じじぃの「歴史・思想_386_白人ナショナリズム・牛乳の一気飲み」

Why Are People Lactose Intolerant?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=G1NGzycaQV0

Milk Zone

What Are The Most Lactose Intolerant Places In The World? [Infographic]

August 2, 2013 Popular Science
Whether you can digest milk comfortably after childhood is a genetic fluke.
For many people, the ability to produce lactase--the enzyme that allows the body to break down lactase, the sugar in milk--disappears after childhood, when we no longer need to survive on our mother's milk.
https://www.popsci.com/science/article/2013-08/infographic-day-where-people-can-digest-milk/

『白人ナショナリズム-アメリカを揺るがす「文化的反動」』

渡辺靖 中公新書 2020年発行

白人ナショナリズムをめぐる論争 より

なぜ白人ナショナリストになるのか

今回、多くの白人ナショナリストのリーダーたちと会うなかで、特に印象的だったことの1つは、高学歴の者が少なくなかった点である。ジャレド・テイラーやウィリアム・ジョンソン、リチャード・スペンサー然り。ネオナチ系のウィリアム・ピアースは政治活動を本格化する前はオレゴン州立大学で物理学を、新南部連合系のマイケル・ヒルはスティルマン・カレッジで歴史学を、ホロコースト否定派のケヴィン・マクドナルドカリフォルニア州立大学ロングビーチ校で心理学を、それぞれ教えていた。医師、弁護士、コンサルタント、エンジニア、あるいは有力大学の学生などにも数多く遭遇した。
長年、反移民系団体の弁護士を務め、人権団体などから白人ナショナリストとの癒着を批判されるカンザス州の前州務長官(州の上級行政官)クリス・コバックは、ハーバード大学を学部最優秀(summa cum laude)の成績で卒業(指導教官はサミュエル・ハンティントン)後、マーシャル奨学生としてオクスフォード大学に留学し、博士号を取得。さらにイェール大学の法科大学院を修了している。教鞭を執ったミズーリ大学からはテニュア(終身雇用資格)を取得し、一時はトランプ政権での移民政策全体を統括する重要ポストへの指名が取り沙汰された(その後、2020年の連邦上院選への出馬を表明)。
彼らはいずれも経歴上、安定した立場にあり、わざわざリスクのある活動や団体に関与しなくても良さそうに思える。一体何が彼らをそこまで駆り立てているのか。

「人種的自殺」

科学と人種の結びつき自体は新しいことではない。18世紀後半には頭蓋骨の解剖学的特徴に基づく「人種」の分類や序列化が行われていた。20世紀に入ると「米国人類学の父」の異名を持つフランツ・ポアズ(コロンビア大学教授)らが身体的特徴は環境によって変化し得ると説き、生物学的な決定論や進化論的な人種主義を批判。しかし、その後、人種主義は優生思想と結びつき、1903年に設立された「米国育種家協会」(ABA)は14年には「米国遺伝学協会」(AGA)へと改組し、優生学運動を牽引した。
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20世紀後半に入り、遺伝子(ゲノム、DNA)研究が進化するにつれ、進化生物学、動物行動学、社会生物学、行動形態学や進化心理学、行動遺伝学などの分野で人種と遺伝子の関係が論じられることが多くなった。例えば、心理学者アーサー・ジェンセン(元カリフォルニア大学教授)は1969年に発表した論文で、白人と黒人の知能指数(IQ)の差は主として遺伝的要素によるものであるとし、両者の差を是正しようとする補償教育の限界を指摘した。94年には心理学者リチャード・ハーンスタイン(ハーバード大学教授)と政治学者チャールズ・マレー(アメリカン・エンタープライズ研究所特別研究員)が『ベルカーブ』(The Bell Curve:未邦訳。「ベルカーブ」は正規曲線の意)を出版。白人と黒人の間の知能指数の差とその社会的帰結を論じ、貧困層の救済策の有効性に疑問を呈したこともあり、激しい論争を引き起こした。

「生物学的多様性」の論理

しかし白人ナショナリストにより直接的な影響を与えたのは、1995年に出版された、カナダの心理学者J・フィリップ・ラシュトン(西オンタリオ大学教授)の『人種 進化 行動』(Race, Evolution and Behavior)である。脳容量、知能指数、成熟速度、人格、婚姻の安定性などの観点から、黒人よりも白人、白人よりもアジア人の優勢を指摘。人種の優劣と遺伝子の相関関係に踏み込んだ点で、『ベルカーブ』よりもはるかに大胆かつ挑発的だった。同書は白人ナショナリストにとって、「生物学的多様性」(biological diversity)の論理のもと、白人と他人種との隔離や反移民、アファーマティブ・アクション撤廃などを主張する根拠となった。
これまで参加した白人ナショナリストの会合では、数多くのデータを示しながらこうした言説がなされるのを幾度となく耳にした。「もう人種差別はないのに人種間格差があるのは遺伝的差異による」「自分たちはアジア人の能力的優位を認めており、人種差別主義者ではない」「ヒスパニック系は黒人よりも勝るが、白人には大きく劣る」「サブサハラサハラ砂漠以南)のアフリカの黒人の人口爆発は世界で最も由々しき問題だ」「ヒスパニック系による米国侵略を防ぐにはメキシコ国境壁が不可欠だ」……。心理学者ケヴィン・マクドナルド(元カリフォルニア州立大学教授)やカナダの心理学者ジョーダン・ピーターソン(トロント大学教授)などは人気の論者だ(マクドナルドはジョンソンの盟友で、現在、「米国自由党」の要職を務める)。彼らのような白人ナショナリストが好む『マンカインド・クォータリー』(MQ)は査読付きの人類学の学術誌という位置づけだが、人類学会や人権団体などからは「白人至上主義者の雑誌」「科学的人種差別主義の温床」との批判が絶えない。
ちなみに最近、若者の間で流行したのは、牛乳などに含まれる乳糖を消化する酵素ラクターゼ)を多く有している白人とは異なり、黒人やアジア系は牛乳を飲むとお腹を壊すという説だ。白人ナショナリストの中には、牛乳を一気飲みする動画を投稿し、「牛乳が飲めないなら(米国から)去れ」と主張する者まで現れた。

牛乳は彼らのシンボルとなった。