じじぃの「トランプ劇場・中絶禁止法・彼は必ず約束を守る!トランプ信者 潜入一年」

【中絶の是非】アメリカで対立激化 "二極化"進んだワケ

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Z43S5xb5fAg

最高裁判事のバレット氏指名、何が争点?


最高裁 保守派が圧倒 反「中絶・移民」に傾斜

2020年9月27日 日本経済新聞
米連邦最高裁判所で、トランプ大統領の価値観に近い判事が安定多数となる可能性が高まった。
最高裁が人工妊娠中絶や移民の受け入れに否定的な立場へと傾くことを意味する。トランプ氏が再選を逃しても判事は代わらず、最高裁には数十年にわたりトランプ氏の影響が残る。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64300120X20C20A9FF8000/

『トランプ信者 潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』

横田増生/著 小学館 2022年発行

第1章 トランプ劇場に魅せられて より

いざ支援者集会へ

私がトレドに出発したのは前日の8日の午後2時ごろ。気温は1℃。
トレドは、中西部のいわゆる《ラストベルト(さびついた工業地帯)》に位置し、大統領選の激戦州の1つとなるオハイオの工業地帯を一角を占める。街の愛称は、ガラスの都市。80年代までは、窓ガラスや飲料水のボトル、車のフロントガラスなどの生産地として栄えた。
しかし、おおかたの田舎街のご多分に漏れず、90年代以降は経済のグローバル化の波に飲まれ、街の人口は2000年の31万人強から2019年時点で27万人へと緩やかに、だが確実に減り続けている。その間、アメリカ全体の人口は増えているのだから、置き去りにされた街といえよう。
街に近づくと、工場の煙突から炎と煙が上がっているのが目に入ってくる。集会が開かれるダウンタウンにある多目的アリーナの周りは、人通りも少なく、飲み屋もほとんどない。時流に乗りそこねたわびしさが漂う。
アメリカ第一主義を掲げて大統領に当選したトランプが、就任演説で、「これまで政治から忘れてきた男性や女性たちよ、今後、あなたたちが忘れられることはない。<中略>これからは全力であなたたちのために闘い、決してあなたたちの期待を売切らない」と、語りかけた人たちが多く住む街である。
大統領選では1964年以降、オハイオ州を制した候補者が大統領になっている。オハイオを落として大統領になった共和党候補は1人もいない。
16年の選挙で、ミシガンと並んでここオハイオが、4年前の民主党支持から共和党支持に変わったことが、トランプの勝利へとつながった。トランプが、20年最初の支援者集会の地にオハイオ州を選んだのも、ぜひとも同州を手に入れたい、という思いからだ。

「ほかの政治家とは違い、必ず約束を守る」

男性の名前はロブ・コーティス(54)。映画のPR会社を早期退職し、16年から、勝手蓮としてトランプを応援しているのだという。
「住んでいるのはミシガン州デトロイト郊外だよ。そこから、このトラックで、ハワイとアラスカを除く本土全48州を回り、トランプを応援しているんだ。これまで2万6000マイル(4万1600キロ)を走った」

――なぜそんなことをしているのですか。

「大統領の前向きなメッセージを伝えて、アメリカを勇気づけようとしているんだよ。トランプはもともと政治家じゃないだろう。不動産業で大成功したビジネスマンだ。その経営者のセンスを活かして、アメリカという国の舵取りをしてほしいのさ。それに、彼の語る家族を大切にする価値観も大好きだ。運動資金は支援者からの寄付金だ。10万ドル(1100万円)以上が寄付で集まったし、自分自身のお金も使っている」

――トランプのどこが好きですか。

「大統領の言っていることは、いつも筋が通っている。それにほかの政治家とは違い、必ず約束を守るだろう」

――トランプの選挙公約の1つに、海外での戦線を拡大しないというのがありました。けれど、数日前(2020年1月2日)に、アメリカ軍がイランの軍司令官ソレイマニを殺害したため、アメリカとイランは今、戦争の瀬戸際にあるとも報道されています、

「それはフェイクニュースだ。イランへの攻撃は、残酷なテロリストに対してきちんと対応しただけだよ。戦争なんかにはならないって、大統領自身が言っているじゃないか。それに、健康保険制度も見直しているし、退役軍人への保護も手厚くしている。女性だってちゃんと尊敬している。大統領は中絶を認めない生命尊重派(プロライフ)の立場だ。オレ自身、クリスチャンだから、そこは譲れないポイントだな」

生命尊重派という言葉は、大統領選挙に限らず、アメリカで生活していると必ず出くわす言葉だ。

反対に中絶を肯定する立場は中絶擁護派(プロチョイス)と呼ばれる。日本では想像しづらいが、中絶を容認するか否かは、アメリカでは大きな政治問題の1つだ。大きく分けると、共和党が生命尊重派で、民主党が中絶擁護派の立場をとる。
トランプは昨年19年末、下院で歴史上3人目の弾劾を受けた大統領となりました、と私が尋ねると、相手の表情が険しくなるのが分かった。
「それもフェイクニュースに決まっているじゃないか! たとえば、オレがあんたのことを気に入らないっていう理由で弾劾することもできるんだぜ。それをあんたなら受け入れるのかい。あれは民主党の一方的な弾劾であって、そんなことには、なんの意味もないね」
トランプにぞっこん入れ込んでいるコーティスに訊いてみた。トランプに不満な点はないのか、と。
「そうだな。ヒラリー・クリントンや(前副大統領の)ジョー・バイデン、(民主党の大物上院議員の)チャック・シューマーを、まだ監獄に送っていないことかな」
冗談かと思って相手の顔を覗き込むが、目は笑っていない。