じじぃの「歴史・思想_609_宮本弘曉・日本の未来・経済のグリーン化」

未来を変えるESG投資の最前線!【Bizスクエア】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=QT2amf7jFkA


日本のESG投資、2020年は32%増の320兆円

2021.08.02 nippon.com
●世界のESG投資
ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境、社会(人権問題への対応など)、ガバナンス(積極的な情報開示など)要素も考慮した投資のことを指す。
日本を除く主要地域別にみると、米国は18年と比べて42%増の17兆810憶ドル(約1880兆円)、欧州は15%減の12兆170憶ドル(約1320兆円)、カナダは43%増の2兆4230億ドル(約262兆円)、オーストラリア、ニュージーランドなど(オーストララシア)は23%増の906憶ドル(約9.8兆円)となった。欧州が減少したのは、ESGの基準を厳格化したことなどが要因とみられる。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01082/

101のデータで読む日本の未来

宮本弘曉(著) PHP新書
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。
国際通貨基金IMF)を経て、現在は東京都立大学教授を務める著者は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。
そこで本書では、世界と日本を激変させる3つのメガトレンド――①人口構造の変化、②地球温暖化対策によるグリーン化、③テクノロジーの進歩について、その影響を各種データとファクトから徹底的に検証。日本人が勘違いしている「世界経済の変化の本質」を理解した上で、日本社会の現在、そして未来に迫る。

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『101のデータで読む日本の未来』

宮本弘曉/著 PHP新書 2022年発行

第1章 世界経済を取り巻く3つのメガトレンド――メガトレンド② 地球温暖化対策によるグリーン化 より

第2のメガトレンドは経済のグリーン化です。経済のグリーン化とは、地球環境に配慮して経済活動を行うことで、経済成長と環境保全の両立をはかるものです。
環境や気候の変動は地球規模、人類規模で、経済はもちろんのこと、人間生活に破滅的な打撃を与える可能性があるとされています。ダボス会議で有名な世界経済フォーラムの報告書「グローバルリスク報告書2021」では、発生可能性が高いグローバルリスクの上位5位のうち4つが環境リスクに関するものになっています。
中でも、私たちが直面している最大の環境問題は、地球温暖化による気候変動です。地球温暖化とは地球全体の平均温度が上昇することです。

「パリ協定」とは何か

世界各国の気候変動問題への取り組みの土台となっているのがパリ協定です。これは2015年12月にパリで開かれた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採決された気候変動対策に関する国際的な枠組みです。
各国は今世紀中の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2.0℃未満に抑制することを目指すほか、1.5℃以下にすることを努力目標としています。パリ協定では、先進国、開発途上国の区別なく、国ごとに目標を定め、目標達成に向けて取り組む仕組みを採用しています。
IPCC気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇を2.0℃未満にするには、2030年時点の温室効果ガス排出量を2010年比で25%減、1.5℃未満に抑えるには45%減にする必要があるとしています。しかし、気候変動枠組み条約事務局によると、各国の現状の目標を足し合わせても2030年時点で温室効果ガスは2010年比で13.7%増えることになり、1.5℃目標の達成にはさらなる排出削減が欠かせません。
2021年秋にイギリス・グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、2030年目標の引き上げが焦点となっていましたが、上積みは先送りされました。また、COP26ででは温室効果ガスの排出が多い石炭火力の削減加速が重要な議題となりましたが、採択された「グラスゴー気候合意」では石炭火力お「廃止」ではなく、段階的な「削除」を目指すことが盛り込まれました。

ESG投資とは何か

今、欧米諸国では脱炭素化を、新型コロナウイルス感染症流行による経済危機からの復興ドライバーとして位置づけています。IMFも、気候変動をコロナによるパンデミックよりも地球と人類に対する大きな脅威、経済と金融の安定に対する根本的なリスクと位置づけ、グリーン化が必要不可欠としています。
IMFの調査研究では、カーボンニュートラルに向けた政策により、世界のGDPを今後15年間で約0.7%増やし、2027年にかけて約1200万人の新規雇用が創出できる可能性があるとしています。
実際、こうした動きはすでに出てきています。最近では、脱炭素に向けた事業戦略など気候変動問題への取り込みが企業の評価を左右するようになりました。
今、環境問題などに積極的に取り込んでいる企業を選んで投資する「ESG金融」が世界で急拡大しています。ESG金融とは、環境(Environment)、社会(Socity)、企業統治(Governance)などの非財務情報を考慮して行う投融資です。
図(画像参照)は、世界のESG投資の金額を表したものです。これを見ると、世界のESG投資額は2020年に35.3兆ドルと、2018年から15%増加しているうえに、日本のESG投資は2020年に2.9兆ドルと2018年から32%増となっており、日本でのESG投資成長のペースは高いことがわかります。しかし、運用資産総額に占めるESG投資の割合は、日本は24%でカナダの62%、欧州の42%、アメリカの22%と比べてまだ低い水準となっています。
脱炭素社会を実現するうえでは経済政策も重要です。気候変動対策として注目されているものに「カーボンプライシング」があります。カーボンプライシングとは、温暖化ガスの排出に価格をつけることで、排出削減や脱炭素技術への投資を促すものです。温暖化ガス排出を抑制する魔法の杖はありませんが、世界では排出を抑制する上ではカーボンプライシングがもっとも効率的で費用対効果の高い手法であるという意見の一致がますますみられるようになっています。
その主な手法に、「炭素税」と「排出量取引制度」があります。炭素税は温室化ガスの非出を伴う化石燃料に、炭素の含有量に応じた税金をかけるものです。課税により化石燃料やそれを利用した製品の製造・使用の価格が上がるため、受容が抑制され、結果として温暖なガス排出量を抑えることができます。
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世界ではカーボンプライシングの導入が進んでいます。世界銀行によると、2021年4月時点で、世界で炭素税または排出量取引制度によるカーボンプライシングを導入している国・地域は合計で64に上り、世界全体の温室効果ガス排出量の21.5%がカバーされています。10年前の2011年でカーボンプライシングを導入している国・地域は21だったので、この10年間で3倍以上に増加しています。
カーボンプライシングにより明らかとなる炭素価格は国・地域ごとに大きな差があります。2021年4月時点で最も炭素価格が高いのはスウェーデンの137ドル(CO2排出1トン当たり)、次いでスイスとリヒテンシュタインの101ドルとなっています。日本は3ドルです。世界銀行は、地球の気温上昇を2.0℃以内の抑えるパリ協定の目標を達成するためには、2020年時点で40~80ドルの炭素価格が必要だと試算しています。