じじぃの「科学・地球_05_炭素物語・大気中の炭素」

私たち真核生物はどうやって地球上に誕生したか-新しい進化説E3モデル- 2020/01/15

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pRjWStHCMQM&feature=emb_title

サイエンスZERO 「謎だらけの原始生命体」

サイエンスZERO 「謎だらけの原始生命体」

2020年2月16日 NHK Eテレ
【司会】小島瑠璃子、森田洋平 【ゲスト】山岸明彦(東京薬科大学名誉教授)、鈴木庸平(東京大学大学院准教授)
謎の生命体「CPR」を探しに、岐阜県の「瑞浪超新地層研究所」の地下300mの洞窟に潜入!見つかったのは、遺伝子をわずかしか持たず、私たち生物全体の共通祖先に極めて近いと見られる生物だった。
呼吸をしない、エネルギーも作れない、しかし子孫は残す、こんな常識はずれの不思議な生態に迫る。さらに、2020年1月に発表された「アーキアから真核生物への進化の謎に関わる大発見」について分かりやすく解説する。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019097118SA000/

生命の起源 ウィキペディアWikipedia) より

生命の起源(Origin of life)は、地球上の生命の最初の誕生・生物が無生物質から発生した過程のことである。それをテーマとした論や説は生命起源論(英: abiogenesis)という。
【地下で発生したとする説】
また、深部炭素を研究テーマとして世界52ヵ国1000名以上の研究者で構成される深部炭素観測所は、2009年の創設以来10年をかけた調査の結果、深海熱水孔のみならず、海底あるいは地上を掘削すると地下5km程度まで化学合成独立栄養細菌群の支配的な生物圏が存在することを明らかにした。
「地下生物圏」(deep biosphere)の発見である。「地球の深部には、まるでガラパゴスのようにさまざまな生命体が無数に存在し、その生物量(バイオマス)は全人類の245倍から385倍に相当する」ことや「数千年にわたって存在しつづける生物がある」ことも明らかにした。これにより「地下数kmで発生した化学合成独立栄養生物が生命の起源」とする新たな説も現れている。

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交響曲第6番「炭素物語」――地球と生命の進化を導く元素』

ロバート・M・ヘイゼン/著、渡辺正/訳 化学同人 2020年発行

「空気」――旅する炭素 より

炭素のシャワー

45億年前に原始地球が形づくられ、中心核とマントル、地殻の3層構造ができかける。数十種の元素(大半は希少元素)が、岩のシャワーとして表面に降り続けた。鉱物をつくる元素のうち、鉄とケイ素、マグネシウム、酸素(最大量)の4つが質量で全体の90%にのぼる[訳注:重力の作用で元素組成が落ち着いたあと表層地殻の組成は、質量の順で酸素・ケイ素・アルミニウム・鉄・カルシウムの5元素が約9割を占める]。残りの大半はカルシウムとアルミニウム、ニッケル、ナトリウムの4元素。ほかの元素は少なくて、原子数でいうと1000個のうち数個が窒素とリン、100万個のうち数個(数 ppm)がリチウムやフッ素、10億個のうち数個(数 ppb)がベリリウムや金だった。
地球と3つの岩石惑星(水星、金星、火星)は太陽のそばにできたため、太陽の熱が気体の大半を宇宙に吹き飛ばした。だからこの4つの惑星には、固体をつくる元素が多い。かたや気体の水素とヘリウムは、太陽風の暴力で10億kmより遠くに吹き飛ばされたあと、また集まって巨大ガス惑星(木星土星天王星海王星)になった。

宇宙の物語では水素とヘリウムが主役を演じ、この2つがすべての原子の約99%を占める。残る1%の元素が岩石惑星をつくるとき、主役を演じたのが炭素だ。

水素とヘリウムを除く元素のうち、原子4個の1個までが炭素だった。惑星の素材になった星屑にかぎると、炭素より多いのは鉄と酸素しかない。ただし鉄や酸素とはちがい、初期の宇宙史で炭素の大半は、二酸化炭素一酸化炭素、メタンなど気体の分子になっていた。だから、地球そのものをつくる炭素は、少なすぎたとはいえないまでも、多かったとはいえない。最良の推定で、全原子100個のうち炭素原子は1個以下だったといわれる。
地球の炭素はみな宇宙空間から飛来し、おもな源には3つあった。ひとつは太陽風に混じった炭素系に気体。それより多い2つ目が炭素質の隕石で、そんな隕石はいまもときたま落ちてくる。炭素質の隕石はいろいろな有機分子を含み、燃料になる炭素水素やアルコール類のひか、生命が使うアミノ酸や糖、DNAやRNAの素材となるプリン類やピリミジン類もある。生命の誕生で「そのまま」使われた可能性もゼロではない。たたし地球に飛来した炭素の主体は、3つ目の源、一酸化炭素二酸化炭素に富む彗星だ。彗星は水をずいぶん含み、水の一部は海のもとにもなっただろう。
飛来した炭素の大半は、深部を流動しながら高温にさらされた。高温で大きな分子は分類し、窒素や水、二酸化炭素になる。岩は高温・高圧の液体を保持しにくいため、炭素の循環がこうして始まる。液体はひたすら地表へ脱出したい。マグマ(溶融岩石)に融けた炭素は、ヒッチハイクのごとくマグマに「乗り」、岩盤の裂け目を伝わって昇る。深さ1kmあたりに着けば圧力が十分に低く、熱い流体は気化して爆発的に膨張する。シャンパンの栓を抜いたごとく、そんな気体が岩の破砕物と一緒に噴きだし、熱い火山灰と熱水のシャワーになる。火山活動がない場所だと、地下から脱け出たい小分子は地殻のすき間を昇り、地面からじわじわ噴き出ただろう。そうやって地表に出た水が原初の生みに、気体が原初の大気になった。
そのころの大気組成はよくわかっていない。窒素N2とアルゴンはあっただろう。いま大気に多い酸素O2は、ほぼ20億年後の生命活動(光合成)がようやくつくる。硫化水素H2Sや二酸化硫黄SO2など硫黄系の気体はたぶん多く、炭素系の小分子もほどほどにあったと思える。

深みへと下りるもの

地殻とマントルにある炭素の99.9%以上は、何百万年も埋もれたままだ。ほとんどの炭素は石灰岩の姿になり、ほかは生物起源の石炭や石油、黒っぽい堆積物の姿をとる。そして、炭素のうち動きやすい部分は、海底の玄武岩や堆積岩につかまったあと、沈み込み帯でマントルの深部へと下りていく。
では、太陽を浴びる地表近くの炭素や、大気や海水や生物体内にある動きやすい炭素は、どうやって(いずれ深みへと沈む)岩の成分になるのか? それには、無生物の化学反応と生命の化学反応がある。無生物の場合、大気や海水中のCO2が、火山の吐く溶岩(玄武岩)中のカルシウムやマグネシウムと結びついて炭酸塩鉱物になる(岩の風化)。ふつう風化は深海や土壌底部など目に見えない場所で進むけれど、場所によってはカルシウム分やマグネシウム分に富む表層水のなかへ、大気中の二酸化炭素CO2が引きずりこまれて進む。そんな場所だと、炭酸塩結晶の生成を目で確かめられる。
一方で生物も、数億年前に炭酸塩鉱物の合成法をあみだした。ある時期、ミネラル分の多い浅瀬で、生物の鉱物化(バイオミネラリゼーション)が進んだ。サンゴ虫や貝類や甲殻類など「鎧(よろい)をもつ生物」が生れて何百kmも続く大気中の炭素をどんどん固定する。生体分子や生物の死骸が含む炭素原子も、死んで埋もれる細胞とともに隔離された。
生物の化石と、化石混じりの堆積岩を調べると、炭素「埋葬」のしくみも規模も変わり続けてきたとわかる。約25億年前に酸素をだす光合成生物が現れ、堆積岩中にバイオマスの痕跡を残した。太陽いっぱいの浅瀬で、「藻類マット」が栄え、死んだあと海底へ沈んだ証拠だ。5億年以上前に発明された炭酸塩の殻も、海底二埋もれていく炭素を増やした。
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つまり「深みに下りるもの」には、バイオマスや炭酸塩鉱物の姿で地殻に埋まった炭素もあり、その大半は循環してまた地表に戻るのだろう。とはいえ、マントルの深部に入り、深部で長い旅をする炭素の割合がどれほどかは、まだ胸躍らせる謎にとどまる。