じじぃの「カオス・地球_145_2050年の世界・貿易と金融・暗号資産(仮想通貨)」

【豊島晋作】拡大する中国「デジタル人民元」の影響力!各国が模索する通貨のデジタル化【セカイ経済】(2023年8月1日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=odR1VRyI-nY

「デジタル人民元」 発行の加速


「デジタル人民元」の発行で世界の分断が加速する可能性

2019.11.8 ダイヤモンド・オンライン
中国が、デジタル人民元の発行を準備している模様だという報道があった。
その取引方法の基本原理はビットコインと似ているようだが、ビットコインのように価格が変動するものではなく、価値が人民元に連動するもののようである。
https://diamond.jp/articles/-/219874

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化

第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する

第5章 テクノロジーは進歩しつづける
第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

                  • -

『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する より

金融と投資――新しい課題、新しい形のマネー

2008年の危機(リーマン・ショック)で金融業界は大きな打撃を受けたが、持ち直す兆しが出ている。金融業界が直面している疑問は大きく3つある。資金の自由な流れはつづくのか、それともつぎの30年に障壁ができるのか。いまの金融産業は、銀行、株式市場、外国為替などで構成されているが、中国経済が世界1位、インド経済が世界3位になる世界でもそれが維持されるのか。そして、中央銀行が発行し、政府が保証する国の通過がこれからも主流になるのか、あるいはデジタル通貨などの新しい形態のマネーがとってかわるのか。
    ・
はっきり言って、答えはだれにもわからない。たしかに言えるのは、資本主義体制は揺らいでおり、これはその表れであるということだ。実質金利がこれほど長くマイナスになっている状況で市場システムを運営することはできない。人びとは自分のお金の実質的な価値を守るほかの方法を見つけだす。そのため、おそらくは2030年までには、なんらかの形で終止符が打たれるだろう。

そのときにはなにが起きるのか。世界の主要経済国が集まって、金融システムの改革で合意するかもしれない。あるいは、金融システムの緊張が高まって、地域貿易ブロックがつくられる流れが加速するかもしれない。その過程では中国、アメリカ、ヨーロッパが主導的な役割を果たすことになる。言い換えれば、金融の混乱は貿易の混乱に拍車をかける。さらには、なにかほかのものがいまのお金にとってかわるかもしれない。

なによりも大きな疑問は、通貨がどうなるかだ。通貨というものはずっと昔からあるように見えるかもしれない。ある形ではそうである。しかし、通貨はどれも国民国家が発行しており(ユーロについては後述する)、程度の差はあるが、長年にわたって切り下げられてきた。いまの基軸通貨アメリカドルで、これは世界におけるアメリカ経済の重要性を反映している。だが、アメリカの地位は相対的にいくらか下がる見通しであり、ほかの通過も使うように圧力がかかるだろう。それはどの通貨になるのか。ユーロがいざというときに機能するかは未知数だし、2050年にはおそらく生き残っていない。いずれにしても、経済活動に占めるヨーロッパの割合はこの先縮小していく。中国の人民元は有力な候補だが、現在の先進世界の大部分では受け入れられないだろう。

20世紀には、基軸通貨スターリングポンドからアメリカドルに移ったが、スムーズに移行したとはとても言えない。第二次世界大戦後、ブレトンウッズ協定が結ばれて固定為替相場制がつくられたものの、25年後の1970年代はじめに崩落した。変動相場制がそれにとってかわると、平時では未曽有の激しいインフレに陥った。理屈としては、基軸通貨のない複数通貨制へとシフトするのは可能なはずである。しかし、20世紀の経験に照らせば、実際にはむずかしそうだ。

そうだとすると、どうなるのか。国際貿易で国の通過が使われなく可能性はある。その場合には、国内ではドルやユーロ、ポンド、人民元を使いつづける。だが、国境をまたぐ契約については、自国通貨と外国通貨とを交換する別の方法を見つけることになる。

こうした通貨の壁をなくしたいという思いからできたのが、民間の暗号資産(仮想通貨)である。そのなかでいちばん有名なのがビットコインだ。

ビットコインなどの暗号資産にはさまざまな魅力がある。第1に、中央銀行や政府が監視していない。少なくとも当面は、当局が取引を追跡することはできない。そのため課税や調査の対象にならない。暗号資産の価格は急騰しており、早くに勝った人は巨額の値上がり益を手にしているが、後から買った人は大きな損失を抱えているおそれがある。流行のテクノロジーという要素もある。中央銀行という旧態依然の世界からはるか遠く離れたところにある若いハイテク通貨だ。それだけではない。暗号資産が生まれたのは超低金利期だった。したがって、ただ保有しているだけでは利息などがつかないという暗号資産の金銭面でのデメリットは問題にならなかった。
    ・
紙幣であれ硬貨であれ、現金はいまも国家通貨を代表する存在である。そのため、現金が姿を消せば、国家通貨そのものもなくなると考えがちだが、それはまったくのまちがいだ。紙幣と硬貨は、それを発行する国の経済を象徴するものにすぎない。通貨は請求権であり、それはどの形態でも変わらない。いま最も強力な請求権は、アメリカ経済の生産力に裏付けられている。そうだとすると、マネーの将来の鍵を握る問題は、新興国へとパワーシフトが進むなかで、ドルに圧倒的に依存している通貨システムから世界がどう移行していくかだ。
2021年の時点で、世界の外貨準備の3分の2をドルが占め、国境をまたぐ取引の40%以上がドル建てだった。ドルにつぐ重要なグローバル通貨はユーロだったが、ユーロの使用は減っていた。人民元がそのかわりを務めるのだろうか。

理性で考えれば、そうなるだろう。それには数年前から人民元が外貨と自由に交換されている必要がある。また、中国の通貨管理に対する信認がなければいけない。そして、中国の統治全般に対する信認が求められる。ほかの通貨、とくにインドルピーも国際金融で果たす役割が大きくなっていくだろうが、この場合も、外貨と自由に交換できるようにならなければいけない。

したがって、2050年には国家通貨は残り、貿易はさまざまな国家通貨建てで行われている可能性がいちばん高い。言い換えると、国家通貨を外国為替で交換できる現在の通貨システムはあと1世代つづくが、通貨の重心は新興世界に移っていく。

これは、1970年以降に国際貿易・金融が爆発的に拡大する背景となった取り決めをアップデートして調整したものだ。市場が開かれていて、国際取引が適切に自由化されているほうが世界経済はうまくいくと信じている人は、そう聞いてほっとするだろう。システムは機能している。なぜそれを変えるのか。