【20分でわかる!温暖化ってヤバいの?】地球温暖化のリアル圧縮版②
図8 IPCC第3次評価報告書による、2100年までの地球平均気温変更予測
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地球温暖化研究、世界の視点と動向
国立環境研究所
●世界では
「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」は、気候変動に関する最新の科学的知見を集約した評価書を随時発表しています。
「第3次評価報告書」(2001年)では、1990~2100年の地表気温は地球全体の平均で1.4~5.8℃上昇すると予測していました(図8)。
現在は「第4次評価報告書」(2007年)の準備を進めており、日本を含め世界中の研究機関による20以上の気候モデルの予測結果が用いられる予定です。2013年以降の世界規模の温暖化対策をまとめる上で、「第4次評価報告書」のデータは、各国の指針を決定づける極めて重要な意味を持っています。
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/19/12-13.html
2050年の世界――見えない未来の考え方
【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断
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『2050年の世界――見えない未来の考え方』
ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化 より
気候変動――なにが起きるのか、わたしたちになにができるのか
科学の話からはじめよう。この先、非常に大きな変化が起きる。
わたしたちがなにをしようと、それは変らない。気候変動は実際に起きていること、そしてそれは人間の活動によって引き起こされた結果であり、大気中に温室効果ガスが蓄積されていることが大きいという点で、科学者の意見は広く一致しており、わたしたちはそれを受け入れなければいけない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は世界の気温がどこまで上昇する可能性があるか推計しており、その結果を図(画像参照)に示す。
心配なことに世界の気温が上昇するペースは上がっているように見える。悲観的な予測の気温幅は、恐ろしいとしか言いようがない。
こうした推計には疑いの目も向けられるだろうし、それは自然なことである。1950年代に育った人なら、当時は地球の寒冷化が強く懸念されていたのを思い出すのではないか。世界は新しい氷河時代に向かっていると言われていたのだ。結局、それはまちがっていた。しかし、当時の科学者がまちがったからといって、科学者が今度もまちがうというわけではない。地球温暖化は人間の活動以外の要因によって引き起こされていることす示すエビデンスがあるとの意見も聞かれる。これはごく少数の意見なのだが、たとえそれを受け入れたとしても、二酸化炭素の排出を抑えるのは正しいはずだ。世界の人口が増えて、大半の人の生活水準も上がっているため、ふつうに考えると、わたしたちが地球にかける負荷をできるだけ少なくするべきである。
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気温の上昇を1.5℃まで抑えるという目標が達成されているようであれば、2050年まで漸進的な進歩がつづく。
政府の行動、消費者の圧力、技術の進歩が組み合わさって、世界は定常経済へと向かいつづけるだろう。定常経済とは、炭素の排出量が大きく増えることなく成長を維持できる経済である。実際、2050年には炭素の排出量は減少に転じていると見られる。過去の行動の遺産効果で、世界の気温は上がりつづけていくが、2100年にピークアウトする見通しである。
逆に、2020年代なかばには気温が2℃を超えて上昇するのが避けられなくなれば、政策を大幅に転換することになる。気温の上昇を食い止める取り組みが足りないと気づくと、世界はもてる力を結集して立ち向かうだろう。
新型コロナウイルス危機に総力戦で対応してきたことを思い浮かべてほしい。世界の大学と製薬会社が、政府の資金援助を受けて、ワクチンを短期間で開発した。政府は経済支援に巨額の予算を投じた。企業も人も、驚くほどうまく適応した。世界経済が危機を乗り越えられたのは、協調と競争があったからだ。もちろん、ウイルスの起源と中国当局の調査への対応にも疑念と怒りの声も上がったし、ワクチン開発では主導権争いもあった。しかしこの人類の危機に、国際社会はかつてないほど結束して立ち向かった。
気候危機への対応でも同じようなことが起きるにちがいない。とるべき政策ははっきりしている。世界の主要経済大国である中国、アメリカ、インドは、いずれも気候変動からとくに大きな影響を受けている。中国は熱波と汚染に加えて、水不足も深刻だ。アメリカではフロリダなど海抜の低い地域の不動産に巨額の投資が行われており、海面上昇による脅威が迫っている。そしてインドは、すでに気温が上昇して甚大な影響が出ており、水の供給も厳しくなっている。
だからといって、それ以外の国・地域は重要ではないと言っているのではない。むしろ逆だ。気候変動から最も影響を受けるのは、サハラ以南アフリカにいる何億もの人びとである。ロシアは国土面積が世界一で、圧倒的に広いため、ロシアがすることは非常に重要になる。アマゾン盆地は、世界に残存する熱帯雨林の半分以上を占めており、盆地を保護する現地の政策は、南アメリカだけでなく、地球全体にとっても大きな意味をもつ。だが、失うもが最も多いのが3大人口大国でもある中国、アメリカ、インドであり、3ヵ月のあいだで合意をまとめるのは、20以上の国・地域のあいだで合意をとりつけるよりずっと簡単だろう。
「漸進的な改善」シナリオと「総力戦」シナリオでは、どちらのほうが可能性は高いのか。これはだれにもわからないだろう。温暖化する世界に適応する努力と温暖化を止めようとする試みの適切なバランスなどわかるわけがないのと同じである。わたしがなによりも心配しているのは、2030年までに気温が1.5℃を超えてしまっていることだ。もしもそうなったら、世界は人類が安全に住めるところではなくなる。政策は変化しているが、変化のスピードは十分とは言えない。そのためつぎの10年が非常に重要になる。
気温が1.5℃上昇する世界と、2℃上昇する世界には、雲泥の差があることはみんなわかっている。
前者の場合、状況は厳しいが、なんとか対処できる。後者は過酷としか言いようがない。行動を起こすのが早ければ早いほど、効果が大きくなることも、みなわかっている。2020年代から2030年代のどこかで壊滅的な事象がつぎつぎ発生し、それをきっかけに国際社会が調和のとれた大規模な対応をとるようになるかもしれない。しかし現実問題として、わたしたちがなにをしようと、どれだけ不確実性が大きかろうと、気候変動は2050年どころか、そのずっと先も重大な懸念にある。ほかのすべての環境問題が小さく見えるほどだ。
進むべき道
わたしたちが地球に残すフットプリントはますます増えており、それを嘆くのは簡単だ。いわゆる生活水準の向上が環境に負荷をかけているのは、だれの目にも明らかである。2050年には中間層の生活様式を世界の大半の人が送れるようにするには、まったく新しいテクノロジーを開発する必要がある。農作物の生産量を増やす。エネルギーを生産・貯蔵する新しい形態を見つける、住宅の性能を高める、輸送の効率を上げるなど、例をあげたらほとんどきりがない。
そうした進歩には光と影がある。わたしたちは「貧困をなくそう」と語る。崇高な理念として貧困をなくすべきであるのはたしかだ。だが、貧困をなくすということは、人びとがより多くのエネルギーを消費し、もっと旅行できるようになり、より長く生きるようになるなど、経済発展のあらゆる恩恵を受けるようになるということだ。
現状を嘆いている人は、つきつめれば、人類の創意と適応能力を無視している。わたしたちはいくつもの過ちを犯してきた。それを過ちと知らないときもあれば、わかっていてそうしたときもある。愚かとしか言いようのない行為もたびたびあった。戦争を通じて人間同士が殺し合うだけでなく、環境を破壊し、資源を浪費する。しかし、人間の英知の力によって、数多くの先進国が課題を解決するためのフロンティアを切り拓いてきた。わたしたちはいまでは親や祖父母や曽祖父母よりも長生きして、健康に暮らしているし、汚染も相対的に減っている。人類の英知と創意はこれからもっと必要になるが、わたしたちはこれまでに過ちを繰り返してきている。このつぎなる課題に対応できるのだろうか。あくまでも合理的に考えれば、答えは「イエス」であるはずだ。