じじぃの「科学目線・祖先たちの航海術・旅は自らの意志で行われた!生態の雑学」

日本人はどこからきた? 3万年前の巨大な謎にせまる大航海プロジェクト

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=RzqsyLSFIUc

海部チームの「3万年前の航海」への挑戦


第五部 第2章.国立科学博物館海部陽介チーム「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」は3万年前の航海を再現できたのか

海部チームの「3万年前の航海」への挑戦

海部は、日本列島に移住してきた三つの集団のうち、最初に移住し縄文人を形成した東南アジアに住んでいた人々と、その人々が渡ってきたと思われる琉球列島ルートに注目する、という。
れらのテスト航海は失敗に終わった。草束や竹の舟はスピードが出ず、黒潮を横断することができなかったのだ。
その後、3万年前の石斧を使って杉の大木を伐採、6000年前の縄文時代の丸木舟を復元した。この船はスギメと命名され、2018年10月に千葉県館山沖てテスト航海に成功。
そして2019年7月、日本中の選りすぐりのカヤックなどの漕ぎ手を集めたクルーを載せて台湾南部・台東縣から出航したスギメは、予想より長い45時間、ほぼ2日かかったが、与那国島に到着し、黒潮横断航海実験は成功した。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~friedeundfreiheit/pt5ch2%203mannen.html

『科学目線 上から、下から、ナナメから』

元村有希子/著 毎日新聞出版 2024年発行

本物か、偽物か、それが問題だ。
混迷の時代をわたしたちはどう生きるか。
文系出身科学記者による最新エッセイ!

2章 森と薪と人 より

祖先たちの航海術

知らず知らず眉間にしわが寄るような、都会での生活。深呼吸したくなる時、私は冒険物語を読むことにしている。

植村直己犬ぞりに乗り、独りで北極圏を横断するルポや、南極点を目指す途中に遭難しながら全員が生還した「エンデュアランス号」の物語。いかだで南太平洋を8000kmも漂流した「コンチキ号」の物語にもわくわくしたなあ。

そんなわくわく感を、2019年の夏はリアルタイムで体験した。国立科学博物館の人類学者、海部陽介さんらが挑んだ「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」である。

私たちの祖先は3万年以上前、大陸から渡ってきたと考えられている。出土した人骨などがら考えられるルートは①サハリンから北海道へ②朝鮮半島から対馬へ③台湾から沖縄へ、の3つ。このうち海部さんたちは、3つめのルートを実際に渡ってみようと考えた。

台湾と沖縄の間には、幅100kmの黒潮が流れている。潮の流れは人間の早歩きぐらいだが、手こぎの船で横切るのは大変だ。

これまでの挑戦で、草舟は沈没し、竹舟は流された。最後の挑戦には丸木舟が選ばれた。手作りの石斧だけで巨木を切り倒し、これまた手作りの道具でくりぬいた。

ようやく完成した丸木舟は「スギメ」と名付けられた。
男性4人、女性1人のこぎ手が乗り組み、台湾の東海岸を出発したのは7月7日。もちろん、GPSも地図も、時計も持たない。昼は太陽、夜は星空を手がかりに、方角を推測しながらの航海である。

果たして45時間後、舟は200kmあまりを旅して与那国島にたどり着いた。全員が無事だった。
やってみて分かったことと、あらたに生じた疑問がある、と海部さんは言う。

分かったことは、この旅が実際にあったとすれば、それは決して「漂流」ではなく、意志をもって行われただろうということ。

疑問は、「これほど困難な事業を、なぜ我々の祖先はやってのけたのか」。つまり動機だ。

遺跡をいくら掘り返しても、その時代に生きた人々の胸の内まではわからない。だけど想像することはできる。

獲物を求めて転々とする暮らしにあきたのか、別の集団がやってきて追い出されたのか、それとも、たまたま山の頂上から、水平線の向こうにうっすらと見えた島影に好奇心をそそられたか……。想像力がかき立てられる。

航海の様子を記録した映像を観た。容赦ない夏の日差しにあぶられながら不眠不休でこご続けた5人が、2日目の夜は疲労困憊、眠りこけてしまう。夜明けとともに1人、また1人と起き出し、島影に向かってこぎ始める。

大自然の中で人間はちっぽけな存在である。でも私のルーツを彼らに行き着くのだろうか。そんなおおらかな気持ちにさせてくれる挑戦だった。

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じじぃの日記。

ホモ属(ヒト属)はアフリカに、約200万年前に現れた。

ホモ属には現生人類のホモ・サピエンスの他、ホモ・エレクトゥスジャワ原人北京原人)やネアンデルタール人が含まれる。
「出アフリカ説」によれば、約6万年前にアフリカを出た現生人類は南極を除く全世界に移住していった。

なぜ、ホモ・エレクトゥスネアンデルタール人が絶滅して、ホモ・サピエンスだけが生き延びたのか?

イアン タッターソル著『ヒトの起源を探して 言語能力と認知能力が現代人類を誕生させた』には、約6万年前に、アフリカを出た現生人類が短い期間にオーストラリアにたどり着いたことに驚きをもって書いている。

ホモ・エレクトゥスネアンデルタール人はアフリカを出ても、ユーラシア大陸までしか移住しなかった。
現生人類のホモ・サピエンスは大海原を渡り、オーストラリアやイースター島にたどり着いた。

ネアンデルタール人が絶滅した理由に、現生人類と比べてコミュニケーション能力が劣っていたからだとか、いろいろ挙げられている。

しかし、未知の世界に果敢に向かっていった現生人類の能力は、彼らと決定的に異なっている(サイコパスな人間)という説がある。