じじぃの「死ぬということ・第9章・安楽死!死の雑学」

安楽死カプセル


安楽死カプセル、年内にも初の実用へ スイス

2024年8月23日 AFPBB News
医療従事者の手を借りずに安楽死を可能にするポータブル型カプセルが、スイスで年内にも初めて実際に使用される可能性がある。自殺ほう助団体が明らかにした。
宇宙船を思わせる「サルコ(Sarco)」と呼ばれるカプセル形の機器が初公開されたのは、2019年。ボタンを押すとカプセル内部は酸素の代わりに窒素で満たされ、低酸素症によって死に至る。
スイスでは一般的に、自殺ほう助が合法化されている。同国で自殺ほう助の権利を訴える団体「ザ・ラスト・リゾート(The Last Resort)」は、国内での使用に法的な障害はないとの見方を示している。
https://www.afpbb.com/articles/-/3530167?pid=27079301&page=1

中公新書 死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に

黒木登志夫【著】
【目次】
はじめに
第1章 人はみな、老いて死んでいく
第2章 世界最長寿国、日本
第3章 ピンピンと長生きする
第4章 半数以上の人が罹るがん
第5章 突然死が恐ろしい循環器疾患
第6章 合併症が怖い糖尿病
第7章 受け入れざるを得ない認知症
第8章 老衰死、自然な死

第9章 在宅死、孤独死安楽死

第10章 最期の日々
第11章 遺された人、残された物
第12章 理想的な死に方
終章 人はなぜ死ぬのか――寿命死と病死

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『死ぬということ――医学的に、実務的に、文学的に』

黒木登志夫/著 中央公論新社 2024年発行

「死ぬということ」は、いくら考えても分からない。自分がいなくなるということが分からないのだ。生死という大テーマを哲学や宗教の立場から解説した本は多いが、本書は医学者が記した、初めての医学的生死論である。といっても、内容は分かりやすい。事実に基づきつつ、数多くの短歌や映画を紹介しながら、ユーモアを交えてやさしく語る。加えて、介護施設や遺品整理など、実務的な情報も豊富な、必読の書である。

第9章 在宅死、孤独死安楽死 より

4 安楽死

(1)B.間接的死介入(延命装置の取り外しによる安楽死

症例9-2 射水市市民病院例
2006年、富山県射水市民病院で、外科部長が末期患者の呼吸器取り外しにより、7人の患者を死に至らしめた事件が明るみに出た。患者はいずれもがんなどによる末期患者であった。家族とは十分に相談して呼吸器を外したと外科部長が説明した。実際、取材した富山テレビの記者は、世間の反応とは逆に、家族はみな外科部長に感謝していることに驚いたと書いている。
病院は調査委員会を開き外科部長を告発した。病院長は、「いったんつけた人工呼吸器は、たとえ、患者の要望があっても、絶対外すことはできない」と強調した。県警は、外科部長を殺人の疑いで書類送検したが、富山地検は嫌疑不十分で不起訴した。

症例9-3 和歌山県医大事例
2007年には、和歌山県医大で、脳内出血で手術後意識の戻らなかった患者の呼吸器を外したとして、医師が告発された。患者は死期が切迫していたが、家族が近親者の到達まで延命させてほしいと懇願した。やむなく人工呼吸器をつけ、かろうじて命を取りとめた。近親者と面会したあと、家族は助からないなら呼吸器を外してほしいとあらためて頼んだ。医師は、家族の勝手な要求にためらいながらも、呼吸器を外したところ、自発呼吸のないまま、まもなく患者は死亡した。警察は、「呼吸器を外したことで、患者の死期が早まった。その行為は殺人に相当する」として医師を書類送検したが、その後不起訴になった。

症例9-4 吉村昭
作家の吉村昭は2005年に舌がん、2006年には膵臓がんで手術を受けた。「お別れの会」の最後に挨拶に立った妻で作家の津村節子は、病に苦しんだ吉村が自ら点滴と首のカテーテルポートを引き抜き、「自決」したことを明らかにした。

(2)C.直接的死介入(薬物などによる安楽死

症例9-7 ALS患者嘱託殺人事例
2019年、筋肉が動かなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者が安楽死を希望していることをSNS上で知った2人の医師は胃ろうから薬物を注入して死亡させた。2人の医師は、患者を診察することなく、しかも130万円の謝礼を得ていた。2024年、「被告の生命軽視の姿勢は顕著で強い非難に値する」として、京都地方裁判所は医師のひとりに懲役18年を言い渡した。この判決は当然だと思う。

なお、裁判所は嘱託殺人の罪を問うべきでない条件(安楽死の条件)として東海大学病院安楽死事件(症例9-6)をさらに具体化した条件をあげている。

しかし、上記の判決文にしたがい、慎重に安楽死を行ったとしても、法律で守られていない限り、警察の介入は免れないであろう。

(4)オランダの死因の4.2%は安楽死

外国はどうであろうか。薬物などによって死に介入する安楽死は、欧米の多くの国で法的に承認されている。オランダ、スイス、ベルギー、イタリア、ドイツ、スペイン、ニュージーランド、オーストラリアなど13ヵ国とアメリカのカリフォルニア、ワシントン、オレゴンなど6州である。フランスも現在承認に向けて動きつつある。

特にオランダは、1985年に安楽死を公認し、2002年に法制化した「先進国」である。2019年の安楽死数は636人、それはオランダの死亡数の4.2%に上る。この数字を日本に当てはめると6万6400人が安楽死をしたことになる。孤独死よりも少し多い数だ。驚くほど多くの人がオランダでは安楽死を選んでいることがわかる。

一見、矛盾しているようにも思えるが、安楽死を認めている国の多くは、死刑を廃止している。日本は死刑を認めているのに安楽死を認めていない。死刑を廃止し安楽死を認めるという世界の傾向から言うと、日本は逆方向に向かっている。この矛盾はどのように説明できるのであろうか。

(5)自殺幇助

私は「自殺幇助」を安楽死として認めるべきではないという考えである。なぜなら、自殺には介入するだけのの医学的理由がないことと、SNSに安易に発信されている自殺願望を認めたら際限なく自殺介入が起こることを恐れるからである。
たとえば、うつ病患者が自殺を望んだとしても、この病気は治療できる疾患である。大半の国では自殺幇助は認められていないが、オーストラリアの1州、スイス、オーストリア、イタリア、スペインなどでは認められている。その根本思想は、死ぬ権利は個人に属するという考えである。森鴎外の小説とスイスの自殺幇助安楽死を紹介しよう。

症例9-9 森鴎外の『高瀬舟
弟殺しの疑いをかけられた喜助は、京を流れる高瀬川を船で送られ、島流しとなる。喜助は自殺未遂で苦しむ弟の首から刺刀を抜いただけであったが、そのために出血が激しくなり、弟は絶命した。彼の行為は弟を苦しみから救ったのだ。それが殺人になるのかと護送役の羽田庄兵衛(そして森鴎外)は疑問に思った。

症例9-11 デヴィット・グーグル
オーストラリアの植物学者グーグル(David Goodall)(104歳)は、高齢により「生活の質が低下し、もう人生を続けたくない」という理由で自死を望んでいた。しかしオーストラリアでは、末期のがん以外には安楽死は認められていないので、スイスに渡った。前日には、3人の娘と一緒にバーゼル大学の植物園を散策した。最後の晩餐は、好物のフィッシュアンドチップスとチーズケーキであった。最期の音楽に彼はベートーベンの第9を希望し、歓喜の歌を聴きながら麻酔薬によって死亡したと、尊厳死合法化推進団体の「エグジット」は伝えている。

なぜスイスでは、自殺幇助を認めているのだろうか。チューリヒに住む電気技師のリハルト・ギスラーは、死は本人の決定権であるという考えから、自殺幇助を認めているのだという。

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じじぃの日記。

自殺幇助

森鴎外の『高瀬舟


私は78歳の老人で難病を患い、窒素ガスボンベによる安楽死を考えています。

森鴎外の『高瀬舟』に興味を持っている方、コメンをください。

連絡先:tel 0475583649 ヒラツカ