じじぃの「カオス・地球_444_移行化石の発見・第6章・移行期のクジラの発見」

Evolution of the Whale

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uOAdiKIDxIo

The Origin of Whales (evolution)

Baleines en direct
Mammals specialized for aquatic life
The whales that we know today are extraordinarily well adapted to life in the water. Millions of years in the sea have favoured transformations to facilitate life in this new environment. Nostrils have evolved into blowholes and are now located at the top of the head. Hind limbs have disappeared and front limbs have transformed into fins. The body has lost its fur and nearly all of its hair. It is streamlined. A horizontal, powerful propeller of a tail has attached itself to the vertebral column. These adaptations blur the relationship that exists between whales and their closest living relatives.
https://baleinesendirect.org/en/discover/life-of-whales/morphology/les-ancetres-des-baleines/

『移行化石の発見』

ブライアン・スウィーテク/著、野中香方子/訳 文藝春秋 2011年発行

ダーウィンが『種の起源』で進化論を提唱したとき、もっとも有力な反証となったのは、化石として出土している古代の動物と現生の動物とをつなぐ、「移行期の種」の化石がみつかっていないことであり、それは「ミッシング・リンク」(失われた鎖)と呼ばれた。
だが1980年代以降、とりわけ21世紀に入ってから、クジラ、鳥、ゾウなど様々な動物について、「移行化石」が相次いで発見されている――。

第6章 陸に棲むクジラ より

「爬虫類の王」の正体

ドイツの生理学者ヨハネス・ペーター・ミュラーは、ベルリンの自然史博物館で数名の博物学者にその化石について説明していた。実際のところこの動物は爬虫類なのか哺乳類なのか、尋ねられ、ミュラーは説明の助けにしようと頭骨部分から側頭骨を外していて手がすべり、床に落としてしまった。しかし、よく見てみると、その骨は元々そのように割れていて、特徴的な内耳の構造が見えるようになっていた。そして、その内耳は、どこからどう見てもクジラのものだった。つまりこの巨大な爬虫類は、本当は哺乳類だったのだ。
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ダーウィンは、『種の起源』の後の版では、クジラの話題を避けたが、6版目の準備をしているときに、バシロサウルスのことを少々書き加えることにした。1871年、信頼できる支持者のトマス・ヘンリー・ハクスリーに宛てた手紙のながでダーウィンは「古代のクジラは移行期の姿をしていると思いますか」と尋ねた。ハクスリーからの返事には、「クジラの祖先については、バシロサウルスが重大な鍵を握っていると考えてまちがいありません」と書かれていた。

ハクスリーはその前の年、ロンドンの地質学会の会長演説で、クジラとバシロサウルスのつながりを示す証拠について概説した。彼はバシロサウルスを現生のクジラの祖先と断定することはできなかったが、少なくとも、その形態はクジラとその陸生の祖先との中間に位置すると考えていた。もしそうだとしたら、クジラが陸上の肉食動物から進化した可能性が高くなる。もうひとつの絶滅したクジラ、スクアドロンは、大きな口に三角のギザギザした歯が並ぶイルカのような動物だが、その姿も、クジラが肉食の哺乳類から進化したことを示唆していた。もっとも、バシロサウルスと同じくスクアドロンも完全に水生の動物で、陸に棲んでいたクジラの祖先についての情報は、ほとんどもたらさなかった。これらの化石クジラは、言うなれば宙ぶらりんの状態で、なんらかの発見によって、いずれ地上を這っていた先祖とのつながりが明らかになるのを待っていた。

移行期のクジラの発見

陸から海への移行を示す化石がみつからないことから、そんなものは今後も見つからないのではないかと、あきらめ気味の人もでてきた。ジア・リップスとエドワード・ミッチェルは、1976年の論文で、古代クジラ(ヒゲクジラでもない初期のクジラ)が化石記録に突如として現れていることに触れた。なぜそうなったのかを説明できる理由は見つからず、クジラの進化は「緩慢で段階的な」ものではないように思えた。このことは、ダーウィンが進化論を構築した時代から、ずっと進化古代生物学者にとって悩みのだった。リップスとミッチェルは、探すべき場所を古生物学者が探していない可能性にも触れながら、クジラの進化があまりに速かったので記録が残らなかったと思われる、と結論づけた。

ところが1981年、パキスタンの砂漠で、ミシガン大学の古生物学者フィリップ・ギンガリッチとドナルド・ラッセルによって驚くべき発見がなされた。長年探し求められてきた移行期のクジラがついに見つかったのだ。5300万年前の淡水の堆積物のなかから彼らが見つけ出した化石は、頭骨の後部だけだったが、まぎれもないクジラ目の特徴を有していた。その種はパキケトゥス・イナクスと命名された。

現生のクジラは、尾ビレ、換気孔、脂肪の多い皮を特徴とするが、それらはすべて海で暮らすようになってから進化したもので、初期のクジラはどれもそのような特徴を備えていなかった。すべてのクジラに共通する特徴は、それほど目立たないもので、なかでも重要な頭骨に見ることができる。クジラにはほかの哺乳類同様、頭骨の裏に耳骨胞と呼ばれるドーム型の囲まれた耳骨がある。ほかの哺乳類との違いは、そのドームの縁の、頭骨のセンターラインに近い部分が、分厚く硬い高密度の骨になぅていることあ。そのような耳骨胞の肥厚はPachyosteosclerosisと呼ばれ、哺乳類のなかでその特徴が見られるのはクジラしかいない。そして、パキケトゥスの頭骨にはそれが認められた。

さらに喜ばしいことに、パキケトゥスの歯はメソ二クスの歯によく似ていた。どうやらヴァン・ヴァレンの予測は正しく、パキケトゥスは沼に棲む動物の類だったらしい。淡水の堆積物のなかから発見されたが、水中で音を聴くための特殊な内耳をもっていなかったので、水中生活に移行する、ごく初期の段階にあることがわかった。