じじぃの「カオス・地球_317_LIFESPAN・第4章・タバコは老化を早める」

My wife Laura smoking VS all white 120s while getting ready to go out

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Q5vZU7i_VA0


喫煙による健康影響/千葉県

1 たばこの煙に含まれる有害物質
たばこの煙は大きく分けて、喫煙者自身が吸い込む「主流煙」と、たばこの先端から発生する「副流煙」に分類されます。
主流煙には粒子成分が4,300種類、ガス成分が1,000種類、合わせて5,300種類の化学物質が含まれており、発がん性があると報告されている物質も約70種類存在しています。副流煙の化学成分は主流煙とほぼ同じですが、その成分量は非常に多いことが知られています。
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/tabako/kenkoueikyou.html

LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

【目次】
はじめに――いつまでも若々しくありたいという願い
■第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
第1章 老化の唯一の原因――原初のサバイバル回路
第2章 弾き方を忘れたピアニスト
第3章 万人を蝕(むしば)む見えざる病気
■第2部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)

第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法

第5章 老化を治療する薬
第6章 若く健康な未来への躍進
第7章 医療におけるイノベーション
■第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
第8章 未来の世界はこうなる
第9章 私たちが築くべき未来
おわりに――世界を変える勇気をもとう

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『LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界』

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント/著、梶山あゆみ/訳 東洋経済新報社 2020年発行

第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法 より

タバコや有害な化学物資、放射線は老化を早める

多少の困難や細胞のストレスであれば、エピゲノムにはプラスに作用する。それが長寿遺伝子を刺激してくれるからだ。結果的にAMPK(細胞内のエネルギーが不足すると活性化し、代謝を制御する分子)が活性化され、あるいはmTOR(mammalian target of rapamycin、細胞外の栄養状態や細胞内エネルギー(ATP量)等の情報が感知して、細胞成長・増殖へ結びつける上で中心的な役割を担うリン酸化酵素)が抑制され、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、エネルギーを産生する補酵素の一種。体内の細胞で起こる化学反応に不可欠な物質)濃度が高まり、サーチュイン(例の災害対応部隊、SIR1からSIR7まで)の働きが活発になる。そして、地球に暮らすうえでつきものの通常の消耗に負けないようになるわけだ。

しかし、この「通常」という言葉には注意が必要だ。こと老化に関しては、「通常」のダメージであっても十分好まなくないものだからである。対応しなければならない災害(とくにDNAの2本鎖が共に切断されるような損害)の数が多いと、サーチュインは持ち場を離れて損傷箇所に向かわざる得ない。仕事が終わって元の場所に帰ってくればいいが、そうでもないときもある。

DNAが壊れるのを1つ残らず防ぐのは不可避だし、仮に可能でもそれを望まないほうがいい。DNAが損傷することは、免疫系を適切に機能させたり、記憶を固定したりすることにまで不可欠だからだ。そうはいっても、余計なダメージはやはり防ぎたい。

あいにく、世の中は余計なダメージだらけだ。

まずはタバコである。合法的な悪習は数々あれど、これほどエピゲノムに悪いものはそうないといっていい。

要するに喫煙とは、有害な化学物質を何千種類も混ぜ合わせて毎日体に取り込むことにほかならない。喫煙者がヒトより老けて見えるのにはわけがある。実際に老化のスピードが迷いからだ。喫煙によって生じるDNAの損傷のせいで、DNA修復部隊は激務を強いられる。それが結局はエピゲノムを不安定にし、老化につながっている可能性が高い。それに、すでに耳にタコができているかもしれないが、改めて繰り返しておきたいことがある。喫煙はけっして、何の犠牲者も出さない自己完結した行為などではない。タバコの煙に含まれる芳香族アミン類はDNAを傷つける作用をもち、その量は主流煙より副流煙のほうが約50~60倍も多いのである。あなたがタバコを吸うなら、悪いことはいわない。禁煙の努力をすることだ。
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放射線も忘れてはいけない。紫外線やX線ガンマ線や屋内ラドン(肺がんの原因としては喫煙について2番目に多い)こうした自然放射線や人工放射線はどれも、DNAをさらに損傷させて修復部隊を働かせるおそれがある。私は仕事でよく飛行機に乗るので、このことが気になって仕方がない。セキュリティチェックを受けるたびに心配になる。昨今の空港で使用されるタイプのスキャナーの場合、DNAへのダメージがさほど大きくないことが研究からうかがえはする。ただ長い目で見たときにエピゲノムや老化プロセスにどんな影響が及ぶかには、ほとんど注意が向けられていない。スキャナーを何度も通ったマウスが2年後にどういう姿になるかは、誰も検証したことがないのだ。現に、第2章で取り上げたICEマウス(エピゲノムを変化させることで老化が進んだのと同じ状態にしたマウス)の件からもわかるように、DNAを少しいじっただけでも老化は加速できてしまう。ミリ波スキャナーなら旧型のスキャナーより放射線被曝が少ないそうだし、その被曝量は「フライトと同じ」程度だと係員は説明する。けれど、すでに何百万マイルものフライトを経験した身で、誰がさらに損傷を倍増させたいと思うだろう? だから私は可能なときはいつでも、事前登録者専用レーンに回って簡易なチェックで済ませるか、手によるボディーチェックをお願いしている。

そんなにあるなら、全部避けるのなんてとうてい無理じゃないか、って? 残念ながらその通りだ。
そもそも、DNAを複製するのは自然で不可欠な活動だというのに、そのせいで毎日体中の何兆という箇所でDNAの切断が起きている。鉛の箱に入って海底にでも沈まない限り、ラドン宇宙線を避けることはできない。たとえ絶海の孤島に引っ越したとしても、魚を食べたらその体内には恐ろしい化学物質が溜まっている可能性がある。水銀やPCBやPBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、ダイオキシンに塩素系農薬。そのどれがDNAを傷つけてもおかしくない。現代の世界では、どれだけ「自然な」生活を送っていようと、この種のDNA損傷からは逃れられないのだ。

自分が今、何歳だろうが関係はない。仮にまだ十代であっても、すでに老化は始まっている。DNAの損傷があなたの時計を速めており、その影響は人生のあらゆる段階に及ぶ。胎児も乳児も老化しつつある。だとしたら、六十代や七十代や八十代の人はどうなるのか。すでに体が衰えているためにカロリー制限ができず、走りに行くこともままならず、真冬に雪まみれになって遊ぶこともできない人はどうすればいい? もう手遅れなのだろうか。

いや、まったくそんなことはない。
ただ、すでにエピゲノムの変化や老化がかなり進んでいる人も含めて誰もが長く健康に生きようとするなら、少しばかり手助けがいりそうだ。