12月には、自家用車内で女性が亡くなった事例が報道された。積雪で車のフラーが埋まり、換気が不十分なまま車内に一酸化炭素が蓄積したためだ。その地域では前夜から停電が起きていて、自宅前の車内で暖をとっていた最中に事故が起きたと考えられている。

東京消防庁の管轄内では、2017年からの5年間に、住宅で33件の一酸化炭素中毒事故が発生し、45人が救急搬送されている。もっとも発生件数が多いのは1月と12月、その次に多いのは2月だ。火気器具の使用が多くなる時期だからである。

一酸化炭素が人間にとってなにより脅威なのは、それが全くの無色無臭であることだ。異臭がしたり、怪しげな色の煙が上がったりするのであれば、私たちはその危険性に気づくことができる。ところが一酸化炭素は、不快な臭いもなければ肉眼で観察することもできない。

もちろん、生きていくのに不可欠な酸素ですら無色無臭であり、私たちはその存在を感知する術(すべ)を持たない。ある意味で人間の生とは、これほど危ういのである。

じじぃの「科学夜話・第5講・奇跡的な宇宙・生命誕生・水の特殊な性質!宇宙の雑学」

【ゆっくり解説】地球は生物か?地球=生命体と考える「ガイア理論」を解説!

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=l9V-lX9wOks&t=19s

水の神秘 科学を超えた不思議な世界


地球(ガイア)って、惑星の表面を水が覆っている!なんてすごい!

喉が渇いたら「水」をゴクゴク。本当に当たり前。でもこの当たり前のことが、実は奇跡的なコトなんだと驚くわけです。
https://gaiaup.com/these/earth-gaia-live.html

『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第5講 微調整問題と人間原理 より

奇跡的な宇宙

我々の宇宙だけでなく、たくさんの宇宙がある、それも無数にあるという「マルチバース論」が出てくるのには、必然性があると言える背景があります。

単純に言うと、この宇宙があまりにも奇跡的な存在だということです。生命や人間が存在する宇宙は、ものすごく大変な条件を重ねなければできません。

それなのに、現実にこの宇宙が存在するのはなぜかと考えたとき、マルチバースは1つの解決策になります。無数に宇宙があれば、その中に1つくらい奇跡の宇宙があってもおかしくありません。ある意味では、この奇跡的な宇宙への疑問を、安易に解決する方法がマルチバースなのです。

ではどのくらい奇跡的なんでしょうか。今回はその話をします。

測定してはじめて決まる「パラメータ」

自然界には、測定によってはじめて決まる定数がいくつもあります。物理の法則には、こうした物理定数が必ず含まれています。

たとえば、電気力は電子の電荷がどのくらいかによって決まります。電荷とは粒子や物体が帯びている電気の量のことです。電気量を測ると、最小単位の整数倍になっており、その最小単位を電気素量と言います。電気素量はどこで測っても同じです。一定の値が見つかるわけですが、なぜその値なのかという理由は見つかりません。理論上は、その値である必然性がなく、どんな値であってもいいはずです。

重力定数もそうです。
ニュートンが見つけた「万有引力の法則」は、万有引力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。この関係における比例定数は重力定数と呼ばれます。重力定数は、測定によって決まったものであって、この値でなければならない理由がありません。
    ・
どうも自然界のパラメータは、この宇宙に生命が誕生するように微調整されているふうに感じます。なぜか我々にとって都合のいい値になっているんです。まるで神様がパラメータを自由に変えることのできる機械を持っていて、生命を誕生させようと細かく調整しているかのようです。パラメータの値には必然性が見つからないため、いまの物理学では説明ができないのです。

これを「宇宙の微調整問題」と呼びます。
宇宙には、測定してはじめてわあるパラメータが、現状見つかっているもので40個あります。そのすべてが、この宇宙を成り立たせるのに微妙な値をなっています。
いくつかのパラメータを見ていきましょう。

もしも光速度が遅かったら

次に光速度です。1秒間に約30万kmという速さです。
仮にこの光速度が遅かったらどうなるか考えてみましょう。日常生活で時間や空間のズレを意識しないのは、光速度があまりに速く、それに比べて我々が遅いからです。移動している人と止まっている人とでは時間がズレますが、あまりにもわずかなので感じません。

光速度を遅くすると、時間や空間のズレが大きくなります。光速度を遅くするほど、相対的な効果が大きくなり、たとえば少し動くだけで、止まっている人との時間が何十秒もズレたりします。

ミクロの世界にあらわれる「プランク定数

プランク定数hもパラメータです。
第3講で出てきましたが、覚えていますか?

確か、古典力学量子力学の境目をあらわすという……。

そうです。古典力学で説明できる身のまわりの世界と、古典力学が通用しないミクロの世界、その境目を決めているのがプランク定数です。その値は6.62607015 × 10-34m2 kgs-1です。10-34という小さな因子が含まれていますから、とても小さな値であることは直感的に理解できるかと思います。プランク定数はごく小さい値のため、原子ほどのミクロの世界に踏み込まない限り古典力学で説明できてしまうんです。

基本定数から得られるプランク尺度

ここまで話した重力定数光速度プランク定数の3つは、物理学の中でもっとも基本的なパラメータです。3つとも物理法則と密接な関係があることがおわかりでしょう。重力定数一般相対性理論光速度特殊相対性理論プランク定数量子論を特徴づける定数となっています。

この3つの定数の単位はすべて、長さ、質量、時間という3つの単位の組み合わせでできています。そこで、3つの定数をうまく組み合わせることによって、長さだけの単位を持つ量、質量だけの単位を持つ量、時間だけの単位を持つ量を作ることができます。

そうして得られた量は、それぞれプランク長さ、プランク質量プランク時間といいます。

生命に都合のいい水の特殊な性質

生命に不可欠な「水」にも、微調整が働いているように思われます。

水は我々のまわりに満ちあふれているので、その存在はごく当たり前です。でも、その性質を調べると実は水が特殊な存在であることがわかります。

まず、氷が水に浮くというのがすごい。これはまったく当たり前ではないんです。普通は液体が個体になると密度が高くなり、沈みます。水以外の物質はみんな沈むんです。それなのに、氷だけはなぜか体積が増えて、密度が薄くなって浮きます。

そのおかげで生命が生き続けることができ、進化しました。
池でも海でも、凍るところを想像してみてください。氷が沈むということは、底の力から凍っていきますね。すると、水の中に生きているものたちは上へ押しやられます。えさもなくなるでしょうし、水が全部凍ってしまったら、もう生きる場所がありません。

一方、上から凍っていくのでは、氷がフタのようになって下の方は凍りにくくなります。4℃の水が一番重いので、海の底は4℃になります。表面が凍っていても、生き物たちはその下で生きていくことができるのです。

もともと、我々の祖先は水の中で生きていました。どんなに寒い時期でも、水の中で生きられたからこそ、長い時間をかけて進化を遂げたのです。

水は他の物質に比べて圧倒的に比熱が大きいという特徴があります。熱をためこむ力が大きい。つまり、温まりにくく冷めにくいということです。内陸では季節による温度差が激しく、沿岸では温度差が少ないのは、海が熱をためこんでいるからです。

もし、水の比熱がこれほど大きくなければ、地球の環境は激変するでしょう。温度差が激しくなり、生命にとって厳しい環境になります。

表面張力がやたらと大きいという特徴もあります。水をコップのふちギリギリまで入れても、水が盛り上がってこぼれませんよね。こんな盛り上がり方をする液体は他にありません。人間の体の大部分は水でできています。水の表面張力が大きいおかげで、生命維持に不可欠な細胞の活動がスムーズにいっています。そして、水の比熱の大きさが体温調節にも役立っています。

このように、身近な水1つをとっても、宇宙の微調整を感じさせられます。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本に、「生命に都合のいい水の特殊な性質」というのがあった。

「水は我々のまわりに満ちあふれているので、その存在はごく当たり前です。でも、その性質を調べると実は水が特殊な存在であることがわかります」

SDGsの大切な課題――すべての生き物から切り離せない水。
ローマ帝国のあるところ水道あり」。水は豊かさの象徴だった。

ちょっと古い本(2006年発行)だが、ウェスト・マリン著『水の神秘 科学を超えた不思議な世界』に、こんなことが書かれていた。

「古代神話は水を生きている直感をもつ存在として描いているが、水は生物学的には生きている形態と呼ばれる条件を満たしておらず、したがって現代科学では、水は生きていると考えられていない。従来の考えにとらわれない生命の定義に従えば、水は生きているかもしれないし、そうでないかもしれない。水の直感に関する疑問には、一致した基準の答えはないようである」

「このように、身近な水1つをとっても、宇宙の微調整を感じさせられます」

水は生きているかもしれないし、そうでないかもしれない。

信じるか信じないかはあなた次第です!

じじぃの「カオス・地球_271_すばらしい医学・ウイルス感染症・天然痘」

【ゆっくり解説】天然痘の歴史【感染症の歴史】再アップ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=rQ7kqNTmXYQ

大航海時代、スペイン人が南北アメリカ天然痘ウイルスを持ち込んだ


人類と感染症の歴史、神秘にすがる人々、江戸時代の給付金事情、必死に戦った医師たち

2024年03月16日 LIFULL HOME'S PRESS
●人が移動すればウイルスも移動する、奈良時代には天然痘らしき症例が大流行し人口の20%が死亡
感染症は文明病という側面を持っている。緩やかな文明の発展期には、疫病の拡大も緩やかであった。しかし、人口の爆発的な増加と移動速度の飛躍的な進歩は、感染症の拡大速度をも早める結果を招いた。居住地の都市化が進み、街道が整備され荷車が発明され、馬車が登場すると人の移動は飛躍的に活発化した。

それにより、ヨーロッパでは全土にわたって感染症が大流行することになる。中でも14世紀に起こったペストの大流行は、当時の世界人口の20%以上の人の命を奪った。文明の発展速度の激化が、感染症パンデミックを引き起こしたのである。

さらに時代が下り、15世紀の大航海時代に突入するとパンデミックは海を渡り、大陸間での感染症の交換が起こった。コロンブス交換と呼ばれるこの現象は、東半球と西半球の物資や作物、人のみならず病原体をも広範囲にわたり移動させた。

結果、西半球の感染症であったコレラマラリア・麻疹・ペスト・天然痘などがアメリカ大陸へと渡り、梅毒・シーガス病・イチゴ腫などがヨーロッパにもたらされた。
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00964/

すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険

【目次】
はじめに
第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術

第5章 人体を脅かすもの

おわりに

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『すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険』

山本健人/著 ダイヤモンド社 2023年発行

第5章 人体を脅かすもの

悲惨なウイルス漏洩事件 より

天然痘で死亡した最後の人類
1980年、世界保健機関(WHO)は天然痘撲滅宣言を行った。人類史上初めて、1つの病原体が世界から根絶されたのである。ワクチンの普及によるものだ。

ひとたび感染すると致死率は20~50パーセントに及び、20世紀だけでも推定3億人以上という膨大な数の人類を死に追いやってきたこのウイルスは、今や自然界に存在しない。研究を目的として、アメリカとロシアの研究施設に保管されているのみである。

歴史上、天然痘で死亡した最後の人類となった女性は、悲惨な事故とともに広く知られている。撲滅宣言から2年前のことだ。

イギリス、バーミンガム大学の解剖学教室で医療用写真を現像する仕事をしていた40歳のジャネット・パーカーは、1978年8月、突然の体調不良を訴えた。頭痛や筋肉痛、全身にひどい発疹が現われたのだ。彼女の入院後、主治医は驚くべき検査結果を手にすることになる。パーカーの体液から天然痘ウイルスが検出されたのである。
    ・
ヘンリー・ベドスンは熱心なウイルス学者だった。中東の危険地域を訪れて研究活動を行なうなど、天然痘の撲滅を目指してウイルス研究に打ち込んでいた。彼はWHOに嘆願し、1978年末までの数ヵ月間、かろうじて研究継続を許可されていた。

事故が起きたのは、そんな矢先だった。実験室から漏れ出した天然痘ウイルスが、気づかないうちにパーカーの身体に侵入したのである。ウイルスが通気孔を通って真上の解剖学教室に到達したと見られるが、はっきりした理由はわかっていない。いずれにしても、パーカーが不運にも研究室内で天然痘に感染したのは確実だった。

調査の結果、責任を問われたベドスンには非難が集中した。気を病んだ彼は、1978年9月、自宅で喉を切って自殺した。あまりにも悲惨なこの事件は世界中の研究機関を揺るがし、施設の安全性を見直す大きな契機となった。

現在、病原微生物を扱うあらゆる研究室は、極めて厳格な基準を満たさなければならない。人命を奪う恐ろしい外敵でありながら、私たちはその存在を肉眼で検知できず、逃避行動をとることすらできないからだ。

世界史を変えた感染症

天然痘ほど、人類の歴史に大きな影響を与えてきた感染症はないだろう。致死的な感染症は時に、大国の軍事力をはるかに上回る力を持つが、天然痘はその好例だ。

15世紀の大航海時代、ヨーロッパの人たちは南北アメリカ大陸を「発見」し、先住民たちの国家を次々に滅ぼした。彼らは気づかないうちに、銃や馬よりもはるかに強力な「武器」を持ち込んでいた。ウイルスである。

かつて南米に栄えたアステカ帝国インカ帝国は、数百万人もの人口を有する強大な国家であった。だが16世紀前半、スペイン人のフランシスコ・ピサロエルナン・コルテスが率いるわずかな手勢によって征服されてしまう。

なぜ、このようなことが起きたのか。その大きな要因になったのか、スペイン人らが持ち込んだ天然痘ウイルスだ。外界と一度も接触したことのなかった先住民たちは、ウイルスに対して一切の抵抗力を持たなかった。天然痘によって人口が激減し、すでに戦闘力が失われていた帝国は、こうして安々と征服されてしまったのだ。

天然痘は凄まじい勢いで新大陸に広まり、おびただしい数の人命を奪った。1ミリメートルの1万分の1という、あまりにも小さな物体が、世界の勢力図すら変えてしまうほどの破壊力を持っているのだ。いや、むしろ人体はこれほどまでに弱く脆(もろ)い、というほうが正確かもしれない。

じじぃの「科学夜話・第5講・奇跡的な宇宙・プランク定数!宇宙の雑学」

黒体放射スペクトル


プランクの法則

ウィキペディアWikipedia) より
プランクの法則(Planck's law)は、黒体放射のスペクトルに関する法則であり、量子力学基本法則のひとつである。プランクの公式とも呼ばれる。この公式から導かれるスペクトルと温度特性は、全波長領域において、熱放射の実験結果から予想される黒体放射のスペクトルと一致する。

1900年、ドイツの物理学者マックス・プランクによって導かれた。プランクはこの法則の導出を考える中で、物体が光を吸収または放射する時、そのエネルギーは、エネルギー素量(現在ではエネルギー量子と呼ばれている)ε = hν の整数倍でなければならないと仮定した。この量子仮説(量子化)は、その後の量子力学の幕開けに大きな影響を与えた。

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『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第5講 微調整問題と人間原理 より

奇跡的な宇宙

我々の宇宙だけでなく、たくさんの宇宙がある、それも無数にあるという「マルチバース論」が出てくるのには、必然性があると言える背景があります。

単純に言うと、この宇宙があまりにも奇跡的な存在だということです。生命や人間が存在する宇宙は、ものすごく大変な条件を重ねなければできません。

それなのに、現実にこの宇宙が存在するのはなぜかと考えたとき、マルチバースは1つの解決策になります。無数に宇宙があれば、その中に1つくらい奇跡の宇宙があってもおかしくありません。ある意味では、この奇跡的な宇宙への疑問を、安易に解決する方法がマルチバースなのです。

ではどのくらい奇跡的なんでしょうか。今回はその話をします。

測定してはじめて決まる「パラメータ」

自然界には、測定によってはじめて決まる定数がいくつもあります。物理の法則には、こうした物理定数が必ず含まれています。

たとえば、電気力は電子の電荷がどのくらいかによって決まります。電荷とは粒子や物体が帯びている電気の量のことです。電気量を測ると、最小単位の整数倍になっており、その最小単位を電気素量と言います。電気素量はどこで測っても同じです。一定の値が見つかるわけですが、なぜその値なのかという理由は見つかりません。理論上は、その値である必然性がなく、どんな値であってもいいはずです。

重力定数もそうです。
ニュートンが見つけた「万有引力の法則」は、万有引力は2つの物体の質量の積に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。この関係における比例定数は重力定数と呼ばれます。重力定数は、測定によって決まったものであって、この値でなければならない理由がありません。
    ・
どうも自然界のパラメータは、この宇宙に生命が誕生するように微調整されているふうに感じます。なぜか我々にとって都合のいい値になっているんです。まるで神様がパラメータを自由に変えることのできる機械を持っていて、生命を誕生させようと細かく調整しているかのようです。パラメータの値には必然性が見つからないため、いまの物理学では説明ができないのです。

これを「宇宙の微調整問題」と呼びます。
宇宙には、測定してはじめてわあるパラメータが、現状見つかっているもので40個あります。そのすべてが、この宇宙を成り立たせるのに微妙な値をなっています。
いくつかのパラメータを見ていきましょう。

弱い重力

まず、重力定数Gです。先ほど重力が弱いと説明したように、これはとても小さな値を取ります。あまりに小さく、現在に至るまであまり正確には測定できないくらいです。

アインシュタインの理論における重力定数とは、物体がまわりの時空間を曲げる大きさに対する比例定数です。つまり、重力定数が大きいほど、物体のまわりの時空間のゆがみが大きくなります。

もしも光速度が遅かったら

次に光速度です。1秒間に約30万kmという速さです。
仮にこの光速度が遅かったらどうなるか考えてみましょう。日常生活で時間や空間のズレを意識しないのは、光速度があまりに速く、それに比べて我々が遅いからです。移動している人と止まっている人とでは時間がズレますが、あまりにもわずかなので感じません。

光速度を遅くすると、時間や空間のズレが大きくなります。光速度を遅くするほど、相対的な効果が大きくなり、たとえば少し動くだけで、止まっている人との時間が何十秒もズレたりします。

ミクロの世界にあらわれる「プランク定数

プランク定数hもパラメータです。
第3講で出てきましたが、覚えていますか?

確か、古典力学量子力学の境目をあらわすという……。

そうです。古典力学で説明できる身のまわりの世界と、古典力学が通用しないミクロの世界、その境目を決めているのがプランク定数です。その値は6.62607015 × 10-34m2 kgs-1です。10-34という小さな因子が含まれていますから、とても小さな値であることは直感的に理解できるかと思います。プランク定数はごく小さい値のため、原子ほどのミクロの世界に踏み込まない限り古典力学で説明できてしまうんです。

さて、ミクロの世界では、不確定性原理によって、粒子の位置と速さが同時に決まらないんでしたね。位置を決めると速さがわからなくなり、速さを決めると位置がわからなくなります。両方を同時に正確に決めることが原理的にできません。プランク定数は、その原理的な決まらなさ具合がどの程度なのかをあらわしています。

プランク定数はとても小さな値ですが、0では困ります。0でない小さな値であるからこそ、原子の中では電子が原子核に吸い込まれることなく安定していられます。

それでは、プランク定数が実際より大きかったらどうなるでしょうか。量子力学で記述すべき範囲が広がるということで、簡単にいえば、原子の中で起きていることと同じことが大きな世界でも起こるということです。

かりに、人間は現状のまま、プランク定数だけ大きくしてみます。すると、たとえば2人で向かい合って話をしようと思っても、お互いに場所と速さがぼやけていて、コミュニケーションができたものではありません。相手の場所をいったん絞り込んでも、またすぐにどこかへ行ってしまいます。

また、量子トンネル効果が働いて、部屋の中にいても外にあったものが突然中に入り込んできたり、あるいはその逆のことが起こったりしかねません。プライバシーもへったくりもありませんね。

プランク定数の大きな世界は、あまりにも混沌とした世界です。プランク定数が小さくてよかったです。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本に、「ミクロの世界にあらわれる『プランク定数』」というのがあった。

プランク定数hは光が波であることを表わす式に、必ず出てくる。

シュレーディンガー方程式
シュレーディンガー方程式は、運動量と波長を結びつけるド・ブロイの式を一般化したもの。
ド・ブロイの式
ド・ブロイの式は下記のように書かれる。
   
  λ = h/p
   
左辺のラムダλの記号は、波長をあらわす。これは明らかに波の特性である。右辺の分母のpは、運動量をあらわす。これは明らかに粒子の特性だ。その2つを結びつけているのがプランク定数のhで、これは量子物理学のあらゆる方程式に出てくる数字だ。

ド・ブロイの式は一見シンプルで美しい。
しかし、シュレーディンガー方程式(複雑な式)には、まったくついていけません。
でも、何か重要な方程式のようです。

最後にひとつ、プランク定数に関する追記。
20世紀初期に量子物理学が発達すると、物理学者は自分の記述する方程式にたびたびhが2πで割られるかたちで出てくることに気づくこととなった。
たとえば、原子内の電子の軌道運動の強さ(すなわち電子の「軌道角運動量」)はh/2π、または2(h/2π)、3(h/2π)、……などと等しい値になっていたのである。そこで物理学者は略記として、h/2πをħ(hの縦線に短いバーをクロスさせたもの)と表記して、「エイチ・バー」と呼ぶようになった。

だそうです。