ネアンデルタール人の絶滅
ネアンデルタール人は人間に絶滅させられたのではなく「勝手に絶滅した」という主張
2020年01月03日 GIGAZINE
約40万年前に現れたヒト属の一種であるネアンデルタール人は、現生人類と数十万年にわたって地球上で共存していましたが、約4万年前に絶滅したとされています。
人口シミュレーションの結果、人間との直接的な衝突や資源の奪い合いといった競争を排除したとしても、最大で1万年もあればネアンデルタール人が高い確率で絶滅してしまうことが判明しました。
ネアンデルタール人の集団は人類と出会う以前からかなり小規模だったため、単に「人口が少なかった」というだけで、特別な外部要因なしでも勝手に絶滅してしまう可能性が十分にあったそうです。
https://gigazine.net/news/20200103-human-didnt-wipe-out-neanderthals/
第3章 「人類揺籃の地」アフリカ――初期サピエンス集団の形成と拡散 より
出アフリカ
ゲノム解析から、数十万年以上も前のホモ・サピエンスとネアンデルタール人の交雑が明らかになっていますので、ホモ・サピエンスがアフリカで誕生したのだとしても、そのころにはすでに出アフリカを成し遂げていた可能性も低くありません。この意味での「出アフリカ」の舞台となるのは、アフリカと陸続きのレバントと呼ばれる東部地中海沿岸地方だと考えられています。特にエジプトと接する現在のイスラエルでは、ネアンデルタール人とホモ・サピエンス双方の化石が出土しており、ホモ・サピエンスの出アフリカを考える上で重要な証拠を提供しています。
ヘブライ語で「洞窟群の渓谷」を意味する、イスラエルのカルメル山麓にあるナハル・メアロット渓谷には、タブーン洞窟とスフール洞窟という、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの化石が出土している洞窟があります。この地域でもっとも古いネアンデルタール人骨は、タブーン洞窟から出土したもので、17万~10万年前のものとされています。アムッド洞窟やケバラ洞窟など、イスラエルの他の地域で発見されたネアンデルタール人骨はいずれも6万年ほど前のものと考えられており、タブーン洞窟のネアンデルタール人とのあいだには時間的に大きなギャップがあります。
一方、スフール洞窟から発見されているホモ・サピエンスの化石は13万~10万年前と推定されており、タブーン洞窟のネアンデルタール人よりは新しい可能性があります。それでも、他のネアンデルタール人よりは古くなります。エズレル平野にあるカフゼ洞窟から出土したホモ・サピエンスは9万年ほど前のものとされ、これも新旧のネアンデルタール人の生息時期のあいだに挟まっています。
第4章 ヨーロッパへの進出――「ユーラシア基層集団」の東西分岐 より
出アフリカと環境変化
東アフリカの集団の中に出アフリカを成し遂げたグループがいたと考えられる根拠は、地理的な位置関係および前章で説明した古代ゲノムの系統解析です。しかし、直接的な証拠となる出アフリカを成し遂げた人びとのゲノム情報を得ることができていないこと、アフリカ以外でもっとも古いホモ・サピエンスのゲノムが4万5000年ほど前のウスチ・イシム(シベリア)など数体しかなく、1万年以上のギャップがあることなどの理由が、実態についての解明を難しくしています。
化石の証拠でも、中東とアフリカを除くと、出アフリカ以降のもっとも古いホモ・サピエンスの化石は5万年ほど前の東南アジアやオーストラリアから出土したものになり、最初にアフリカを出た人たちの姿形を推測するのに適当なものではありません。この予想される出アフリカの時期と、それ以外の地域で見つかる証拠とのあいだの1万年間は、今のところホモ・サピエンスの拡散を考える上で空白の期間になっています。
ホモ・サピエンスが世界展開を成し遂げた6万~5万年前から、農業生産が始まる1万年ほど前までの時代を後期旧石器時代と呼びます。この時代には、ホモ・サピエンスがユーラシア大陸に拡散するだけではなく、かつてそこに住んでいた私たち以外の人類が消滅しました。
後期旧石器時代は最後の氷期に当たっており、非常に乾燥していて、一般に寒冷なイメージですが、実際には短い周期で気候が激しく変動していたことが最近の研究でわかっています。一方、気温の低下による氷河や氷床の発達は海水面の低下をともない、海面が最大で約120メートルも低下したとも考えられています。その影響で海岸線は現在よりも沖に移動して、世界の各地で陸地が広がっていました。
6万年前から気候は温暖化に向かいましたが、その後、反転して5万年前から寒冷化に向かいました。もっとも氷床が拡大した、およそ2万1000年前(2万6500~1万9000年前)を最終氷期の最寒冷期と呼び、この時代が過去数万年間の中で一番寒い時期に当たります。それ以降、気候は徐々に温暖化に向かいましたが、1万3000年ほど前に大きな「寒の戻り」が起こり、一時的に氷期のような寒冷な気候になりました。
この時期はヤンガードリアス期と呼ばれており、約10年で気温が8度近く上下降したということがわかっています。この環境と地形のドラスティックな変化は、ユーラシア大陸に展開したホモ・サピエンスの離合と集散を促したと考えられます。