じじぃの「冴えないバイデンが大統領候補になるまで!トランプ信者 潜入一年」

シャーロッツビル 春からの対立がついに死傷事件に

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=aTaZVOUPMcQ

極右集会に抗議する人たちの中に自動車が突入した

(2017年8月12日、米バージニア州シャーロッツビル

米南部の極右集会に抗議、1人死亡 州知事は白人至上主義者に「帰れ」

2017年8月13日 BBC NEWS
米南部バージニア州シャーロッツビルで12日、白人極右集会に抗議する人たちの間に自動車が突入し、1人が死亡し19人が負傷した。これに先立ち市内では、極右集会に参加する白人国家主義者たちと、抗議する人たちの間で衝突が相次ぎ、少なくとも15人が負傷した。
州知事は、白人至上主義者に「帰れ」「お前たちは愛国者とは程遠い」と強い調子で批判した。一方で、ドナルド・トランプ米大統領が白人至上主義者を特定して非難しなかったことを、共和党内からも疑問視する声が上がっている。
https://www.bbc.com/japanese/40914856

『トランプ信者 潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』

横田増生/著 小学館 2022年発行

第2章 冴えないバイデンが大統領候補になるまで より

予備選挙の試金石

オバマが8年の任期を迎えた16年のアメリカ大統領選挙では、共和党民主党の両党が、大統領候補者選びのために党員集会と予備選での選挙戦を繰り広げた。しかし、20年は共和党には現職大統領で再選を狙うトランプがいるので、実質的にはトランプが不戦勝で勝ち上がる。よって、この年は、民主党の候補者の中から誰がトランプの対抗馬として出馬するかを選ぶことになる。
民主党では当初、過去最多となる30人近い候補者が名乗りを上げた。だが、数回のテレビ討論会などを経てふるいにかけられ、すでに半数が脱落している。事実上、ここから勝ち上がっていく候補者は上位5人に絞られていた。
アイオア党員大会の事前の世論調査では、トップがオバマ政権の下で副大統領を務めたジョー・バイデンだ。2位の上院議員バーニー・サンダースは、自ら社会民主主義者を名乗る頑固者である。

スーパーチューズデー

私は、フロリダ州ミシガン州でも予備選挙を取材するが、スーパーチューズデーで出来上がったバイデン有利の流れを、サンダースが覆すことはできなかった。両者が獲得した代議員数の差はじりじりと広がっていった。
しかも、フロリダ州での予備選挙の数日前、トランプが新型コロナウイルスによる国家非常事態を宣言したことで、予備選挙を行うことも、取材することも難しくなっていた。フロリダでは、コロナ対策で、ホテルは朝食の提供をとりやめ、レストランやバーが慌てて店を閉めたため、私は食料を確保するのに苦労した。
サンダースは4月、選挙戦から撤退することを表明した。
バイデンが民主党予備選挙での勝利を確定するのが6月のこと。バイデンの最終的な大議員数は2708人だった。

吃音を克服した男

バイデンは1942年11月20日、4人兄弟姉妹の長男として、ペンシルベニア州スクラントンに生まれる。家族はアイルランドカトリック教徒で、父親は中古車のセールスマンという中流家庭だった。
布教で父親が職を失うと一家はデラウェア州に引っ越している。
子ども時代、バイデンを苦しめたのは吃音だった。まだ、吃音が学習障害の1つではなく、低能の表れとみなされていた時代の話だ。しかし、両親、特に母親は、バイデンの能力を信じ、吃音をからかう教師がいると、自ら学校に乗り込んでいき、「息子をバカにすると許さない」と強く抗議した。
中学生になると、バイデンは独力で吃音を克服する。繰り返し詩を朗読し、鏡の前で顔をゆがめることなく話す訓練をした。
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大学は地元のデラウェア大学に進んだ。
春休みに友達と行ったバハマの海岸で、バイデンはニューヨークの大学からきた女子学生と出会い恋に落ちる。すぐにこの女性と結婚すると確信した。その女性の名は、ネイリア・ハンターといった。2人は結婚すると、3人の子どもに恵まれた。
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バイデンが、オバマ後の大統領に出馬を考えていたとき、長男のボーが脳腫瘍で亡くなる。生前、ボー・バイデンは、デラウェア州の司法長官を務め、州知事への野心を抱いていたが、その夢が現実になる前に鬼籍に入る。15年春のこと。バイデンにとっては、息子を亡くしたショックは大きかった。
心理的な痛手が癒えていないこともあり、バイデンは16年の大統領選挙への立候補を見送る。70代という高齢を考えれば、バイデンはこれで引退するだろう、と多くの人が考えた。
だが、トランプが大統領になった17年の夏、白人至上主義たちがバージニア州シャーロッツビルで、南北戦争奴隷制維持を掲げる南部連合の軍を率いたリー将軍銅像撤去をめぐり、抗議集会を重ねていた。
《右派の団結せよ(ユナイト・ザ・ライト)》と名づけられた集会のテーマは、トランプ政権と白人至上主義を結びつけることだった。白人至上主義たちはたいまつを手に黒人やユダヤ人の排斥を主張し、これに抗議する人たちとの衝突が起きた。その中で、白人至上主義者の男が運転する車が故意にデモ隊に突っ込んで、死傷者が出たのだった。事件後、衝突の際に負傷した人たちが、主催者らが人種差別に基づく暴力を招いたとして民事訴訟を起こした。連邦地裁は21年11月、主催者らに2500万ドル(27億5000万円)の支払いを命じる判決を下した。車を運転していた男には2019年に終身刑が言い渡されている。

事件以上にアメリカで大きな問題となったのは、トランプが頑なにKKKクー・クラックス・クラン)やネオナチを含む白人至上主義者を非難することを拒んだことだった。

記者会見で、事件について何度も質問されたトランプが、しびれを切らして「両方に素晴らしい人がいた」と語り、白人至上主義者たちを擁護したことで、アメリカ中が茫然自失となった。
その言葉を聞いたバイデンは「いったい何てことだ!」と呻吟(しんぎん)した。
このトランプの言葉は、バイデンにとって一線を越えたものだった。アメリカの先行きに危機感を募らせたバイデンは、最後にもう一度、大統領選挙に打って出ることを決める。
バイデンは出馬宣言の際、トランプの先の言葉を引用して、
「こうした言葉で、アメリカ合衆国の大統領が、憎悪を撒き散らす人たちと、勇敢にそれに立ち向かった人たちを道徳上、同等に扱った。私はその時、アメリカが直面している脅威はこれまでの人生でも経験したことがないものだ、と知った」と語った。
三度目の正直でようやく手に入れた民主党の大統領候補の切符を手に、バイデンはトランプと第46代大統領の座をかけて闘う。