じじぃの「カオス・地球_201_インドの正体・第3章・目標は世界の工場へ」

Top 20 Largest Economies in the World by 2050

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=czvQBg7cYtE


経済成長率予想No.1!? PayPay銀行

1.経済成長率予想No.1!? 中国を凌ぐ成長力
インドは新興国の中でも中国を凌ぐ高い経済成長率の継続が予測されています。
IMF国際通貨基金)の世界の実質GDP成長率予想では、インドは7.7%と主要先進国新興国の中で1位。2位の中国は5.9%と大差をつけています。

また、世界のGDPランキングではインドは2050年には米国を抜き、世界で第2位の経済大国になると予想されています。
https://www.japannetbank.co.jp/investment/trust/point_1905.html

中公新書ラクレ インドの正体―「未来の大国」の虚と実

【目次】
まえがき――ほんとうに重要な国なのか?
序章 「ふらつく」インド――ロシアのウクライナ侵攻をめぐって
第1章 自由民主主義の国なのか?――「価値の共有」を問い直す
第2章 中国は脅威なのか?――「利益の共有」を問い直す

第3章 インドと距離を置く選択肢はあるか?――インドの実力を検証する

第4章 インドをどこまで取り込めるか?――考えられる3つのシナリオ
終章 「厄介な国」とどう付き合うか?
あとがき

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『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』

伊藤融/著 中公新書ラクレ 2023年発行
「人口世界一」「IT大国」として注目され、西側と価値観を共有する「最大の民主主義国」とも礼賛されるインド。実は、事情通ほど「これほど食えない国はない」と不信感が高い。ロシアと西側との間でふらつき、カーストなど人権を侵害し、自由を弾圧する国を本当に信用していいのか? あまり報じられない陰の部分にメスを入れつつ、キレイ事抜きの実像を検証する。この「厄介な国」とどう付き合うべきか、専門家が前提から問い直す労作。

第3章 インドと距離を置く選択肢はあるか?――インドの実力を検証する より

世界一の人口大国へ
われわれとインド。自由や民主主義といった同じ看板を掲げてはいるものの、そのなかをよく覗いてみると、ほんとうに価値の大半を共有しているといえるのかどうか疑わしい。そして中国の台頭と挑戦をめぐっても、その対応には温度差があり、さまざまな場面でみずからは途上国、あるいはグローバル・サウスだと強調するインドとは、利害が全面的に一致するわけでもない。だとすれば、なぜそんな国と積極的に付き合わなければならないのか? もっと距離を置いてもいいのではないか? そういう疑問がでてくるだろう。本章では、われわれにとってインドという国と距離を置くという選択肢が現実的なものなのかどうかを検討してみたい。

その前提として大事なのは、インドという国の実力と潜在力がどの程度のものなのかを把握することだろう。インドは中国や韓国と違って、われわれの隣国というわけではない。もし現在も未来も、それほどのパワーをもつ国ではない、ということであれば、遠く離れたインドと無理して付き合う必要はない、という理屈も成り立つからだ。

まずは地理的な視点からみてみよう。前章でも指摘したが、この国はユーラシア大陸南端のインド亜大陸に位置する大陸国家であり、かつインド洋に面する海洋国家でもある。後者に関していえば、ヨーロッパ、中東と、日本や東・東南アジアをつなぐ海上輸送路の中央に、インドが位置するという点が重要だ。故安倍元首相も語ったように、インドの海域や港湾は世界中の通商の要といってよい。かつて、ソマリア沖・アデン湾の海賊問題が大きな脅威となった。インド洋に突き出したインドが、不安定化して同様のことが生じたり、万一、インドが航行の自由をを妨害するような国になったりするならば、国際通商に及ぼすダメージはそれ以上の甚大なものになる。

メルカトル図法の世界地図を眺めていてもピンとこないだろうが、地球儀をよくみると、インドは面積も意外なほど大きい国だ。もちろん中国にはかなわないが、インドの国土面積は、東欧を除く大陸ヨーロッパとほぼ同じくらいの規模になる。日本の8倍以上の広さだ。そして北部にヒマラヤ山脈があるものの、中央部のアカン高原を含め、国土の大半は、耕作あるいは牧畜が可能で、人の住める環境下にある。
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規模の大きさにくわえて、注目しておきたい特性は、その人口構成だ。日本では、少子化と高齢化が急速に進めつつあり、生産・消費の中核を担う世代の減少が深刻な問題となっている。長く「一人っ子政策」をつづけてきた中国においても、同様の傾向が指摘されはじめている。
インドはこれとは対照的だ。2019年に行われた総選挙の有権者数は、9億人だった。18歳以上の男女が有権者であるから、18歳未満の「子ども」がなんと4億人以上もいることになる。若い世代の多い「ピラミッド型」の人口構成だ。今後数十年間、生産・消費人口がこれだけの規模で増えつづける国はほかにない。

目標は「世界の工場」
この「人口ボーナス」こそ、インドの経済成長の土台だ。長らく「眠れる巨像」などと揶揄されてきたインド経済だが、1991年に本格的な経済自由化に踏み切って以降、段階的に規制緩和や民営化、外資の導入が進んだ。年率にしてほぼ5~10パーセントの経済成長がつづく。とくに2014年のモディ政権発足以降に絞れば、中国と同等か、あるいは上回る成長率の年がほとんどだ。長期のロックダウンを余儀なくされたコロナ禍の2020年こそ、日本以上の大きなマイナス成長となったものの、そこからの回復は比較的早かった。

順調な経済成長に伴い、国内総生産GDP)は着々と伸びている(画像参照)。
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このような自由化以降のインド経済の中心にあるのが、ITや金融を中心とする第3次産業の台頭だ。第3次産業は労働人口の3割強、GDPでは半分を占める。他方で、製造業など第2次産業は、未発達なままだ。たしかに医薬品の製造に関しては、モディ首相みずから「世界の薬局」と胸を張るほどの優位性を誇っている。しかし全体としてみれば、製造業はインドでは立ち遅れており、依然として4割以上の労働人口第1次産業に従事している。モンスーンがちゃんと来て、雨が降るか降らないかによって生活が左右される農村人口がまだまだ多いということだ。

そこで、豊富な若年層の所得を増やし、消費を拡大する。すなわち、人口ボーナスをもっと活かすためには、労働力の第2次産業への移行が欠かせない。2014年に成立したモディ首相が、「メイク・イン・インディア」のスローガンを掲げ、各国から製造業への投資を誘致しているのはそうした認識にもとずく。かつての中国と同様、インドが「世界の工場」となるのを目指しているのだろう。
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先進国と比べると大学進学率はまだ低いものの、進学希望者は増加傾向にあり、優秀なエンジニアを輩出してきたインド工科大学(IITs)などの入試競争は激しい。倍率100倍ともいわれる超難関大学を目指して、塾、予備校などに子供を通わせる家庭は多い。そうしたエリート校に入れば、カーストの壁も越えられるのではないか、という期待もある。ITのような新しい高度専門職は、伝統的なカースト(ジャーティ)には存在しなかったものだからだ。

海外への留学も増えている。とくにアメリカへの留学数では、2022年には、インド人は中国人を上回り、国別でトップに立った。米中関係の悪化の影響もあるが、英語にコンプレックスのない、それなりに裕福な家庭出身のインドの若者が増えているのだ。またインド国内でもIITs、デリー大やネルー大など、名の知れた名門国立大学だけでなく、近年、つぎつぎと私立大学が新設され、学生を受け入れている。こうした変化が起きているのをみれば、これからのインド経済の成長を支える土台は整いつつある。