じじぃの「カオス・地球_153_2050年の世界・アフリカ・中東の将来」

【人口予測】2100年世界人口ランキング

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=CrVOD2Ow_aM

世界の主要地域別人口

日本財団図書館 世界の人口

●世界の主要地域別人口
アジアが世界の人口の6割を占める。人口増加率はアフリカの年2.4%が最も高い。
https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00181/contents/003.htm

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア

第10章 アフリカ・中東

第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第10章 アフリカ・中東 より

サハラ以南アフリカ――雇用を生み出す

大きな課題は4つある。
急増する若者に仕事を見つけること、気候変動がもたらすさまざまな脅威に対処すること、弱い統治を改善すること、そして宗教間の緊張を抑えることだ。

なによりも求められるのは仕事である。ナイジェリアの年齢の中央値は18.1歳だ。ナイジェリアはアフリカで人口がいちばん多く、2050年には4億人になると予測されている。アフリカ全体の年齢の中央値は20歳に満たない。そのときアフリカの人たちはどんな仕事をしているのか。この問いには経済学者の古典的な回答がある。「市場が決める」。
ナイジェリアの場合、第1章で述べたように、企業熱が非常に高い。人口がものすごい勢いで増えているという事実そのものが、やらなければいけないことにつながる。膨れ上がる人口に食べるものと着るものを与えなければいけない。家も建てなければいけない。教育と医療に対する需要も増えつづける。そのすべてが仕事を生む。

だが、国内市場にサービスを供給するだけでは足らない。どの国も、いわゆる「換金作物」をつくらなければならない。アフリカに必要なのは、世界に競争力のある価格で輸出できる財・サービスだ。いまの時点では主に一次産品がそうである。ナイジェリアであれば石油・ガス・南アフリカタンザニアなら鉱物と金、コンゴだと食用作物といったぐあいだ。世界人口はまだ増えつづけるため、原材料の需要は拡大しつづけるし、食料生産をできるだけ増やさなければいけない。ところが、サハラ以南アフリカでこうした分野での競争優位が失われるおそれがある。中国はこれからもアフリカ大陸の資源を買いあさろうとするだろうが、中国の人口が減れば、需要も減る。いまは食べ盛りの若者も、年をとればあまり食べなくなる。

だとしたら、急増するアフリカの人たちはどう対応するのだろう。起業家精神が尽きることはない。これが答えである。そのため、携帯電話のときのようにテクノロジーを革新的に活用して、アフリカ経済をより付加価値の高い財・サービスの市場への押し上げる方法を見つけるだろう。それはフロンティア型の成長ではなく、キャッチアップ型の成長になり、国や地域全体で大勢の人が不完全雇用の状態に置かれることになる。
しかし、生活水準はいまの2~3倍になるものと十分に予想できる。それは平均であって、どの平均もそうであるように、慎重に見なければいけない。残念だが、極度の貧困状態に陥っている地域はあり、全体として、アフリカの人びとの大部分はたとえばインド亜大陸の人びとの大部分の大部分ほど豊かにならない。それでも、いま生きている子どもの大半が、自分の親よりもよい教育を受け、よい食事をとって健康に育ち、雇用される機会が広がるようになる可能性はとても高い。

中東――安定を願い求める

中東は地球上でもとくに不安定な地域の1つだ。戦争で命を落とした何百もの人、故郷を追われて難民キャンプで暮らす何百人もの人にとって、半世紀以上にわたる争いの歴史は耐えがたいものである。
悲しいが、今世紀末までは不安定な状況は変わりそうもなく、その先も混乱はつづくと思われる。2050年にはいまよりも落ち着き、穏やかになっている可能性を切り捨ててはならない。実際、そうなる可能背うは十分ある。しかしまた、中東はみずからを、そして世界を破滅にひきずり込みかねない場所の1つであるのもたしかだ。そうだとすれば、わたしたちになにか言えることはあるのだろうか。

重要な問題は3つあある。イスラエル周辺諸国の関係、イランの動き、そして中東地域と世界における石油・ガスの重要性だ。
1つ目と2つ目は、経済の問題というより地政学の問題になる。リビアに例をあげるまでもなく、中東の情勢は予測不可能であり、こういう問題があると指摘することしかできない。それでも、この3つの点について少し考える価値はある。

イスラエルについては、目に引く点が2つある。1つは中東で最も進んだ経済圏であること、そしてもう1つは、地域経済であまり大きな役割を果たしていないことだ。経済の構造も能力も十分に発展しており、西ヨーロッパ、北アメリカ、日本などに肩をならべる水準にある。しかし、中東地域には統合されていない。イスラエルの経済がつながっているのはヨーロッパと北アメリカであって中東ではない。理由は明らかだ。
イスラエルはアラブ地域にあるユダヤ人国家であり、ヨルダン川西岸・ガザ地域をめぐる対立、そして周辺諸国との関係と、いくつも問題を抱えている。
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だが、イランが今後、どのような方向に進むかを見通すのはむずかしい。一方の極端では、反革命が起こって、1979年にパフラヴィー王朝を倒すにいたった流れが反転する可能性がある。現行の神政政治はほかのなんらかの統治形態にとってかわられる。しかし、革命はまず例外なく破壊を伴う。平和や秩序を保ったまま進むとは考えにくく、そんなことはだれも望んでいない。

そしてもうひとつの極端では、イランは西側の文化を敵視し、アメリカと中東でのアメリカの同盟諸国を非難しつづける。その結果、いろいろな対立が起きて、そのどれかが新たな地域戦争へとつながっていくかもしれない。最悪の結末は恐ろしいとしか言いようがない。