じじぃの「カオス・地球_147_2050年の世界・テクノロジー・AI・バイアス」

AIのバイアスは人間に危害を加える可能性がある


AIバイアスには偏ったデータ以上のものがある、NISTレポートが指摘(There’s More to AI Bias Than Biased Data, NIST Report Highlights)

2022-03-30 テック・アイ技術情報研究所
AIシステムのバイアスは技術的な問題として捉えられがちですが、NISTの報告書では、AIのバイアスの多くが人間のバイアスやシステム的、制度的なバイアスにも起因していることを認めています。
https://tiisys.com/blog/2022/03/30/post-104500/

2050年の世界――見えない未来の考え方

【目次】
序章 2020年からの旅
第1章 わたしたちがいま生きている世界
第2章 人口動態――老いる世界と若い世界
第3章 資源と環境――世界経済の脱炭素化
第4章 貿易と金融――グローバル化は方向転換する

第5章 テクノロジーは進歩しつづける

第6章 政府、そして統治はどう変わっていくのか
第7章 アメリカ大陸
第8章 ヨーロッパ
第9章 アジア
第10章 アフリカ・中東
第11章 オーストラリア、ニュージーランド、太平洋
第12章 この先の世界を形づくる大きなテーマ――不安、希望、判断

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『2050年の世界――見えない未来の考え方』

ヘイミシュ・マクレイ/著、遠藤真美/訳 日経BP 2023年発行

第5章 テクノロジーは進歩しつづける より

なぜAIはこれほど重要なのか

わたしたちはAIにはなにができるのか学びはじめたところだが、すでにいくつかの分野で、情報の森を通りぬけるIの能力が物事を大きく変えつつある。実例はもう数えきれほどである。
ロンドンのムーアフィールズ眼科病院によれば、AIを使って患者の網膜をスキャンすると、どんな経験豊富な医者よりも早く眼の病気を見つけられるという。AIは顔認証で使われているし、採用、マーケティングサプライチェーン管理などにもとりいれられている。新型コロナウイルスパンデミック期には、携帯電話を利用して感染者を追跡して拡大を防ぐ、リスク因子を解明する。データベースを解析してワクチンの開発に役立ちそうな分子を見つけだすなど、さまざまな形で使われた。

言うまでもなく課題は山ほどあり、すでに問題になっている。1つはプライバシーだ。自分の個人情報はもちろん、人生を歩むなかで生み出すすべてのデータが分析されるのをどこまで許すのか。

もう1つはバイアス(思い込み)である。人間の知性がそうであるように、AIもバイアスを生み出しうることが明らかになってきている。さらに、分析・推論というAIのハードスキルと、共感、創造性、想像力といった人間のソフトスキルとをどうかけ合わせるか、という問題もある。

つぎの世代にAIはどこまで進むのだろう。これについては2つの考え方がある。1つは、AIがとてもうまくできるものを出発点にすること、もう1つは、わたしたちが社会としてAIになにかを望むかを問うことだ。

1つ目については、AIはデータベースを検証し、そこから結論を引き出すのがとてもうまいことがわかっている。この能力は、医薬品、環境学、人間の行動、ビジネス慣行、社会政策などの分野で大いに活用されるようになるだろう。AIに投入されるデータが多ければ多いほど、驚くような事実が見つかる。たとえば、新型コロナ危機では見知らぬ人からウイルスをもらうより、知っている人から感染する可能性のほうがはるかに高いことが明らかになった。

AIにはなにができるのか。AIの可能性を追求して追及していけば、いまは想像もできないようなところに導いてくれるだろう。通信革命によって、フェイスブックツイッターといったソーシャルネットワークが生み出されたように、いまはまだそれが欲しいとも必要だともわからないようなサービスが生まれるはずだ。しかし、それがどんなものになるかは、まだわからない。

これではなんの助けにもならない。だが、視点をひっくり返して、わたしたちはAIになにを求めるようになるのかを問うと、いろいろなことが見えてくる。たとえば、社会が高齢化すると、よりよい医療が求められるようになるだろう。高齢者の健康問題を早期に発見して警告することはとくに重要になってくる。AIがどう役立つのかはわからないが、役立つのはまちがいない。教育というものが変わってきているのもわかっている。若い人たちが学校や大学で受けるものから、人が生涯にわたってするものになりつつある。
AIを使うと、なにがうまくいき、なにがうまくいかないかがわかるようになる。この先、人的資源をもっと有効に活用することも求められる。そこでもAIが役に立つだろう。

わたしたちが地球環境に与える負荷を減らすことも必要になる。ここでもAIを活用する余地はとても大きい。

データの質が高まり、量が増えると、AIを使って、ライフスタイルがどう変わると環境によくて、どう変わると環境に悪いかがわかるようになる。気候変動のことをもっとよく知る必要があり、理解が深まっていくのはまちがいない。気候変動を遅らせて、場合によっては覆す最も効果的な方法についても、理解が進むだろう。

どれも歓迎すべきことだ。最大の難問は、AIを人間の行動にどう応用するかである。AIを使って犯罪をなくせるか。答えはほぼまちがいなく「イエス」だ。もうすぐ、犯罪がどこで起きそうか、それがどのようなもので、だれが起こしそうかを予測できるようになるだろう。その情報を使ってなにをするべきかが、倫理面で問題になってくる。ある人が80%の確率で殺人を犯すとコンピューターが判定したら、その人をどこかに閉じ込めるのか。

さらに言うなら、AIは日常で当たり前に使うツールになるべきなのか。だれを友人や恋人にするべきかをAIが決めたり、これからの人生でどのような仕事をしていくか、家計をどう管理するべきかをAIに判断させたりするのか。保険会社は自動車保険や生命保険の保険料を決めるときにAIを使うべきなのか。そして最後に、国はどこで介入し、人びとを監視して、行動を変えさせるようにするのか。

政府に対する考え方がどう変化するかについては、つぎの章で見ていく。ここでわたしが言いたいのは、ビッグデータとAIの可能性はとても大きい、ということだ。つぎの30年にわたしたちの日常生活が変わるとしたら、最大の変化をもたらすのはビッグデータとAIだろう。いまは夢でしかないようなことが可能になり、AIを賢く使えば、わたしたちの暮らしをよりよいものにする大きな力をもつようになる。しかし、よい面ばかりではない。