じじぃの「科学・地球_416_始まりの科学・地球の始まり」

地球そして生命の誕生と進化 【初版】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=u6xXyG84lho

図2:コンピュータシミュレーションによって明らかになったプロセス


子供達に押し出された巨人 ~最新のコンピュータシミュレーションによる太陽系外惑星系における謎の解明~

●ハイブリッドシナリオ
恒星が形成した直後にその恒星の周りのガス円盤から巨大ガス惑星が「重力不安定モデル」に従って形成され、その後に巨大ガス惑星軌道の外側領域で微惑星及び岩石惑星が「コア集積モデル」に従って形成されるとする惑星系形成シナリオ。
近年発展した星形成の理論に基づいて提案されたが、 結果的にコア集積モデルと重力不安定モデル双方の問題点を解決する仕組みになっている。本研究では、初めに形成される巨大ガス惑星は恒星に衝突して飲み込まれる場合があることを予言しており、その場合は太陽系の形成シナリオにもなり得る。
https://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20131106

『【図解】始まりの科学―原点に迫ると今がわかる!』

矢沢サイエンスオフィス/編著 ワン・パブリッシング 2019年発行

パート5 地球の始まり――おおもとは岩石物質か、ガス物質か? より

●2つのシナリオから選択せよ
われわれ全員の故郷である地球は、太陽系をめぐる8つの惑星のうち、太陽に近いほうから3番目の公転軌道を回っている。つまり太陽系の第3惑星である。
地球は太陽から1億5000万km離れている。これは、太陽を出た光が届くまでに8分20秒かかる距離だ(ちなみに地球から月までは1.3秒)。億という単位がつくと途方もなく遠いと感じる人がいるかもしれないが、宇宙ではこの程度の距離はほんの隣近所である。この太陽がなければ地球もはじめから存在せず、まして地球上の人間もほかのどんな生物も存在するはずはなかった。
だが、無数の偶然が重なり、人類の起源となる生物も含めてあらゆる生物種がはるかな昔にこの惑星地球に生まれ、いままで営々と生き続けてきた。生物種は生まれては絶滅し、また新しい生物種が現れた(パート8)。
では、われわれの故郷である地球自体はいつどのように誕生したのか。その歴史はどこまで明らかになったのか?

これまで惑星物理学者や天体物理学者と呼ばれる人々は長年、地球誕生の秘密を研究し、さまざまな仮説・理論を立ててきた。近年それらのうちの2つの説が最終勝者の座を争っている。第1は「コア集積理論」、第2は「重力不安定理論」である。

第1の理論名のコアは”中核となるもの”の意で、一言で言えば惑星の岩石部分のことだ。この理論は、無数の岩石が衝突・合体をくり返してしだいに巨大化し、ついに地球になったという。近年メディアなどに写真が紹介される隕石や小惑星は惑星コアになれなかった”残存物”である。
この理論は、太陽に近い公転軌道をめぐっている岩石質の惑星(水星、金星、地球、火星)の誕生をおおむね説明できる。だが太陽から遠く離れ、地球などよりはるかに大きくガスで包まれた巨大ガス惑星(土星木星など)についての説明は矛盾だらけとなる。土星の大きさ(質量)は地球の95倍、木星は318倍もあり、深いガスに含まれているので、地球と同じプロセスで生まれたはずはない。
巨大ガス惑星の誕生をうまく説明できそうなのは、後述する第2の理論「重力不安定理論」である。

●教科書が教える地球の始まりの理論
まず第1の理論は何を言っているのか?
いまから46億年ほど前、わが太陽系のあたりの宇宙には、もっとも軽い元素(水素とヘリウム)からなる分子雲とチリの雲が広がっていた。これは「原始太陽系分子雲(星雲)」と呼ばれる。これらのガスとチリの雲が自らの重力によってしだいに中心へと落ち込み、同時に全体が回転しはじめる。その結果、ガス物質の密度はしだいに高まり、ついに星(恒星)の赤ん坊である原始太陽が生まれた(パート1)。
こうした太陽系分子雲のガス物質の99.9%は太陽の原材料となり、残りのわずか0.1%のガス物質から8つの惑星(太陽系惑星)が生まれた。
原始太陽は自らの重力によっていっそう収縮して高密度となり、中心温度は1500万度Cを超える。するとついに水素が「核融合反応」を起こし、無限のごときエネルギーを放出しはじめる。超高温の表面からは電気を帯びた粒子(陽イオンと電子)が太陽風となって噴き出し、周辺の宇宙に残されている水素やヘリウムなどの軽い元素を背後の宇宙へと吹き飛ばしてしまう。
この結果、太陽系宇宙に残されるのは重い元素だけとなり、それらが集まって直径数kmの巨大な岩石(=微惑星)が無数に生じる。太陽から近いところにはより重い岩石物質が集まり、水星や金星、地球や火星の原材料となる。”太陽の残り物”が地球などを生み出したのだ。これらの惑星が「岩石惑星」と呼ばれるゆえんだ。またその際に惑星の重力に引き寄せされたガスは、生まれたての惑星の原始大気となった。
他方、太陽から遠ざかるにつれて太陽風が弱まるためガス物質は完全には吹き飛ばされず、岩石のまわりにガスが引き付けられて、土星木星などの巨大ガス惑星の材料となった。

●地球は生まれても木星は生まれない
こうして、地球がいま太陽をめぐっている公転軌道のあたりで岩石どうしが衝突・結合し、地球のコアとなる巨大な岩石塊が出現した。そこでは重い物質は中心部に集まり、その上に浮かぶように軽い物質が集まって地殻をつくり出した。
同時にこの”地球の卵”は磁石の性質を帯びはじめ、自らを磁場で包むようになった。さらにいまや強大になった重力は周辺宇宙からガス物質を引きつけ、それはうすい原始大気をつくった。地球が惑星へと成長したのだ。
だが生まれたばかりの原始地球の地表は荒々しい環境にさらされた。宇宙から無数の大小の小惑星が落下し、その衝撃で地球内部のどろどろに融けたマントルを宇宙空間へはねとばした。無数のマントルの破片は地球重力によって地球周辺に集められ、月を誕生させた(諸説あるが)。
    ・
いまや原始地球はその姿をはっきりと現し、以来、太陽から1億5000万km離れた公転軌道を現在に至るまでめぐり続けている――以上が第1の理論の要旨だ。
だが後述のようにこの理論は地球などの岩石惑星の形成は説明しても、ガス惑星についてはまったく不十分である。

●巨大ガス惑星をたった1000年で生み出す
ここで登場するのが第2の理論、つまり土星木星などの巨大ガス惑星についての重力不安定理論だ。
土星木星などを生み出すには、短い時間で莫大な量のガス物質を重力によって引き寄せねばならない。研究者たちはコンピューター・シミュレーションをくり返したが、必要量のガス物質を集めるだけで数百万年かかってしまった。だが原始太陽系星雲にはそれほどの量のガス物質は存在しなかった。大半はすでに太陽の原材料になってしまったからだ。また第1の理論では、生まれたての岩石惑星はどうしても太陽の重力に引き寄せられて呑み込まれてしまうという問題もあった。
これに対して新理論は別の見方を持ち込んだ。それは、円盤状をした原始太陽系星雲では、太陽から遠く離れるほど重力が不安定になり、その結果、円盤をつくっているガス雲がいくつかに分裂して寄せ集まり、それぞれが巨大ガス惑星を生み出したというものだ。
これらのガス惑星は岩石惑星よりもはるかに速いスピードで――おそらくたった1000年ほどで――生み出された。この時間は宇宙では一瞬といえるほど短いが、その間にいまにも飛び散ろうとしていたガス物質を吸収してしまった。それらのガス惑星の赤子は巨大な質量をもつことで、すぐに太陽を公転する軌道を運動するようになった。
    ・
前記の第1の理論は、小さな岩石どうしがどうやって衝突・合体するかを説明できない。しかしそこにこの不安定理論を持ち込むと、小さな岩石どうしから惑星が誕生するまでの時間を1000分の1に早めることができるという。
アメリカ、サウスウェスト研究所の天体物理学者ハロルド・レヴィソンはこう述べている――この新しい理論は、いままで無視されてきた太陽系形成時の残滓である小石ほどの岩石物質こそが、太陽系惑星誕生のカギであることを明らかにした、と。