じじぃの「科学・地球_06_炭素物語・地球温暖化」

Oman Ophiolite - Gabbros

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=X4DXihtTCns

Oman Ophiolite - Gabbros

77億人超の炭素を保持 地下深くに巨大な生態系発見

2019/11/18 NIKKEI STYLE
地球に存在する炭素の90%以上が地中にある。さらに驚くべきことに、地中にも微生物が繁栄していて、それらがもつ炭素の質量の合計は、77億人の人類がもつ炭素質量の合計の400倍に上ることがわかった。
非常に危険なレベルの地球温暖化を避けるためには、今から20~40年後には化石燃料による二酸化炭素の排出をゼロにし、すでに大気中に放出された二酸化炭素の多くも除去しなければならない。
しかしヘイゼン氏は、DCOが明らかにした深部炭素循環に関する新しい知識に希望を見いだしている。自然界には、炭素を隔離する「信じられないくらい強力」な仕組みがあるというのだ。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO51847260W9A101C1000000/

交響曲第6番「炭素物語」――地球と生命の進化を導く元素』

ロバート・M・ヘイゼン/著、渡辺正/訳 化学同人 2020年発行

「空気」――旅する炭素 より

心配なこと

地球温暖化(気候変動)と二酸化炭素CO2の関係を、つぎのようにみる人が多い。
二酸化炭素やメタンは、地球のだす赤外線(熱線)を吸収し、一部を地球に向けて戻す(温室効果)。だから二酸化炭素やメタンは温室効果を強める。
②いま二酸化炭素やメタンの濃度は上昇中。「氷床コア」の分析によると過去数十万年、大気の二酸化炭素炭素濃度は200~280ppm(百万分率)の範囲にとどまり、最低の200ppmは氷河期の値だった。なお、約280ppmだった間氷期の気温は、いまより1~2℃高かった。20世紀の中期に300ppmを超え、2015年に400ppmを超えた。
 メタン濃度の上昇はもっと激しい。過去100万年の濃度は400~700ppm(10億分率)で、氷河の前進・後退とともに増減した。過去200年で急増した結果、いま2000ppb(2ppm)に近い。
二酸化炭素やメタンの濃度上昇には、人間活動が効いているのだろう。
④過去100年以上、地球の気温は上がりぎみ。地上の気温計測は1880年ごろに始まり、ここ20年ほどは高止まりしている。二酸化炭素の排出が急増した第二次世界大戦に0.5℃ほど上がったもよう(地上気温だから、同時に進んだ都市化の影響も含むはず)。
つまり、いま進む温暖化の少なくとも一部は、人間活動のせいだろう。

温暖化対策?

人間は大気に大量の二酸化炭素をだす。大気に増える二酸化炭素の一部は人為的なものだろう。このまま進み、空前の災害が起こるなら恐ろしい。何か「対策」はあるのか?
いろいろな提案がある。二酸化炭素排出の少ない暮らしをする? だが社会は二酸化炭素をだすからこそ営めるため、二酸化炭素を減らしたいなら19世紀以前に戻るしかない。風車で「クリーン電力」をつくる? だがそれには植生を破壊し、製造で大量の二酸化炭素をだすコンクリートを土台に使う。電気自動車に切り替える? だが電気は化石燃料を燃やしてつくる。自家用車をやめて公共交通を使う…有機農法を進める…リサイクルする…布おもつを使う……そのどれも、エネルギー消費をほんの少しだけ減らすだろうが、化石資源の消費はほとんど減らさない。都会に住もうと田舎に住もうと、私たちは温室効果ガスをだしつつ暮らしtいるのだ。
楽観的な人も多い。リストが想定されても、適応すればすむ。ピーター・ケルメンもそのひとりだ。勤務先は、コロンビア大学のラモント・ドハティー地球観測研究所。ハドソン湖畔に位置し、有名な玄武岩の崖パリセーズに近く、大学の本体(マンハッタンキャンパス)を対岸に望む同研究所は、地球の岩と海洋、大気研究で広く名を知られる。
みごとな岩層のそばにいながらケルメンは、視線を数千kmの彼方、アラビア半島にあるオマーンスルタン国の山岳地に向ける。灼熱の太陽を浴びて年じゅう60℃にもなる場所でケルメンは、地球上でいちばん妙な岩といってよいオフィオライトを調べている。数十kmの深部にあったマントルの巨塊が上昇し、3000m級の山並みをつくった岩だ。
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ケルメンはまず、わかっていることを再認識する。オマーンのオフィオライト山地は、ぶつかり合うプレートの境界で、薄い海底地殻を突き破って昇ったマントル岩塊だ。そんなマントル岩塊は、マグネシウムとカルシウムが多いかたわらケイ素が少なく、大気に触れると居心地が悪い。だから二酸化炭素とたちまち反応し、生じる炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムがみごとな白い縞模様をつくる。
ケルメンらは、炭酸塩生成反応が速いのを確かめた。オフィオライトは、大気から文字どうり二酸化炭素を吸い、脅威のスピードで炭酸塩鉱物になる。ミネラルの多い地下水が露頭から出てきてつくる池や水たまりでも、みるみるうちに結晶ができ、成長する。ふつうの鉱物生成は高温の地球深部で速いのだが、オフィオライトの生成は室温でもサッと進む(オマーンの室温は読者のリビングよりずっと高いが)。できる鉱物は、もとの岩をつくる鉱物より鉱物より体積が大きいため岩層を膨らせる。だからこそオマーンの山々は、地震活動がほとんどない地域なのに、1年に数mmずつ高くなっているのだ。

リアルタイムで二酸化炭素を吸う岩を見たケルメンの心は弾む。オマーンのオフィオライトは量が膨大で、人間がだす二酸化炭素の数百年分は吸収できる。

さしあたりオマーン政府は二酸化炭素の隔離など関心もない。同国の経済は石油が支えるからだ。だが岩がそこにあるかぎり、かりに人為的二酸化炭素が問題なら、岩に吸収させる対策もありうる。ピーター・ケルメンは、諦めを知らない楽観主義者なのだ。