じじぃの「科学・地球_03_炭素物語・地球の炭素鉱物」

Birth of our Solar System

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=qfdDWdZcpOw

太陽系のできるまで

国立科学博物館-宇宙の質問箱-太陽系の誕生編

●太陽系はどのようにして生まれたのですか?
恒星と恒星の間の宇宙空間には、星間ガスや星間塵とよばれるガスやチリがひじょうに薄くまばらに存在しています。これらのガスやチリがが特に濃く集まったものを星間雲とよびます。恒星はこれらの星間雲から生まれるのです。
太陽もまた、こういう星間雲の中でガスやチリがより集まって生まれました。
中心のかたまりは原始太陽となりますが、残された円盤の中ではガスとチリがくっつき、直径10kmほどの小さなかたまりが無数に生まれます。これを微惑星とよびます。
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/solsys/solsys01.html

交響曲第6番「炭素物語」――地球と生命の進化を導く元素』

ロバート・M・ヘイゼン/著、渡辺正/訳 化学同人 2020年発行

「土」――深部の炭素 より

地球の多彩な炭素鉱物

惑星の誕生は大事件だった。恒星や惑星のゆりかごだった大星雲は、ちりとガスが何光年もの範囲に広がったもの。そばを通る星の重力に乱されたり、超新星爆発の衝撃波が届いたりすると星雲の一部が乱れ、回転を始める(原始惑星円盤)。フィギュアスケートのスピンに似て回転がどんどん速まるうち、重力が質量のほとんどを中心に集めて太陽なものができ、残りの質量から惑星ができる。私たちの太陽系だと、誕生食後の太陽がだす熱い太陽がちりとガスを遠くへ飛ばし、木星土星など「巨大なガス惑星」をつくった。そして岩石質の残りが、内側の惑星4つ(水星、金星、地球、火星)になった。
惑星のもとは、ちり微粒子のフワフワな集合体だったろう。太陽が噴きだす熱や星雲内部に発生する放電が微粒子を融かす。すると微粒子はBB弾(直径ほぼ6mm)より小さい液滴になる。そんなコンドリュール(球状粒子)が集まって成長し、バスケットボールから飛行船、さらには小山のサイズになっていく。重力が岩石を集合させ、微惑星をつくる。微惑星のぶつかり合う勢いが増す。初期の太陽系に生まれたそんな塊が、いまも地表に落ちてくる(コンドライト隕石)。私たちが手にできる最古の固体だ。コンドライト隕石は希少でもなく、ネット店舗のeBayが1個数百円で売っている。
微惑星が数百kmサイズまで成長すると、中心部は融けて成分が半径方向に分離し始める。鉄やニッケルなど高密度の金属は中心に向かい、低密度の橄欖石(かんらんせき)や輝石(きせき)が「覆い」になる。内部のすき間をめぐる熱水が岩石混合物を変形させるかたわら、宇宙から飛来してぶつかる巨大岩石が、高密度の新しい「衝撃鉱物」を生む。そんな動乱も収まりかけたころ、原始惑星(地球など)が空間に散らばる岩石質の屑を吸い(掃除機のイメージ)、太陽系の姿を整えていく。地球の場合、誕生から間もないころに幼い小惑星テイアと衝突し(ジャイアント・インパクト)、そのとき、テイアは消えて月が生まれた。
月が形を整えていくころ、インパクトでいったん融けた地球も傷が癒え、冷えていった。その結果、薄い地殻と、厚いマントル、金属質のコア(中心核)ができる。深部をめぐる高温の熱水と水蒸気が元素の分別と濃縮を進め、軽い元素を表面へと運び、地殻内に新しい鉱物あれこれを増やす。いろいろな酸素鉱物もできた。
原始の地球には、ダイヤモンドと黒鉛を含む岩石も宇宙から飛来した。それが炭素鉱物を多様化させ、化学組成も結晶構造もさまざまな数百種の鉱物ができる。いま採れるそんな鉱物が、地球のたどった岩石進化の証人だといえよう。

希少きわまりない鉱物

方解石などの石灰岩(炭酸カルシウム鉱物)は、地殻内で炭素のいちばん大きい貯蔵庫だが、方解石は、数百種ある炭素鉱物のひとつにすぎない。

地球内部の炭素を理解するには、視点を方解石など平凡な鉱物から、特殊な化学組成や結晶構造の鉱物種へ向けるのがいい、そのとき、希少きわまりない鉱物あれこれと出合うことになる。
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炭素鉱物はダイヤモンドとグラファイトだけではない。いま知られる400種以上は、それぞれ特別な元素が炭素と結合し、独特な結晶構造をもつ。ただし地球上の量でいうと、ほんのわずかな種類が大半を占める。炭酸カルシウムだと、方解石(カルサイト)や霰石(あられいし、アラゴナイト。貝殻やサンゴの素材)、ほかにマグネシウムを含む苦灰石(くかいせき、ドロマイト)、炭酸カルシウムの菱苦土石(マグネサイト)など、ルビーやエメラルドの前ではかすむ準宝石にも、きれいなピンクのロードクロサイト(菱マンガン鉱)、灰緑色のマラカイトクジャク石)、群青のアズライト(藍銅鉱)といった炭素鉱物がある。

炭素鉱物チャレンジ

数百年におよび鉱物学は観察科学の域を出ず、新鉱物はたまたま見つかってきた。珍しいナトリウム雲母のウォネサイトは、平凡な黒雲母を調べていて発見された。繊維状の鉱物ジムトンプソナイオは、角閃石(かくせんせき)に分類されていた。その気になって見つけたものではない。5000種を超す鉱物のうち、予想どおり発見されたものは十指に満たないだろう。
鉱物生態学の発想がその伝統を変えつつある。どんな未知鉱物が、どこで見つかりそうかもわかってきた。炭酸ナトリウム鉱物や炭酸カリウム鉱物の新種なら、タンザニアのナトロン湖が候補になる。また炭酸ストロンチウム鉱物の新種はカナダ・ケベックのプードレット採石場で見つかり、ほかの同類はどれも合成物にすぎない。
新しい炭酸ストロンチウム鉱物の特定には、カナダの採石場へ行かなくてもいい(鉱物学者には格好の息抜きだろうが)。博物館を訪れ、整理棚に納まったブードレット採石場の鉱物標本を調べ、微結晶の粒をじっくり調べる。石炭や油頁岩(ゆけつがん、オイルシェール)も新しい炭素鉱物を含んでいよう。ある研究では、石炭層の亀裂部や油頁岩のすき間に濃縮された有機分子が結晶化した、新しい数十個の結晶を特定している。そんな有機系の鉱物も発見を待つ。見つけたいなら、珍しい鉱物が出る地域の石炭や油頁岩を分析すればいい。
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天然にある炭素鉱物はたいてい、人間の手が届く地表近くで見つかってきた。けれど地球は、その深部に鉱物学の秘密を抱える。つまり、私たちには見えない場所、マントルと中心核の高温・高圧のもとで生まれた結晶だ。深部のありさまをつかむには、特殊な分野にたけた先端科学者の操る武器が欠かせない。鉱物物理学だ。