じじぃの「カオス・地球_324_LIFESPAN・第8章・100年以内に人類は滅亡する?」

【経済思想】マルサスの「人口論」を8分でわかりやすく解説

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https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=wyWKUnjRLYU

イーロン・マスク氏はSpace Xの火星移住計画を発表した


イーロン・マスク氏、100万人の火星移住計画の最新情報を発表

Jun. 20, 2017 Business Insider Japan
2016年9月、イーロン・マスク氏は、メキシコのグアダラハラでスペースX(Space X)の火星移住計画を発表した。

マスク氏のプレゼンテーションは2つの理由で大胆なものだった。第1に、計画そのものが野心的だった。同氏は、いわば地球の「バックアップドライブ」として、火星に1人当たり10~20万ドル(約1100~2200万円)で100万人を送り込もうとしている。第2に、同氏がこのプレゼンテーションを行ったのは、スペースXのロケットが発射台で爆発した数週間後だった。
https://www.businessinsider.jp/post-34410

LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

【目次】
はじめに――いつまでも若々しくありたいという願い
■第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
第1章 老化の唯一の原因――原初のサバイバル回路
第2章 弾き方を忘れたピアニスト
第3章 万人を蝕(むしば)む見えざる病気
■第2部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
第5章 老化を治療する薬
第6章 若く健康な未来への躍進
第7章 医療におけるイノベーション
■第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)

第8章 未来の世界はこうなる

第9章 私たちが築くべき未来
おわりに――世界を変える勇気をもとう

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『LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界』

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント/著、梶山あゆみ/訳 東洋経済新報社 2020年発行

第8章 未来の世界はこうなる より

地球が抱えきれる人口――「100年以内に人類は滅亡する」という警告

私たちの歴史が幕をあけてから最初の数十万年間、人類の数はゆっくりとしか増えなかった。絶滅しかけたことも少なくとも一度はある。古期後半から旧石器時代前半にかけての地質時代からは、若い骨がたくさん発掘されている。だが、40歳を超える個体の骨は数えるほどしかない。今の私たちが「中年」と呼ぶ年代まで生きるような贅沢(ぜいたく)は、ほとんど許されていなかったのだ。思い出してほしいのだが、これは十代の少女が母となり、十代の少年が戦士となる時代である。世代交代はどんどん進んだ。誰よりも速く、誰よりも賢く強く、誰よりも強靭な回復力をもっていなければ、生き残るのは難しい。人は巧みな二足歩行と分析能力を短期間で進化させたが、その陰には、早くに失われた大勢の命と厳しい暮らしがあった。

祖先たちは体が許す限り早く子をつくった。それは、死んでいく早さをわずかに上回る程度にすぎなかったが、それでも十分だった。人類は生き延び、やがて地球の隅々にまで広がっていく。クリストファー・コロンブスが新世界を再発見する頃になって、ようやく世界の人口は5億に届いた。ところが、それからわずか300年で人口は倍増する。今では、新しい人間の命が1つ誕生するたびに地球はますます混み合っていき、1個の惑星が養いきれる限界に向けて(ことによるとそれを大きく超えて)突き進んでいる。

いったい何人いたら「いすぎ」になるのか。ある報告者で65通りの科学的予測を突き合わせたところ、地球の「環境収容能力」、つまり抱えきれる人数の上限は80億人だとする予測が最も多かった。それはおおむね、今まさに私たちがいる位置である。しかも、まともな人間なら誰しも願うように、核戦争による大量虐殺や恐ろしい感染症の歴史的大流行が起きないとすれば、そこで人口が頭打ちになるとも思えない。

アメリカのシンクタンク、ピュー研究所は、世界最大の学術団体であるアメリカ科学振興協会の会員を対象にアンケート調査を行なった。すると、人口の急増によって食料や資源の不足が起きると回答した者が82%に上った。そう答えた1人がフランス・フェナーである。フェナーは著名なオーストラリアの科学者で、「世界天然痘根絶確認評議会」の委員長として天然痘の根絶に力を尽くした人物だ。
1980年には、世界保健機関(WHO)に対して天然痘の根絶宣言がなされたが、そのとき実際に宣言する栄誉を担ったのが何を隠そうこのフェナーである。かつて天然痘は、患者の3人に1人が命を落とす恐ろしい病気だった。そんな殺人ウイルスから大勢の人を守ったのだから、フェナーが多少おめでたすぎる見通しを抱いたとしても誰も文句はいわなかぅただろう。人類は一致団結して自らを救うことができると、そう考えてもいいはずだった。だが、フェナーの思いは違った。

フェナーは初め、一線を退いたら静かに余生を送るつもりでいた。だが、その知性は休むことを知らなかった。大きな問題をあぶり出してそれを解決したいという、やむにやまれぬ思いに衝き動かされていたのである。引退後も20年にわたって、人類が直面する数々の脅威について執筆を続けた。もっともその多くは、公衆衛生の世界的リーダーたちからほとんど黙殺された。かつて天然痘根絶に向けて共に手を携えた仲間だというのに。

フェナーが最後の警告を発したのは、2010年に亡くなるわずか数ヵ月前のことである。「オーストラリアン」紙によるインタビューのなかで、人口爆発と「無節操な消費」によって人類の運命はすでに決していると語ったのだ。そして、人類は100年以内に絶滅するだろうと予言した。「現時点でも人は多すぎるのだ」

こうしたことが叫ばれるのは、もちろん今に始まったことではない。19世紀が幕をあけた頃、世界の人口がみるみる10億を突破したのを受け、イギリスの経済学者トーマス・マルサスは警鐘を鳴らした。
食料の生産量が向上すれば必然的に人口増加につながり、貧困層の数が増える。そうなれば、彼らが飢えと病気に見舞われる危険性も高まると説いたのである。

先進国から見ると、マルサスのいうような大惨事はおおむね避けられているように思いがちだ。農業技術が進歩したおかげで、私たちは厄災の一歩先を行くことができる。しかし、世界に目を転じれば、マルサスの予言はほぼ的中しているといっていい。マルサスの時代の全人口と同じくらいの人数が、現代の地球で飢えに苦しんでいる。

1968年、世界人口が35億に近づいた時代、スタンフォード大学のポール・エーリック教授と、その妻で、スタンフォード保全生物学センターの共同所長アン・エーリックは、ベストセラーとなった著書『人口爆弾』(河出書房新社)のなかで再びマルサス流の不吉な予言を記した。
私が幼い頃、この本は父の本棚の目立つところに置かれていた。ちょうど子どもの目の高さである。表紙はなんとも不気味だった。丸々と太った赤ん坊が爆弾の中で微笑んでいるのだが、爆弾の導火線には火がついているのである。何度かそれの悪夢を見たものだ。

だが、表紙の中身はさらに恐ろしかった。本のなかでエーリックは、来たるべき恐怖に「目覚めた」瞬間の事を綴っている。
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こうした予言の最悪のシナリオは今のところ実現していない。しかし、マルサスにしろエーリック夫妻にしろ、食料生産と人口の関係に注目しすぎるあまり、もっと大きな長期的なリスクを過小評価していたのではないか。仮に大量飢餓で数億の命が奪われるにせよ、地球が反乱を起したら被害はそんなものでは済まない。私たち全員の命がなくなるのだ。

その点に目を向けたのが、理論物理学者の故スティーヴン・ホーキングである。ホーキングは2016年11月、人類がこの「壊れやすい惑星」で暮らせる時間はあと1000年も残されていないと予言した。さらに、その後数ヵ月のあいだ重い巡らせた末に、この数字を90%下方修正する。

フェナーの警告をなぞるように、人類はあと100年のうちに新しい住みかを見つけたほうがいいと説いたのだ。「地球上では場所が足りなくなっている」とホーキングは訴えた。

見つけるといってもどうすればいいのか。太陽系から一番近い地球型の惑星であっても、約4.2光年のかなたにある。ワープ航法やワームホール移動技術が大きく進展しない限り、たどり着くのに1万年はかかるだろう。