じじぃの「歴史・思想_513_バイアスとは何か・ハロー効果・見た目など」

The Halo Effect - How Attractiveness Flows using the Psychology of Attraction

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2h6HeqO-U9c

Your looks matters… way more than you think

●The Halo Effect
The Halo Effect points out one of the effects of this programming. The Halo Effect is a type of cognitive bias which leads people to assume ambiguous information based on concrete information.
Simply put, it’s people making judgments about others based on surface traits. People will judge a person to be more competent, kind, trustworthy, and many other positive traits if they deem them as attractive. Even babies prefer looking at more attractive faces. And the opposite, of course, also applies.
https://blog.usejournal.com/your-appearance-matters-way-more-than-you-think-12ec80f56852

バイアスとは何か 藤田政博著 ちくま新書

事実や自己、他者をゆがんだかたちで認知する現象、バイアス。それはなぜ起こるのか?
日常のさまざまな場面で生じるバイアスを紹介し、その緩和策を提示する。
【目次】
第1章 バイアスとは何か
第2章 バイアス研究の巨人――カーネマンとトヴァースキ
第3章 現実認知のバイアス
第4章 自己についてのバイアス

第5章 対人関係のバイアス

第6章 改めて、バイアスとは何か

                  • -

『バイアスとは何か』

藤田政博/著 ちくま新書 2021年発行

まえがき より

この本は、『バイアスとは何か』という本です。その名の通り、バイアスとは何かについての基本的な理解を得ることを目標にしています。あらかじめ一言でまとめるならば、バイアスというのは人間がさまざまな対象を認知する際に生じるゆがみのことで、基本的には心理学、特に認知心理学の領域の問題だとされます。

第5章 対人関係のバイアス より

本章では、第2章でバイアス研究の現在の花形といえる、行動経済学の基礎となった認知バイアスを扱いました。ついで、第3章で周囲の世界を認知する際のバイアスを扱い、第4章では自己についてのバイアスまで見てきました。私たちにとって、周りの物理的環境や自分自身と同じくらい大事で関心が高いもの、それは他の人間です。
私たちははるか昔に集団で生きていくことを選択してきたときから、同じ集団内での人間関係の問題に直面してきました。人間はずっと、血縁関係を基礎にした150人くらいまでの集団で移動しながら暮らしてきたと考えられています(Dunbar,1992)。そのようななかで、私たちの祖先は他の人間を見たときに協力が可能な相手かどうかを見抜き、必要な相手と適切な関係を結んできました。
そのように他者に関するさまざまな情報を収集して、他者の特徴を知覚することを対人認知と言います。私たちの対人認知に関する仕組みは、サバンナで移動しながら暮らすという環境に合ったかたちで進化してきました。
それだけ大事な対人認知ですが、実はそれにもバイアスがあります。そして、他者を認識することは、私たちの対人行動の基礎になっています。それは、公的組織の活動においても変わりありません。
本章ではまず前半で、他者を認識することに関するバイアスを見ていきます。その例として後半では、警察や裁判所などの公的機関が行う活動において問題にされてきたバイアスを取り上げます。

2 見た目と特性

社会心理学で教えられることの1つに、人の見た目は印象形成において大事だということがあります。「人は見た目によらない」と俗諺で言われることがありますが、これは、私たちが普段、見た目で人を判断していて、それを裏切られたときの印象がきわめて強いことを逆説的に表現した言葉と考えることもできます。
以下では、ハロー効果、ベビーフェイス効果、見た目からの社会経済的地位の推測について見ていきましょう。

ハロー効果――見た目よければすべてよし

芸能人には美男美女が多いですね。また、性格が良くてお金を持っていて、さまざまな面で成功しているように感じられます。それは、彼・彼女らが私たちに夢を売ることを仕事にしていたり、芸能人として成功すると大変な収入が得られることも影響しているでしょう。
それに加えて、そうした印象を受ける私たちの側にもバイアスがあります。何か特にすばらしい特性(見た目など)を持っている人はほかの特性においてもすばらしいだろうという印象を持つバイアスが、私たちにはあるのです。
これを「ハロー効果」(Nisbett & Wilson,1977)といいます。このハローとは、英語の「こんにちは」ではなく「光輪」(halo)のことです。キリスト教芸術に出てくる絵画を見ると、イエス・キリストやさまざまな聖人の頭の後方に白い輪が描かれていることがあります。絵に描かれた人物が聖なる人物であることを示すしるしで、これがhaloです。
見た目が良いと、それが後光のように差してきて印象形成に影響するのです。しかも、それは印象を形成する人が意識をしないうちに行なわれます。

ビーフェイス効果――動顔は守りたくなる。

ハロー効果では、人が見た目によってさまざまな属性を無意識に推測することについて説明しました。見た目が印象に影響することの具体例として、「ベビーフェイス効果」(Berry & McArthur,1986)を挙げておきましょう。これは、ベビーフェイス、つまり童顔のように見える顔を、かわいらしく信用でき、良い性格であるように認知する傾向です。
3 人種と法執行のバイアス
アメリカで起こった「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)」の運動は、2020年にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで発生した事件を契機に日本でも大きく報道されるようになりました。これは黒人男性を白人警官が捜査過程で死に至らしめた事件で、大きなうねりとなって世界を駆け巡りました。
この運動は、もともと2012年にアメリカのフロリダ州で黒人少年が白人警官に射殺された事件に端を発したものです。
このように、アメリカ社会では、黒人の被疑者が捜査過程で命を奪われることがしばしば問題になっています。これは構造的な人種差別の表れであるとしてブラック・ライブズ・マターは反差別運動として理解されています。
警察官が法律に基づいて捜査したり治安を守ったりすることは、法を現実社会できちんと機能させるために必要なことです。英語ではlaw-enforcementといい、日本語訳では「法執行」と呼ばれたりしています。その法執行の現場に人種によるバイアスがあれば、法の公正な実現は期待できません。
このような人種による差別的扱いがバイアスによるものなのかについて、さまざまな研究だ行なわれています、そのなかから、ここでは「射撃者バイアス」「目撃者バイアス」「目撃証人の自己人種バイアス」「カメラ・パースペクティブ・バイアス」について紹介します。
    ・
こうした現象を踏まえると、バイアスによって誤って有罪となっている可能性は日本にも存在していることが示唆されるのです。
自分自身の認知や生活が多少うまくいかないという程度であれば、バイアスが存在することもそれほど大きな問題にはなりません。しかし人の一生を左右する刑事裁判の有罪無罪においてこのようなことが生じているのだとすれば、放置しておくわけにはいきません。
人間の判断にバイアスがどのように影響しているのかという研究が重要な意味を持ちうるのには、このような事情もあるのです。