Tracking the Eastern Curlew | Flyways: The Story of Migratory Shorebirds | ABC TV + iview
Australia plan to protect 'long-haul' birds
Flying for their lives
Updated 3 May 2017 ABC News
Every year, millions of shorebirds fly between Australasia and the Arctic. But for many, this will be their last flight.
https://www.abc.net.au/news/2016-06-17/flying-for-your-life-ann-jones/7459288
2050年の世界――見えない未来の考え方
【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
『2050年の世界――見えない未来の考え方』
ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋 より
幸運な国は1つではなく、2つになる
最初に、南西の端にある2つの英語圏の国、オーストラリアとニュージーランドについて考えてみよう。
オーストラリアは幸運な国である。ほとんどの点で、幸運な国でありつづけるだろう。さまざまな理由でつぎの30年は追い風を受けるようになるからだ。国土が広い。世界の多くの人がうらやむ文化がある。東アジアの時間帯にある。東アジアはいま、アフリカにういで2番目に速く成長している地域だ。そしてアングロ圏の一角である。それ以外にも、第1章であげたような数々の強みがある。だが、非常に大きな問題が1つある。世界で最も乾燥した大陸であり、気候変動の脅威にさらされている。その意味では先進世界で最も脆弱な国だと言っていい。
オーストラリアは移民を引き寄せる磁石でありつづけ、アングロケルトのルーツからさらに少しずつ離れていくことになる。人口は4000万人に向かい、若くて活気のある国でありつづける。鉱業や農業が経済に占める比重は下がっていき、教育、情報、娯楽へのシフトがさらに進む。一言でいえば、大きなサクセスストーリーでありつづける。世界中の有能な人材が暮らし、働き、遊ぶところとして選ぶようになる場所の1つとなる。
しかし、光があるところには影がある。オーストラリアはこの先、気候が温暖化し、おそらくはいま以上に乾燥化が進む環境に対処するすべを身につけなければいけなくなる。それは希少な水資源をもっと注意深く管理していくとか、住宅やオフィスにもっと強力なエアコンをつけるとかいう問題ではなくなる。そういったことが重要であることはたしかだ。だが、気候変動とどう共生していくかだけでなく、気候変動をどう逆転させるかを根本から考え直すことも、オーストラリアにとっては同じくらい大切になってくる。もちろん、人口4000万人の国がなにをしたところで、気候変動に対する世界の取り組みが大きく変わるわけではない。オーストラリアにできるのは、ベストプラクティスを見つけて、それを活用することだ。オーストラリアはいまから30年後もなんの問題なく暮らせているだろう。だが、国のリーダーはそのはるか先を見据えなければいけない。2100年以降も緑豊かで快適な国でありつづけるために、オーストラリアになにができるのか。
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つぎの30年になにが起きようと、オーストラリアとニュージーランドは問題ないだろう。本書の大きな考え方の1つである「アングロ圏の時代がくる」という予測が正しければ、オーストラリアとニュージーランドがなにをしようと、その流れに乗る。
エリートチーム集団で構成されるプレミアリーグにあっては、どちらも格下のメンバーになるが、とてもおもしろいカードを手にしている。
……そして太平洋――世界最大の海
太平洋についてわかっていることはほとんどない。オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニアを除くと、2万5000の島々にほんの数百万人しか暮らしていない。小さな島々になにかをしたところで世界を大きく変える力はないが、太平洋の海上や海中でわたしたちがなにをするかで、世界は大きく変わる。人類は海にやさしかったわけではない。太平洋はとくにそうである。
南極大陸をおそらく例外として、太平洋は地球上で最も人間がいない場所なのに、世界で最も汚染された場所の1つも、太平洋上にある。ハワイとカリフォルニアのあいだに大量のプラスチックごみが漂う海域があり、その大きさはテキサス州に匹敵する。合法、非合法を問わず、乱獲が行われている。海の酸性化も進んでいる。問題はほかにもまだまだある。
だが、海には地球を助ける能力もある。人間の活動が大気中に放出する炭素の少なくとも4分の1、場合によってはそれ以上を海が吸収している。海についての理解が進めば、気候変動対策の突破口になるかもしれない。太平洋はわたしたちが加担してきた問題を解決できるわけではないものの、太平洋について深く知れば知るほど、解決策が見つかる可能性が広がる。
これは深刻な懸念であるが、気候変動だけの問題ではなく、もっと広い意味がある。海と海のなかで暮らす生物のことを知れば知るほど、目先の利益だけを追わず、未来の世代のために地球を守るという、より幅広い責任とのバランスを重視するようになっていく。
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太平洋周辺の活動については、少なくともかなりのことがわかっている。それに比べると、海のなかでなにが起きているのかついて、わかっていることははるかに少ない。海洋調査が行われているのは世界の海の20%に満たず太平洋にいたってはもっと少ない。
海への理解はすでに大きく進みつつある。2017年には海底の6%しか調査されていなかった。その後、日本財団主導で「大洋水深総図」を作成するプロジェクトが立ち上げられた。2030年の完成をめざしている。これは海底地形図をつくろうとするものだが、それ以外の知識もそこから流れ出てくるはずだ。太平洋に関してどんなことが明らかになるかについては推測するしかないとはいえ、環太平洋火山帯が世界経済に文字どおりの激震をもたらす可能性があることは指摘しておくべきだろう。
ニュージーランドで第2の都市、クライストチャーチで2011年に地震が発生したあと、人口が以前の水準に戻るまでに6年かかった。それと同じかそれ以上の規模の地震がアメリカ第2に都市であるロサンゼルス、あるいは世界最大の都市である東京を襲ったら、甚大な被害が出る。後者については、それを垣間見る出来事があった。同じ2011年に日本で地震と津波が発生したときには、福島原子力発電所の連鎖的な大事故を招く結果となった。ナポリを望むヴェスヴィオ火山をおそらく例外として、地震・火山活動が人類にもたらす最大の脅威は、太平洋を囲む”火の輪”にある。
このように、太平洋海盆は、大きな希望でもあり、大きな危険でもある。太平洋への理解が進み、敬意が払われるようになれば、この地球上で暮らす人類とほかの種にさらなる恵みがもたらされる可能性が高まる。こうした危険に対処し、破滅を回避できる可能性もだ。そして2050年には、わたしたちの理解はもっともっと進んでいるだろう。