じじぃの「科学・地球_359_気象の世界ハンドブック・人間による要因・温室効果」

What Is the Greenhouse Effect?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=SN5-DnOHQmE


Balloon Or Bust Exploring Climate Change and Greenhouse Gas.

ppt download
https://slideplayer.com/slide/4286773/

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

人間が気候を妨害するとき より

1979年、気候にかんする初の国際会議で開かれて以降、世界中の気候学者が地球の気候の安定のために動員されている。1990年と1995年、2001年、2007年、2014年までの5回、気候変動に関する政府間パネルIPCC)によって発表された気候の評価報告書作成には、国際的な科学者3000人近くが参加、つねにより正確に事実を確認している。気候システムへの人間の影響は明確だ。2021年に予定されている第6次評価報告者でも、それが再評価されるだけだろう。

いっぽう、1000年単位の気候のゆれや変動を口実に反論している気候温暖化の懐疑派は、その言説を引っこめるしかなさそうだ。IPCCの第5次評価報告者では、大洋や大気が受けとって保存したエネルギーの増加において、自然の要因がほとんどかかわっていないことが明らかになっている。現在の地球のエネルギー均衡の変化は、人的活動の結果であり、おもに、二酸化炭素を排出する化石エネルギーが原因なのである。

わたしたちの知的レベルはいま、その原因を特定し、解決法を策定するまでに達している。あとは知性と意志を結集し、状況からいって避けて通れない、環境を配慮したエネルギーの移行を働きかけるだけなのである。

地球上の生命が進化し、現在のように維持されているのは、大気のおかげせある。さまざまな気体で構成される大気は、温室のような働きをしており、その温度は内部と外部のエネルギー交換で決まってくる。

温室効果ガスとはなにか?

大気とは、地球をとり囲む気体と水(水蒸気)をふくむ雲の薄い層のことである。生命に必要な酸素と水をもたらしてくれるうえ、地球上の許容可能な温度を維持しているのも大気である。実際、もし大気がなければ、地球の気温は現実の温度よりかなり低く(平均でマイナス18℃ぐらい)なるだろう。
わたしたちにとって適度な気温は、温室効果の成果である。晴れた空気(雲がない)は、太陽光線をほぼそのまま透過させ、地表は温まる。いっぽう、地表と雲は、この太陽光線の一部を宇宙に送り返し、残りは吸収されて、地面と大洋を温める。地表から放出される赤外線も、一部は大気に吸収され、大気はその赤外線を地面と宇宙に送り返している。したがって、大気は地球のカバー役をになっていることになる。しかし、大気の99パーセント――酸素と窒素で構成――はじつは温室効果とは関係なく、おもにこの効果を生み出すのは、自然または人的に発生するごく少量の気体なのである。

温室効果ガス

自然由来の温室効果ガスガス(GHG)でおもなものは、水蒸気(H2O)と、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、オゾン(O3)などである。これらのGHGは、地球上に人間が出現する前から存在していたのだが、しかしその濃度は、人的活動によって根底から変化した(水H2Oを除く)。
水蒸気。
GHGのなかで、もっとも大気中に拡散しているのは水蒸気(H2O)である。対流圏(高度0から約10キロメートルのあいだ)全体の約2パーセントにあたり、自然の温室効果の約60パーセントをになっている。その次が雲で、地表の熱を引き止め、温室効果では17パーセント、残りはほかのGHGの作用だ。水蒸気で重要な特徴は、濃度が気温に左右されることで、放出される水蒸気量とほぼ関係がないということだ。追加で増えた水蒸気はすべて、液化または降雨によって排出されるからだ。したがって、人間が放出する水蒸気は、その濃度にさしたる影響をあたえず、つまり、温室効果にも関係がないということになる。
対して、気温が上昇すると水蒸気の濃度が高くなり、温室効果も高まって、気温はさらに高くなる。一般にいわれているのは、水蒸気は気候に正のフィードバック[温室効果を増幅する]をもたらすということだ。
二酸化炭素
一般に炭酸ガスと呼ばれる二酸化炭素(CO2)は、もう1つの重要な自然由来のGHGである。大気と大洋、植物は毎年、数千億トンという、きわめて大量の二酸化炭素を交換している。これらの交換の原動力となっているのが植物の光合成で、大気中の二酸化炭素を回収し、いっぽう植物体の分解過程では二酸化炭素を大気中に放出している。過去100万年間、そして産業革命前までの二酸化炭素濃度は、170から270ppm(百万分率=空気中の100万個の分子に対するガスの分子数)のあいだで変化していた。ところが二酸化炭素を人間が放出するようになったことで現在、その濃度は400ppm近くになっている。この上昇こそが、人的活動によって追加された温室効果のおもな原因だ。それが理由で、科学者は温室効果ガスの「地球温暖化係数」(GWP)の基準値に二酸化炭素(係数1)を選んでいる。たとえば、このガスのGWPは二酸化炭素のGWPのX倍という言い方である。GWPがあらわすのは、あるガスの赤外線の吸収能力と、大気中に残る時間を、二酸化炭素と比べた数字である。
メタン。
自然由来でメタン(CH4)がもっとも多く存在するのは沼地である(78パーセント)。水に浸ったこの区域は、有機物質の分解によって、嫌気性のメタン生成菌やメタンを分解する微生物が増殖しやすい。その代表ともいえるのが白アリ[体内にメタン菌を共生させる]で、セルロースを消化して、自然のメタンの12パーセントも発生させている!さらに、沿岸部の海底にある体積層もまたメタンを放出している。このガスは、大気中での寿命が約12年で、そのあと化学反応によって…二酸化炭素に変化する。また、とくに赤外線を吸収する力では、100年間の計算で二酸化炭素の23倍もあり、気候変動に拍車をかける一因となっている。農業(稲作、牛の飼育など)は大量のメタンを放出する活動で、また化石燃料の採掘のさいもメタンは流出する。これら人的活動による追加放出により、大気中のメタン濃度は200年でほぼ3倍になっている。