じじぃの「カオス・地球_401_死因の人類史・第19章・アルコール」

New alcohol research shows drinking small amounts can still be harmful to health

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=Jl-hyrCTat4


New alcohol research shows drinking small amounts can still be harmful to health

Jan 26, 2023 PBS NewsHour

Amna Nawaz:

We're coming to the end of Dry January, where millions of Americans abstain from alcohol for the entire month.
This yearly ritual again underscores the accumulating evidence that drinking alcoholic beverages, even in what are considered relatively small amounts, can be harmful to our health.
William Brangham has the latest, including how Canada is considering radically revising its recommendations for drinking.
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Dr. Tim Naimi, University of Victoria: Sure.

Well, alcohol is one of the leading behavior-related causes of health problems and deaths, and also some social problems and economic costs, ranging from things like injuries and accidents, to cancers, and, actually, heart and cardiovascular disease.
https://www.pbs.org/newshour/show/new-alcohol-research-shows-drinking-small-amounts-can-still-be-harmful-to-health

死因の人類史

【目次】
序章 シエナの四騎士
第1部 さまざまな死因(死とは何か?;『死亡表に関する自然的および政治的諸観察』 ほか)
第2部 感染症黒死病;ミルクメイドの手 ほか)
第3部 人は食べたものによって決まる(ヘンゼルとグレーテル;『壊血病に関する一考察』 ほか)
第4部 死にいたる遺伝(ウディ・ガスリーベネズエラの金髪の天使;国王の娘たち ほか)

第5部 不品行な死(「汝殺すなかれ」;アルコールと薬物依存 ほか)

結び 明るい未来は待っているのか?

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『死因の人類史』

アンドリュー・ドイグ/著、秋山勝/訳 草思社 2024年発行

疫病、飢餓、暴力、そして心臓、脳血管、癌…人はどのように死んできたのか?
有史以来のさまざまな死因とその変化の実相を、科学的・歴史的・社会的視点から検証した初の試み、壮大な“死”の人類史。

第5部 不品行な死 第19章 アルコールと薬物依存 より

健康に対するアルコールの影響

エタノール分子にはさまざまな作用があり、有益なものもあれば有毒なものもある・このような研究の多くは疫学調査によるもので、アルコールを大量に摂取している集団と、ほとんど摂取していない集団の2つのグループの研究による。集団間に健康状態の違いがあるかどうかを調べ、もし違いがあればその原因はアルコールだと結論づける。

だが、この方法にはいくつか問題がある。ひとつは2集団をめぐる同一性の問題だ。たとえばアルコールをほとんど摂取しない人のなかには酒類を購う余裕がない者もいる。そのような場合、その人が属する集団は、比較対照である豊かでアルコールを購入できる集団とは異なり、貧困に関連したあらゆる健康問題を抱えているかもしれない。ある集団がほかの集団よりも病気がちだからとはいえ、アルコールが理由だとはかぎらない。追加調査がどうしても必要になってくるのだ。

したがって、アルコールが人の健康にどのような影響を与えているのかを調べるのはひと筋縄ではいかない。しかし、複数の研究グループが異なる方法を使い、繰り返し実施してきた慎重な研究に基づいていくつかの結論を導き出すことは可能だ。適度な飲酒には心血管疾患、脳卒中、ストレスのレベル、Ⅱ型糖尿病、胆石、アルツハイマー病などの予防に効果があるようだ。適度な飲酒量とは、週に10単位程度のアルコールを数日に分けて飲むことで、その量は週一瓶のワインに相当する。ビールよりも赤アインのほうが抗酸化物質を多く含んでいるので、体のためを考えるならワインのほうがよさそうだ。

正常な血液脳関門は、人間のもっとも重要な臓器である脳から有害分子を排除する役割を担っている。だがエタノールは、この関門をやすやすと通過して、精神状態や挙動によく知られた影響を与える。少量の摂取なら気分がよくなって社交性や自信が高まるが、酔うほどに向こう見ずになっていく。
1例をあげるなら、有毒のガラガラヘビに咬まれた人の40%は酒に酔った男性だ。そのうちの93%は酔った勢いでわざわざガラガラヘビと遊んでみたいと考えたのだから、自業自得と言うほかない。

多量のアルコールを摂取すると人は攻撃的になって、ケガも負いやすくなる。目はかすみ、意識が混濁していく。気力や理解力に乏しくなり、平衡感覚や記憶があやしくなって、呂律(ろれつ)がまわらず、吐き気と嘔吐が引き起こされる。事故に遭遇したり、低体温症や溺死したりするなどの危険性も非常に高まる。さらにきわめて多量のアルコールを一度に摂取すると、意識喪失や昏睡、あるいは急性アルコール中毒で死亡することさえある。

長期間にわたる大量飲酒の悪影響も数え上げればきりがない。心筋の弱体化、不整脈、へ釣圧の上昇、脳卒中のリスクなどの心血管の傷害、肝臓のアルコール分解の中心なので、肝機能の喪失など致命的なダメージを受ける可能性も高まる。傷ついた肝臓に瘢痕(はんこん)組織が徐々に蓄積されていくと肝硬変と呼ばれる状態になり、最後には肝不全に陥ってしまう。膵臓(すいぞう)も無傷ではいられず、炎症を起こして腫れ上がってしまうだろう。影響はもちろん脳にもおよび、気分や行動が変化して、明瞭にものを考えたり、人と協調して活動したりすることが難しくなってしまう。とくに思春期の飲酒は気分や感情をつかさどる脳の部位にあるDNAを変化させるので、もっとも顕著に影響が現れてしまう。

アルコールはガンの原因でもある。頭、首、喉、肝臓、乳房、子宮、結腸などの部位にとくに腫瘍が発生する。妊娠中に母親が大量に飲酒した場合、胎児に先天性欠損症が現れやすくなる。また、アルコール依存症になると、肺炎や結核などの感染症にかかりやすくなるだけでなく、自殺の可能性も高まってくる。最後に、過度の飲酒は免疫力を低下させ、病気に対する抵抗力が弱まっていく。現在、アルコールが原因でケガや消化器系疾患、循環器系疾患、糖尿病、感染症、ガン、てんかんなどの病気を引き起こして、年間300万もの人が死亡していると言われている。

2018年、健康に対するアルコールの影響を分析した結果が発表された。195地区の男女で、15歳以上の全年齢を対象にした592件の非常に包括的な分析に基づいていた。飲酒にともなうプラスとマイナスの双方の効果を比較評価した結果、飲酒のメリットを最大化する週当たりの摂取単位が判明した。その結果は――身もふたもない言い方になって恐縮ではあるのだが、「一滴も飲まない」だった。