トヨタ 去年の世界販売台数が1000万台超 3年連続の世界一
2023/01/30 テレ朝news
トヨタ自動車グループの去年の世界販売台数は1048万3024台と、ドイツのフォルクスワーゲンの826万台に大きく差を付けて3年連続で世界一となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大や半導体不足の影響を受け、販売台数は前の年に比べて0.1%減りましたが、アジアを中心に需要が堅調だったことから、前の年の水準を維持できたということです。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000285430.html
2050年の世界――見えない未来の考え方
【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
『2050年の世界――見えない未来の考え方』
ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行
第9章 アジア より
インドとインド亜大陸――エキサイティングだが、道は険しい
世界にとって、インドは中国と同じくらい重要である。序章で述べたように、ローマ帝国時代にはインドの経済規模は世界最大だった。
1500年には中国とほぼ同じで、1820年もまだ中国につぐ2位だった。したがって、2050年にインドが中国、アメリカにつぐ世界3位の経済国なれば、インドにとっては、なによりもインド亜大陸にとっては、本来あるべき正しい状態に戻ったとみなされるはずである。2100年には、世界GDPに占めるインドのシェアはさらに上がっているだろう。
インドのナショナリストは、これに快哉を叫ぶのではないか。インド経済が中国、アメリカにつぐナンバー3になるだけでなく、EUも追い越すかもしれないのだから。インドをよく知っていて、インドが好きで、独立国家としてのインドの歩みをつぶさに見てきた人にとっては、それは非常に大きな進歩であることはまちがいなく、称賛されるべきである。しかし、警告もしておいたほうがいいだろう。なぜなら、2050年への道のりは障害と危険だらけになるからだ。インドはいくつもの障害を乗り越えなければならないし、さまざまな危険を警戒しておかなければならない。この旅はよいものになるだろうが、最悪の旅にならないとは言い切れない。
インドを待ち受ける障害は4つある。
第1に、インドは国のインフラを改善しなければならない。その必要性は広く認識されており、中国と比較するととくに遅れが目立つ。課題の規模はものすごく大きい。道路、水・衛生、住宅、通勤鉄道網、病院、学校、電気通信網、医療、電力供給など、例をあげればきりがない。 (略)
つぎはこの課題を見ていこう。
インドが直面する環境問題の大部分は、国がどうにかできる範囲を超えてしまっている。インド亜大陸は気候変動の影響がとくに受けやすいからだ。 (略)
3つ目の障害は教育だ。中間層の生活様式は、高スキルの労働力がなければ成り立たない。少なくとも今世紀前半は、インドの労働力が不足することはないだろうが、毎年大量の若者が労働力に加わるため、そのぶん仕事も増えなければいけない。 (略)
そして最後に、これは教育と関連してきるが、インドが調和のとれた未来を実現するには、格差の問題に取り込まなければいけなくなる。 (略)
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ところが、考えられないようなこと、考えるだけでもおぞましいことは起こりうる。
それは20世紀の歴史が物語っている。大惨事になる可能性がどれだけあるかは判断できる。しかし、たとえわたしが起こりそうもないと考えていても、こういうことが起きてしまう可能性はまちがいなくある。インドと中国がライバルになるのは避けられない。ある意味では、そうなってしかるべきだ。何世紀ものあいだ、インドと中国はまぎれもなく世界の2大経済国だった。2大文明でもあったと言っていい。つぎの30年には、世界最大の経済国と世界3位の経済国として、その関係がある程度復活する。インドと中国は何世紀にもわたって重要な貿易相手国として一定の協力関係を築いてきた。それが今世紀を通じてつづくかどうかは、両国のリーダーの判断にかかっており、世界にとっても、両国にとっても、重要になる。
日本――高齢化社会のパイオニア
日本は高齢化する先進世界の先頭を走っている。序章で見たように、すでに地球上で最も高齢な社会となっている。高齢化はさらに進み、2050年には人口が1億人前後まで減る。豊かな国でありつづけるが、労働力は総人口以上に速いペースで減少するため、高齢者がより高齢な人の面倒をみる国になる。
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これは問題なのだろうか。世界が日本になにを望み、なにを期待するかで、答えは変ってくる。繰り返すが、経済規模は相対的に小さくなっているにもかかわらず、日本は世界4位のまぎれもない経済大国でありつづける。西側連合とでも呼ぶべきものの一員でありつづけ、アメリカとの同盟関係は揺るがない。
高い能力をもつ製造大国でありつづける。世界中に物理的資産や金融資産を保有しつづける。日本の文化はほかの国々に強い影響を与えつづける。そして、同じように高齢化に直面するほかの社会の手本でありつづける。
どれもとてもすばらしいことだ。しかし、日本をよく知っていて、そんな日本が好きな人は目を背けたくなるが、それでも直視しなければいけない現実がある。
1つは経済の構造だ。日本は真のテクノロジー・リーダーの座を維持できるのか。いまの高い技術力は、1世代前に培われたスキルの上に成り立っている。 (略)
2つ目の懸念は、国の財政状況である。日本はすでに公的債務の対GDP比が世界の主要国のなかで最も高く、これからも上昇しつづける。この状況は持続不可能だ。 (略)
3つ目の懸念は地政学だ。日本は内向きになりすぎて、力を増す中国に対抗する勢力にはなれない。自国の領土は防衛するが(この問題についてはここでは論じない)、中国の領土拡大を止める盾には加わらない。盾はおそらく必要ない。
中国は、自国の固有の領土であるとする地域を占拠すれば、そこで踏みとどまる。いずれにしても、中国の領土拡張の野望はやがてついえるというのが本書の大きなテーマの1つである。しかし、東南アジアの近隣諸国のあいだの緊張を日本が傍観するようになるとしたら、不安を感じずにはいられない。
一言でいうと、日本は2050年も結束力のある安定した社会でありつづけるが、世界にあまり関心をもたなくなる。日本の優先課題は、国民を支えることと、深刻な財政問題を管理することになる。
国を閉じようとはしないが(そもそもできるわけがない)、相対的に犯罪が少ない環境や清潔さ、秩序を大事にする。周囲の国々が混沌とすればするほど、日本人は自分たちのやりかたのほうがいいのだと自信を深める。島国には、世界に目を向けて、支配するとまではいかなくても、少なくとも影響力を行使しようとする道も選ばれるし、世界への扉を可能な範囲で閉ざそうとすることもできる。1950年代から90年代までの40年ほどは、日本は前者を選んだ。トヨタ自動車や三菱系などの大企業は世界中で商業的成功を収め、その遺産はこの先も残る。だが、今世紀に入ってから、日本は後者の道を選んで後者の道を選んでいる。日本は2050年までその道をひた走っていくだろう。