ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏…温室効果ガスが気候変動に与える影響などを予測
2021/10/06 読売新聞オンライン
スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、地球の気候変動予測の道を開いた真鍋 淑郎しゅくろう ・米プリンストン大上席研究員(90)らに授与すると発表した。
高性能のコンピューターを駆使し、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、地球規模の気候変動に与える影響などを予測した先駆的な研究が評価された。
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地球温暖化は予測ではなく、いま起きていること より
【主要人物】スヴァンテ・アレニウス(1859~1927年)
1896年に世界で初めて、スウェーデンの化学者スヴァンテ・アレニウスが、人間活動に起因する二酸化炭素(CO2)の排出が地球温暖化を招く可能性について指摘した。
アレニウスは、大気中のCO2をはじめとする数種類の、現在では「温室効果ガス」と呼ばれる気体が地表の平均温度に影響し、CO2濃度の上昇が地球の気温を上げると考えた。より具体的には、CO2濃度が2.5~3倍上がれば、北極の温度が8~9℃上がると見積もった。アレニウスのこの考えは、彼の先達である19世紀前半の科学者ジョセフ・フーリエとジョン・ティンダルの研究に基づく。フーリエは、太陽はあまりにも遠く、その熱だけで地球はあまりにも遠く、その熱だけで地球の気温を保てるはずがないのに、なぜ地球が凍りついた不毛の地にならないのかと疑問に思った。彼が知っていたのは、地表のように温められた表面は熱エネルギーを放射すること、熱エネルギーが宇宙空間に放射されることで地球が冷やされるということだ。何かが地球の温度を調節していることになるが、フーリエは、さまざまな気体で構成される地球の大気が、空気を閉じ込めて保温するガラス温室のような役割を果たしているという仮説を立てた。フーリエの仮説は単純すぎるものだったが、地球の温度調節の「温室効果」論につながった。
ジョン・ティンダルが、フーリエの温室効果仮説を初めて実証した。その実験は、どのようにして、地球が冷える夜間に、昼間に吸収した太陽熱を放射するのかを示した。その放射熱を大気――とりわけ水蒸気が吸収して温室効果をもたらすことを証明した。そのおかげで地球の気温は平均15℃に保たれる。しかしここ数十年の間に、人間活動が温室効果ガスを放出することで、地球の平均気温をこの値より上昇させた。記録が残るなかで最も平均気温が高かった10年は、いずれも1998年以降の年である。