じじぃの「科学・芸術_853_人類宇宙に住む・テラフォーミング」

The Terraforming of Mars

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=rupi8KR1HJU

テラフォーミング

ウィキペディアWikipedia) より
テラフォーミング(英: terraforming)とは、人為的に惑星の環境を変化させ、人類の住める星に改造すること。「地球化」、「惑星改造」、「惑星地球化計画」とも言われる。
アメリカのSF作家、ジャック・ウィリアムスンがCollision Orbit(コリジョン・オービット)シリーズで用いた造語が語源であるとされる。

                          • -

『人類、宇宙に住む 実現への3つのステップ』

ミチオ・カク/著、斉藤隆央/訳 NHK出版 2019年発行

火星――エデンの惑星 より

テラフォーミングを始めるには、大気にメタンと水蒸気を注入し、人為的に温室効果を引き起こしたらいい。こうした温室効果ガスは、太陽光をとらえて氷冠の温度をじわじわと上げる。氷冠が解けると、とらわれていた水蒸気と二酸化炭素が放出される。
火星周回軌道に衛星を送り込み、太陽光を集約して氷冠に当てることもできるかもしれない。衛星を火星の自転と同期させて上空の決まった場所に浮かべれば、極地方にエネルギーを放射できるのだ。地球でも、われわれが衛星放送の受信アンテナを向ける、3万6000キロメートル近く上空の静止衛星は、24時間ごとに地球をちょうど1周するので止まっているように見える(静止衛星は赤道上空を周回する。すると衛星からエネルギーを、極地方に斜めから当てるか、真下の赤道に当ててから運ぶことになる。あいにくどちらの方法でも、いくらかエネルギーの損失がある)。
この方式の場合、火星の太陽エネルギー衛星は、鏡やソーラーパネルが無数に並んだ、さしわたし何キロメートルもある巨大なシートを広げることになる。太陽光は集約されて氷冠に向けて放たれるか、太陽電池でエネルギーを変換してマイクロ波として送られる。これは、費用はかかるが最高に効率的なテラフォーミングの手段と言える。安全で、汚染がなく、火星表面へのダメージを最小限に抑えられるからだ。
     ・
2012年には、ドイツ航空宇宙センターに維持管理されている火星シミュレーション研究所の科学者が、苔(こけ)に似ている地衣類がその環境で少なくとも1ヵ月生き延びられることを見出した。また2015年、アーカンソー大学の科学者は、4種のメタン生成菌――メタンを生成する微生物――が大量に似せた世紀環境で生きられることを明らかにしている。
さらに野心的なのはNASAの火星生態系生成テストベッドだ。これは、シアノバクテリア光合成藻類をはじめとする極限環境生物の細菌や植物をローバーにのせ、火星へ送り込むことを目指すプロジェクトである。こうした生物を缶に収めて火星の土中に埋め込み、缶に水を加えてから、能動的な光合成の証拠となる酸素の存在を機器によって調べる。この実験が成功すれば、いつかこの種の農場が火星を覆い、酸素や食物を作り出すことになろう。
22世紀の初めごろには、テクノロジーの第4波――ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、AI――が立派に成熟して、火星のテラフォーミングに大きな影響を及ぼしているはずだ。
生物学者のなかには、遺伝子工学によって、火星で――たとえば火星の土の化学組成や新たに作る湖で――生きられるように設計された新種の藻類が生まれる可能性もあると言っている人もいる。この藻類は、二酸化炭素の多い、寒冷で希薄な大気で繁殖し、大量の酸素を老廃物として放出する。そして食用にでき、生物工学によって、地球上にある味に似せることもできそうだ。さらに、好適な肥料を生み出すように設計することもできる。
映画『スター・トレック2/カーンの逆襲』では、ジェネンス装置という途方もない新技術が持ち込まれていた。この装置は、死の惑星をテラフォーミングして、ほぼ瞬時に緑豊かな居住可能世界にすることができた。それは爆弾のように爆発し、高度な生物工学で生み出したDNAを散布する。このスーパーDNAが惑星の隅々にまで広がると、細胞が根づいて密林ができ、ほんの数日で惑星全体がテラフォーミングされるのだ。
     ・
火星のテラフォーミングは、22世紀の一大目標だ。しかし科学者は、火星の先も見据えている。なにより期待に胸を躍らされるのは、巨大ガス惑星の衛星かもしれない。木星の衛星エウロバや、土星の衛星タイタンなどである。巨大ガス惑星の衛星は、かつてはどれも似たような不毛の岩塊と思われていたが、今ではさまざまな間欠泉や海、峡谷、大気光[天体の大気が宇宙線や太陽光などによって発する弱い光]をもつ個性的なワンダーランドと見なされている。いまや、そうした衛星は人類の居住地と目されているのだ。