じじぃの「カオス・地球_151_2050年の世界・アジア・中華圏の将来」

中国到2050年,国家到底有多強

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2050年の中国〈前編〉―週刊東洋経済eビジネス新書No.389

著者名:週刊東洋経済編集部【編】 2022/04発売
2021年7月、中国共産党創立100周年を祝う祝賀大会の熱気に包まれた北京の天安門広場
習近平国家主席は1時間超にわたり演説した。習政権の最終目標は「もう1つの100年」である2049年の新中国建国100年にある。「社会主義現代化強国の建設」、「中華民族の偉大な復興」を果たすとしている。30年後の2050年には、中国はどのような国家の姿を見せるのか?
その時、米国は、そして日本はどのように超大国・中国に向かい合っていくべきか? 世界の賢人のインタビューを交えながら、30年後の中国の姿を展望する。(『週刊東洋経済』創刊7000号記念特集の前編)

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2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する
第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ

第9章 アジア

第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第9章 アジア より

中華圏――世界におけるあるべき地位を取り戻す

ここはやはり中国からはじめなければいけない。2050年には中国がまちがいなく世界最大の経済国になっているだろう。

まさにその理由から、中国は自信を深め、穏やかになり、世界にとって共存しやすい国に姿を変えている。中国が伝統的な領土とする地域の盟主になる。
世界の覇権を争うアメリカとは、適切な協力関係を築いている。中国にとって払われてしかるべき敬意を広く受けられるようになり「百年国恥」1839年から1949年までほかの列強に服従させられた国辱の歴史をさす)を晴らす。一言でいえば、中国は世界であるべき場所にふたたび戻っている。

これはあくまでも、こうなるはずだということである。中国が世界最大の経済圏になるのはほぼ決まっている。だが、その過程ではいくつも失敗するだろうし、いくつも課題を乗り越えなければいけない。舵取りがおおむねうまくいったとしても、2050年には衰退へと向かっており、アメリカが復活し、インドが自信を深めるなか、中国の重要性は相対的に下がる。舵取りがうまくいかなければ、衰退は早まる。2030年代か2040年代になんらかの転機が訪れ、中国は方向転換するだろう。

それについてはこの後で見ていく。まずは課題である。大きな課題は3つある。環境、技術のリーダーシップ、そして国内の安定だ

これまでの40年間、中国は食欲旺盛な10代の若者だった。驚くべきスピードで成長し、世界中から資源をかき集め、国土の大部分をコンクリートで覆い、その過程で国内の環境にダメージを与えてきた。成長が落ち着けば食欲はおさまるし、豊かになれば、環境を守るために投じる資源を増やせるようになる。この流れはすでにはじまっている。しかし、環境が受けたダメージを回復させるには30年はかかる。中国の指導部はそれをよくわかっており、2060年までに炭素中立(カーボンニュートラル)の実現をめざすとしている。だが、中国は経済が急激に成長して環境に負荷をかけてきただけでなく、気候変動の脅威がとりわけ大きい。2050年には、中国は水が足りなくなり、耕地が足りなくなり、エネルギー資源が足りなくなるだろう。
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1つシナリオを示そう。中国経済2020年代、2030年代と着実に成長するが、21世紀に入ってからの20年間のような破竹の勢いはない。その後、2030年代か2040年代になんらかのショックが起きて、景気が急激に悪化する。最もありそうなのが前に述べた金融危機だが、ほかの可能性も考えられる。経済はなかなか回復せず、一進一退の状況が続く。そうして中国経済にとって、2040年代は「失われた10年」になる。アメリカ経済はまだ世界2位ではあるものの、中国との差を詰めはじめ、21世紀の後半のどこかで追い抜く。

中国の指導者は金融の安定を取り戻し、成長を回復させようとするが、なかなかうまくいかない。人口は減り、労働力の規模はそれ以上のペースで縮小しているため、相対的な停滞を受け入れて、それに適応するしかない。最初は不安になる。イギリスと日本がそうだったように、相対的な衰退を受け入れるのはつらい。それでも2050年には、国力のピークがすぎようとしている現実を受け入れはじめている。国土の安全は守られ、なんらかの形で台湾と安定した関係が築かれている国民は貧困から脱却さえて中間層に引き上げた功績は称えられ、強引な海洋進出からは手を引く。中国は国をうまく運営することに心を砕き、世界の覇権はめざさない。

香港と台湾――悩ましい未来

香港の未来の輪郭は思い描きやすいが、台湾がどうなるかについてはほとんど自信がもてない。経済に関しては、アジアにおける経済大国でありつづけるだろう。
人口動態の関係で、つぎの30年は過去70年間のような活力はなくなるが、経済は直実に前進しつづける。台湾の未来を決めるのは経済ではなく、政治になる。中国は「台湾は中国の領土である」と主張しているが、実際には独立した国として運営されており、この関係は非常にうまくいっている。しかし安定はしていない。香港情勢が悪化して、中国と台湾の関係はさらに不安定になっている。
移住を考えている香港人によって、台湾が第1候補になっているからだ。台湾は事実上独立しているが、国家として正式には認められていないというこの関係はうまくいっており、理性で考えれば、この先もつづくはずである。だが、中国の経済力が上がっているため、台湾と取引しないように他国に圧力をかけるようになるおそれがある。これには前例がある。アメリカもやはりこの武器をを使って、第三国に対しイランと取引しないようにしている。

台湾の独立を脅かすには、軍事行動よりも経済への圧力のほうが効果的だろう。中国が台湾に侵攻すれば、人的損失が発生するだけでなく(敗北する可能性ももちろんある)、アメリカは確実に中国を世界経済から排除しようとするだろう。残りの国々はどちら側につくか、選択を迫られる。重要な国のうち、アメリカ、ヨーロッパをはじめとする先進世界よりも中国を選ぶところはほとんどないはずだ。中国は大敗を喫する。台湾からの撤退を余儀なくされ、世界覇権の野心はついえる。