じじぃの「アメリカ大統領選・共和党支持が増える白人層!アメリカの雑学」

【ライブ】『アメリカ大統領選』ハリス氏「私たちが勝つ」 トランプ氏の本音は?/ ハリス副大統領、世論調査でトランプ前大統領をリード  など

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1rRrlujA1LY

民主党の副大統領候補になるカマラ・ハリス上院議員は、移民の両親のもとに生まれた


トランプ氏、ハリス議員についても「アメリカ人ではない」論に言及

2020年8月14日 BBCニュース
ドナルド・トランプ米大統領は13日、野党・民主党の副大統領候補になることが決まったカマラ・ハリス上院議員について、その生い立ちを理由に「副大統領になる資格がない」とする少数派の極論を、「尊敬されている法学者の意見」としてホワイトハウス会見で取り上げた。ハリス議員に関するこの少数意見は、多くの法学者から否定されており、人種差別的だという批判も高まっている。
https://www.bbc.com/japanese/53774551

アメリカ大統領選』

久保文明、金成隆一/著 岩波新書 2020年10月発行

4年に一度の政治のリニューアル。最古のデモクラシーであるアメリカ大統領選のイロハから、活力漲る予備選・本選での現場ルポ、二極化する現代社会の縮図としての大統領選の闇までを描く。トランプ大統領の再選を占う選挙を控え、第一線の著者たちがその見どころを示す。
(この本は2020年11月のトランプ対バイデンの大統領選挙、1ヵ月前に出版された)

第4章 二極化する社会と大統領選 変化する大統領選挙の構図 より

「最近の移民は同化しない」との不満

移民への不満を抱く人が少なくない。彼らが共通して語るのが「かつての移民はアメリカに同化したが、最近の移民は同化しようとしない」との不満だ。

最近のアメリカで、あまり聞かなくなった言葉に「ワスプ(WASP)」がある。白人(white)、アングロサクソン(Anglo-Saxons)、プロテスタント(Protestant)の頭文字をつなげたものだ。初期の入植者にイギリスなど北欧の出身者が多く、今のアメリカ社会の土台をつくったことなどから、アメリカのエリート層を意味した言葉だ。実際、20世紀半ばまでは政治指導者も軍幹部も高級官僚も外交官も、ほとんどがワスプが占めていたという。

19世紀になるとアイルランドやイタリア、ギリシャ、東欧諸国からのカトリック教徒やギリシャ正教の移民が流入した。こうした南欧・東欧からの移民が、今日不満を抱く人々が語る「かつての移民」だ。移民一世は、強烈な差別を受けながらも貧困層として働き始め、その子ども世代(二世)が英語を覚えて中流顔急に仲間入りし、最終的には同化して「立派なアメリカ市民」という理解だ。

一方、「最近の移民」は多くの場合、最大のマイノリティー集団となったヒスパニックやアジア系の移民を指している。いずれもヨーロッパからの移民ではなく、英語を話さない人も少なくない。自宅で英語を話さない住人の割合は2016年に約22%で、1980年の11%から倍増した。中東やアフリカ、アジアからのイスラム教徒の女性は頭からヒジャブ(スカーフ)をかぶる。こうした変化の結果だろうか、「最近の移民」は出身国の生活習慣や言語をアメリカに持ち込み、「堂々と維持している」と批判されることがある。

共和党支持が増える白人層

民主党が多様な移民を支持層に受け入れる中、白人の共和党支持の傾向が顕著になっている。ブラウン大学のジェームズ・モローンは次のように指摘する。

  1960年代にすべてが変わった。連邦議会は1965年にハート=セラー法(改正移民法)を可決した。1920年代に大きく制限された移民の受け入れも、この法律によって再び広く門戸が開かれた。この法律に反対したのは、主に人種分離論者たちだった。かつての移民は圧倒的にヨーロッパ系が多かったが、新たにやってくる移民は非白人が多いという現実を彼らは恐れた。ハート=セラー法成立後にやってきた移民世代がアメリカ市場最大規模に膨らむと、アメリカ社会に新たな緊張が生じた。政党が人種、民族、そして出身国に即して立場を見直すようになると、この緊張が党派政治に取り込まれていった。民主党公民権と移民の幅広い受け入れを支持し、党幹部に登用されるアフリカ系、アジア系、スペイン系アメリカ人も増えていった。一方で、白人有権者共和党に流れた(フォーリン・アフェアーズ・レポート、2018年5月号)。

政党支持の推移をデータでたどってみよう。ピュー・リサーチ・センターによると、全体では、共和党支持者(「共和党」と「共和党寄り」の合計)が2008年の39%から2016年の44%に増えたのに対し、民主党支持者(「民主党」と「民主党寄り」の合計)は51%から48%に減らした。共和党が支持層を増やし、差を2008年の12ポイントから2016年の4ポイントに縮めた。
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有権者が政党を支持する理由は、時の大統領選の候補者の言動にも影響されるだろう。このシフトが、2016年のトランプ効果によるものなのか、「トランプ後」も続く長期トレンドになるのかは、様子を見る必要がありそうだ。

「われわれ人民(we the people)」の「われわれ」とは誰を指しているのか。「われわれ」を代表する大統領は、今後どんなメッセージで、すでに多様な社会の統合を図ろうとするのだろうか。アメリカの内実と方向性が大統領選で問われている。