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たった1日でわかる46億年の地球史
【目次】
プロローグ――地球学への招待状
1. 化学と地球――地球はどのように生まれたのか
2. 物質と地球――地球はどのように形成されたのか
3. 生命と地球――地球に広がる生命
4. 酸素と地球――呼吸できる空気はどこから来たのか
5. 動物と地球――大型化する生命
6. 植物と地球――植物と動物の世界
7. 災害と地球――絶滅が生命の形を変える
8. 人間と地球――地球を変える人類
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『たった1日でわかる46億年の地球史』
アンドルー・H・ノール/著 鈴木和博/訳 文響社 2023年発行
私たちの身の回りにある山や海、動植物、資源、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか?
ハーバード大学の名誉教授(自然史学)で、NASAの火星探索ミッションにも参加している著者が、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点でエキサイティングに読み解く一冊。
プロローグ――地球学への招待状 より
私たちは地球の重力に引かれて生きている。一歩歩くたびに、足は岩や土に触れる。たとえそこが床板やアスファルトに覆われていても、同じことだ。飛行機に乗れば重力の束縛から解放されると思うかもしれないが、その高揚感も一瞬だけだ。数時間もすれば再び重力の支配下に引き戻され、大地に束縛される。
地球に引かれるというのは、重力だけの話ではない。人類が口にする食糧は、大気や海水に含まれる二酸化炭素、そして土壌や海洋に含まれる水や養分からできている。呼吸をすれば、肺に豊富な酸素が含まれた空気が入ってくる。食事からエネルギーを得られるのもそのためだ。人が凍えずにすむのも、大気中に二酸化炭素があるからだ。冷蔵庫のドアにつかわれている鉄も、缶に使われるアルミニウムも、硬貨に使われる銅も、そしてスマートフォンに使われるレアアースやレアメタルも、すべて地球の産物だ。こういったことを考えるなら、ほとんどの人が地球に対してあまりに無頓着なのは驚くべきことだ。この偉大な天体は、私たちを支え、ときに地震やハリケーンで被害をもたらす。
では、宇宙における地球の位置づけを理解するには、どうすればよいのだろうか。私たちの存在に欠かせない岩石や空気、水はどのように生まれたのだろうか。大陸、山脈、峡谷、地震、火山などはどのように説明できるのだろうか。大気や海水の組成はどのように決まるのか。そして、私たちの周囲にあふれる多種多様な生命は、どのようにして誕生したのか。あるは、もっとも重要な私たちの行動によって地球や生命がどのように変化しているのかということかもしれない。こういった問いは過程を尋ねるものだが、歴史を尋ねるものである。本書の目的は、それを読み解いていくことにある。
本書で取りあげるのは、私たちの故郷である地球と、その地表にあふれる生命の物語だ。
地球は変わらぬ存在と思われがちだが、地球に関するすべてがダイナミックに変化しつづけている。たとえば、米国のボストンは温暖な気候で、夏は温かく、冬は寒い。年間を通して適度な降水量があり、季節は変わることなく巡ってくる。私のように何十年もそこに住んでいる者なら、いつもと同じだと感じることだろう。しかし、気象学者に言わせれば、ボストンの年間平均気温は、今の高齢者は生まれたころに比べて摂氏0.6度以上上昇している。また、地表の温度に大きく影響する大気中の二酸化炭素の量も、1950年代から3割ほど増加している。さらに、海面の上昇は世界中で観測されており、海水中の酸素量はビートルズが一世を風靡したころに比べて3パーセントほど減少している。
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現在、まるで黙示録に登場するかのような災厄が頻発している。カリフォルニアやアマゾンの未曽有の森林火災。アラスカの熱波やグリーンランドの氷河融解。カリブ海やメキシコ湾岸の甚大な被害をもたらした巨大ハリケーン。米国中西部に水害をもたらす「100年に1度」の洪水の頻度は上がっている。インド第6の都市チェンナイでは水不足が発生し、南アフリカのケープタウンやブラジルのサンパウロでも水の供給が逼迫している。生物も同じだ。北米の鳥の数は1970年から30パーセント減少している。虫の数は半減し、グレート・バリア・リーフのサンゴは大量死し、ゾウやサイの数は激減している。商業漁業は世界的に厳しい状況だ。数の現象は絶滅ではないが、種が生物学的な終局に向かう道行きであることは明らかだ。
世界は破滅に向かっているのだろうか。一言で言うなら、答えは「イエス」だ。その理由もわかっている。元凶は人間だ。大気中に温室効果ガスを排出しているのは人間で、それによって地球は温暖化し、熱波や干ばつ、嵐の規模と頻度が上がっている。土地の使い方を変え、乱開発を行い、気候変動を起こしてさまざまな種を瀬戸際に追い込んでいるのも人間だ。そういったことを考えれば、一番残念なのは私たち人間の反応かもしれない。大半の人間はこのことに無関心だ。特に深刻なのは、私の母国であるアメリカだろう。
この惑星規模の変化は、私たちの子孫の生存を脅かすことになるはずだ。それを前にして、なぜ多くの人々がここまで無関心なのだろうか。1968年にセネガルの森林保護活動家であるババ・ディオウムが出した答えは明快だ。「つまるところ、私たちが保護しようとするのは大切なものだけだ。大切に思うのは理解できるものだけで、理解できるのは教えられたことだけだ」
ならばそれを理解できるようにしようというのが本書の試みだ。現在の地球を生みだした長い歴史を尊重すること。人間の活動が40億年かけて作られた世界にどれほど深刻な影響を与えているのかを認識すること。そして、それに対して行動を起こすこと。本書はそれに向けての招待状であり、警鐘である。