じじぃの「科学・地球_366_気象の世界ハンドブック・行動のとき・原子力発電」

Why Nuclear Energy Is On The Verge Of A Renaissance

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NfNgRc4sJt8

World nuclear reactors


Out of the Shadows: Can Japan's Nuclear Power Renaissance Reduce Global Emissions?

September 1, 2008 The Asia-Pacific Journal: Japan Focus
In the rear are a small number of growing nuclear powerhouses, notably China, which has 11 reactors currently operating, seven under construction and about another 100 planned or proposed, according to the World Nuclear Association. India and Russia also plan ambitious expansions of existing nuclear programs. South Korea, which is determined not to be left behind by its rival across The Japan Sea, will build ten new plants by 2030, according to The Korea Times, raising the percentage of electricity it generates from nuclear power from 45 to 60 percent.
https://apjjf.org/-David-McNeill/2883/article.html

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

行動のとき より

気候にかんする学際的で国際的な科学研究がはじまってまもなく30年、おかげでわたしたちは気候変動の正確な分析を手にすることができている。この変動の背後にくっきりと影を落としているのが産業革命だ。それを機に、化石燃料が人間活動全体に導入され、そうしてわたしたちは現在、生活様式を見なおさざるをえなくなっている。

現在進行中の転換は、おもに2つの軸に沿っている。温室効果ガス排出の軽減、さらには削減と、もはや避けられない気温上昇のさまざまな結果に、わたしたちの社会が適応することだ。

原子力発電は気候を救えるか?

IPCCによると、原子力発電は、再生可能エネルギーや、従来の火力発電で排出される二酸化炭素を回収する技術とともに、カーボンニュートラル(=炭素中立[大気中の炭素循環量に対して中立、すなわち排出と吸収が同量])な電力を生産する1つのオプションである。しかしどの国も、気候温暖化対策として原子力発電所を大規模に発電させることを望んでいない。事故の不安や、管理する技術や人手がかぎられていることが原因で、どうしても敬遠されてしまうのである。

20世紀の技術

原子力発電は、原子が核分裂するときに発生するエネルギーを利用する、比較的に最近のエネルギー源である。というのも、最初の原子炉が開発されたのは1950年代だからである。原発には、制御可能な電力を大量に供給できる可能性がある。つまり需要に応じて生産でき、二酸化炭素排出量もかなり低く、再生可能エネルギーに匹敵する。実際、原子炉の機能では二酸化炭素を排出しないのだが、しかし、その建設には大量のセメントや鉄が必要で、それが間接的に温室効果ガスを排出している。同じく、燃料の採掘や、廃棄物の管理に産業活動がかかわり、そこに排出される二酸化炭素も核関連産業に計上される。結局、生産される電力単位による二酸化炭素排出量は、すぐれた再生エネルギーなみになるのである。ちなみにフランスでは、生産される電力の4分の3が原発によるもので、それに水力発電がくわわって、国のカーボンフットプリント[炭素の足跡=製品が販売されるまでの温室効果ガス排出量によってあらわされる]は、人口や経済の発展に比べると低くなっている。このように、電力構成のなかで核エネルギーが大きな部分を占めているおかげで、フランスはG7では二酸化炭素排出量がもっとも低いのだが、しかし、ウランの供給にもっとも依存しているといえる。

議論をよぶ選択

再生可能エネルギーと同じく原発は、二酸化炭素排出量の4分の1以上を排出する石炭――いまだに世界のおもな電力源――のかわりになりうるものだ。実際に、科学界の一部と経済界の特定部門の有力者は、原発を選択すれば温室効果ガスと気候温暖化対策になると主張している。対して、科学界のほかの一部と経済界のほかの当事者は、原発はエネルギー移行にブレーキをかけると主張する。というのも、それによって再生可能エネルギーの発達が遅れる可能性があるからである。

大きな事故

スリーマイル島(1979年、アメリカ)とチェルノブイリ(1986年、旧ソ連邦)、福島(2011年、日本)の原子力発電事故で、この技術が人的ミスや、想定外の出来事に直面したときの弱さが露呈された。事故が起きると、大気中や土地、植物、自由地下水、海水に飛散する放射能は、数千キロメートルに達することがある。たとえばチェルノブイリ事故では、14万5000平方キロメートルを汚染(ただし、セシウム137は世界中で検出される)し、、福島第一原子力発電所事故での放射線は、原子炉から4000キロメートル離れたアメリカの沿岸で検出されたことがわかっている。汚染レベルがある閾を超えると、住民を避難させなければならず、それがときに帰還不能になり、経済や社会生活に大きな影響をあたえることになる。
健康への放射線の影響を分析する国連の一部門、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の算定によると、チェルノブイリ事故では、29人が放射線被曝ですぐに死亡、6000人以上が甲状腺ガンを発症している(一般に治療しやすい)。福島にかんしてはUNSCEARの算定では、住民や原発作業員の被曝量がわずかだったことから、ガンやその他の病気で観察される増加はいっさいないということだ。
いっぽう原発反対派は、これら事故による健康の影響は、これらの事故による健康への影響は、算定がむずかしいとみなしている(とくに、ガンの数の増加や、遺伝子の変質にかんして)。
最後に、事故後の除染によって出る廃棄物の量(福島では2800から5500万立方メートル)が、物量と貯蔵面で大きな問題となっている。

石炭とガス、そして原子力からも抜けだす?

核エネルギーは、高度な技術と安定した社会、そして独立性と根源のある監視機関を必要とする。設置にこのような厳しい条件があるので、多くの国は原発を使用できない。いっぽう、欧州連合アメリカ、中国、インドなどでさらに原発を推進し、各国でいまだに支配的な石炭の使用を大幅に減らすことで、連動して二酸化炭素も削減できると主張する声もある。魅力的な考えではあるがしかし、この解決法に反対する人たちはこう主張する――政権の安定性が不十分。エネルギー移行が緊急性を要するときに、原発建設にかかる時間やコストが太陽光や風力発電より高いのは明らか。さらには、原発が増えると不安定要素が増大する(放射性物質のマフィアがらみの密輸、テロ、ウランの産出国と消費国の地政学的な力関係、希少な鉱物資源の希少性)などだ。
したがって、原発は気候変動の解決策にはならないようである。しかし、導入している国では、すでに発電能力として安定しているのを考慮すると、温室効果ガスの排出を抑える道具の1つではある。この低炭素の電力発電がすでにあることで、原発のある国は、再生可能エネルギーに大規模に投資して化石エネルギーから脱することができ、それから徐々に原発依存を減らしていくことができるだろう。