じじぃの「科学・地球_107_46億年の物語・誕生・地球の形成」

【宇宙の誕生】太陽の誕生

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DghKO8LlFHs

地球進化 46億年の物語 ブルーバックス

著:ロバート・ヘイゼン 訳:円城寺守 渡会圭子

はじめに より

岩石に刻まれた記録を調べるほど、生物と無生物のどちらも含めた自然界が、何度も形を変えているのがわかる。
これまで語られなかった壮大で複雑に絡み合った生命と非生命の領域には驚きがあふれている。私たちはそれらを分かち合わなくてはならない。それは私たちが地球だからだ。地球上の物質すべて、私たちの肉体をつくる原子と分子も、地球から生まれ、地球に戻る。私たちの故郷を知ることは、私たちの一部を知ることなのだ。
第1章 誕生 地球の形成
第2章 大衝突 月の形成
第3章 黒い地球 最初の玄武岩の殻
第4章 青い地球 海洋の形成
第5章 灰色の地球 最初の花崗岩の殻
第6章 生きている地球 生命の起源
第7章 赤い地球 光合成と大酸化イベント
第8章 「退屈な」10億年 鉱物の大変化
第9章 白い地球 全球凍結と温暖化のサイクル
第10章 緑の地球 陸上生物圏の出現
第11章 未来 惑星変化のシナリオ

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『地球進化 46億年の物語』

ロバート・ヘイゼン/著、円城寺守、渡会圭子/訳 ブルーバックス 2014年発行

第1章 誕生 地球の形成 より

化学反応の始まり

ビッグバンの直後に起こった最初の化学反応で分子がつくられた。いくつかの原子が1つにまとまったものだ。星の内部で水素原子が融合してヘリウムができる以前から、原子2個の水素分子(H2)が、深淵宇宙のどこかで化学的に結びついていた。それぞれの水素原子には電子が1個しかない。電子は2個で安定するので、これはやや不安定な状態だ。そのためにこの水素原子が出会うと、協力し合って分子を形成し、安定しやすい2個の電子を共有する。ビッグバンのあと大量の水素があったとすれば、水素分子はきっと最初の星々の誕生以前から存在し、最初の原子が生まれてからずっとこの宇宙の主役であり続けている。
最初の超新星爆発のあと、さまざまな元素が宇宙へと拡散し、他の多くの分子がつくられたはずだ。初期の例の1つとしてあげられるのが、水素原子2個と酸素原子が結びついてできた水(H2O)だ。おそらく窒素(N2)、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、そして二酸化炭素(CO2)分子も、超新星の周囲に多く存在していたのだろう。これらの分子はすべて、惑星の形成と生命体の始まりに、重大な役割を果たすことになる。
そして鉱物が現れた。それは化学的に完成し、原子が秩序だって並んでいる結晶質の固体である。鉱物ができるのは、それをつくる元素の密度が高くなる一方、原子が整列して小さな結晶ができるくらい温度が低いという状況が必要だった。ビッグバンからわずか数百万年後、最初に星が爆発したときそのまわりをおおっていたものが温度を下げながら拡散し、そのような反応が起こるには打ってつけの状況ができた。おそらく純粋炭素の微小な結晶(ダイヤモンドとグラファイト)が、宇宙で最初の鉱物だった。この先駆的な結晶は細かい塵のようなもので、1つ1つの粒は小さくても、宇宙でダイヤモンドのきらめきが少し見えるくらいの大きさはあったと思われる。まもなく、これら結晶構造の炭素に加え、ありふれたマグネシウム、カルシウム、ケイ素、窒素、酸素を含む高温個体が現れた。
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宇宙では何事も一度しかないということはない(おそらくビッグバンを除いて)。大昔に爆発した星の残骸はたえず重力にさらされて、まとまろうとする。前世代の星の断片はこうして新しい種類の星の種ともいうべき新たな星雲を形成する。そのだれもが星間ガスと、以前あった多くの星のがれきの塵から成る。新しい星雲はどれも以前のものより鉄が多いが、水素は少ない。このサイクルが137億年続いていて、古い星が新しい星をつくり、ゆっくりと宇宙の構成を変える。何百億もの星が、何百億もの銀河に出現しているのだ。*太古の時代
およそ46億年前の地球の誕生は、宇宙の歴史の中で何兆回と繰り返されてきたドラマだった。どの恒星も惑星も、わずかなガスと塵が漂う真空に近い空間で生まれた。個々の物質の粒子は肉眼では見えないほど小さいが、全体的としては広大な空間におよび、星を形成する雲が銀河の半分に広がっているのがわかる。何十億年も前、太陽系の誕生には重力がひと役買っている。太陽は軌道を回る惑星の子供たちの中で、唯一の巨大な恒星として生まれた。太陽の表面では核反応が起こり、近くの惑星に光と熱を浴びせた。そのおかげで私たちの故郷たる地球も、生命体が棲む世界へ向かって頼りない一歩を踏み出すことができたのだ。
そのような壮大な出来事は、ふつうとは違うことに思えるかもしれないが、地球の形成につながったのと同じような現象は、日常的に起こっているのだ。人間の体もその住まいも、地球をつくっているのとまったく同じ元素でできている。恒星や惑星の元の塵やガスを集め、元素を星にまとめあげたのと同じ重力が、私たちをこの地球につなぎとめている。一般的な物理学や化学の法則も、地球で初めて生まれたものではない。
岩石、星、生命が語る教訓も同じように明確だ。地球を理解するには、人間の生活を基準とした、ちっぽけな時間的、空間的スケールとは縁を切らなければならない。宇宙には何千億という銀河があり、それぞれに何千億という星が存在する。私たちはその宇宙でも他に類を見ない、小さな世界に住んでいるのだ。同じように、私たちはできてから何千億日もたっている宇宙の中で日々をおくっている。そのような宇宙で意味や目的をさがしても、人間が存在できる恵まれた時代や場所では見つからないだろう。空間と時間のスケールは想像を超えるほど大きい。けれども自然法則によって支配された宇宙の成り立ちは、いずれ解明されるときがくる。そのような宇宙には多くの意味がある。