じじぃの「役に立たない科学・気候モデル・天気を予測するには!ハウ・トゥー」

[サイエンスZERO] 祝!真鍋淑郎さん ノーベル物理学賞 2021 | 気候シミュレーションの源流!温暖化研究で世界を変えた | NHK

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PFjY-SZGAzQ


地球温暖化予測・真鍋淑郎氏のノーベル賞は「ここがすごい!」天達気象予報士が熱く解説

2021.10.06 nippon.com
2015年に温暖化防止に向け大きな転機となったCOP21という国際会議が開かれましたが、このCOP21が開催されたフランスのパリ北駅には、真鍋氏の功績を称えるために、真鍋氏が使った気象学の数式がいたるところにいまでも掲げられています。
気候変動の中では非常に大きな存在だということなのです。
https://www.fnn.jp/articles/gallery/249569?image=6

『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』

ランドール・マンロー/著、吉田三知世/訳 早川書房 2020年発行

第12章 天気を予測するには より

コンピュータ

第二次世界大戦に続くコンピュータ時代の幕開けに、数学者ジョン・フォン・ノイマンはコンピュータを使った天気予報を実現するプロジェクトを立ち上げた。1956年までに彼は、天気予報は3つの種類に分けられるだろうと判断した。短期予報、中期予報、そして長期予報だ。この3種類で必要とされる手法はそれぞれまったく異なり、中期予報が最も困難になるだろうと、彼は正しく見抜いた。
初期予報は、今後数時間または数日間の予報をする。この範囲で天気を予報するには、十分なデータを収集し、それを使ってたくさんの計算をすればいい。大気は、比較的よく知られている流体力学の法則にしたがって活動する。大気の現在の状態を測定できるなら、それがいかに進化するかというシミュレーションができる。こうしたシミュレーションは、今から数日間の天気を高い精度で予報してくれる。
この種の予報は、大気の状態に関してより多くの情報を集めることにより向上させることができる。それには気象観測気球、測候所、飛行機、そして海洋気象ブイなどからのデータを総合する。またコンピュータの計算能力を高め、より高い解像度の数学モデルが使えるようにして、シミュレーションを改善することもできる。
だが、予報を数週間の中期に拡張しようとすると、ある問題にぶつかる。
コンピュータを使った天気天気予報に取り組んでいたエドワード・ローレンツは1961年、ひとつのシミュレーションを、わずかな違いしかない2組の初期値――たとえばある場所の気温が10℃と10.001℃など――で実行すると、出てくる結果がまったく異なることに気づいた。最初はとても気づかないほどわずかの差だが、その小さな差は次第に大きくなり、気象モデルの系のなかをどんどん広がっていく。ついには、元々は初期値がわずかに違うだけだったふたつの系は巨視的に見て似ても似つかないものになってしまう。彼は、このことを表すバタフライ効果という言葉を作った――世界の片隅で羽ばたいている蝶が、やがて地球の反対側の嵐の進路を変えることもあるという考え方を表したものだ。この考え方からのちに生まれたのがカオス理論である。
天気はカオス的な系なので、中期予報――1ヵ月、または1年後の天気がどうなるか――には根本的に不可知な部分がかなりある。エルニーニョ(赤道付近の太平洋東部で海面水温が高い状態が1年以上続く現象)や太平洋10年規模振動(太平洋各地で、海水温や気温の平均状態が数十年スケールで周期的に変動する現象)など、季節の変化を進める周期の長い変動がいくつか発見されており、これらの現象は次の季節の全般的な傾向を予測する手掛かりを提供してくれる。しかし、10月1日に雨が降るかどうかを、5月1日に予測するのは不可能だろう。
長期予報は数十年から数百年という長期間にわたる予報で、現在、気候変動予測として注目されている。遠い未来までには、カオス的な日々の変動は平均化され、気候は主に長期的なエネルギーの入出力によって決まる。根底にあるカオスが系を混乱させる可能性があるため、完璧な気候予測はおそらく不可能だが、平均して事態がどのように変化するかは、ある程度自信を持って予測することができるだろう。大気に注ぎ込む日光の量が増えれば、平均気温も上がるだろう。大気中のCO2の量が低下すれば地表から逃れ出る赤外放射の量が増え、気温は下がるだろう。ありとあらゆるフィードバック・ループが関係しており、なかには私たちがまだ完全には理解していないものもあるが、系の基本的な振舞いは原理的に予測可能である。
以上をまとめると、天気予報の3つの種類は、次のように特徴づけることができるだろう。

・短期予報:十分優れたシミュレーションがあり、ほぼ完全に予測できる。
・長期予報:確かな予測をするのは難しいが、平均としての予報は可能。
・中期予報:文字通り不可能だろう。

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どうでもいい、じじぃの日記。
2021年のノーベル物理学賞は日本出身の真鍋淑郎さんらが受賞した。
真鍋さんは温暖化研究に欠かすことができない「気候シミュレーション」の礎を築いた功績を評価されての受賞だった。

2022年発行 チャールズ・C・マン著『魔術師と予言者――2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』に真鍋淑郎さんに関する記事が載っていた。

  大気中二酸化炭素の物理学上の基本的理解が正しくないことが証明されれば、これは科学史上、異例の事件となる。学問では、原則として専門分野の範囲内なら大きなミスは出ないものだ。確かに、過去には物理学者が数百年にわたって、宇宙空間はエーテルという謎の物質で満たされているという誤った認識を持っていたが、その誤解が長く続いたのは、主として、エーテルの存在を実験で立証できなかったからだ。19世紀に適切な実験方法が開発されると、すぐにこの通念は吹き飛んだ。気候変動は、ティンダル以降、断続的に研究されていた。1960年ごろからは系統立てて、そして1990年ごろからは集中的に研究されるようになった。これほど長期にわたって努力が続けられてきたことを踏まえると、空気中に大量の二酸化炭素を排出すれば地球の平均気温が上昇するという一般的な合意事項が、誤っていることはまずありえない。

このモデルが多くの数量的予測に成功してきたことを考慮すると、なおさらありえない。初期の例は、1967年に、ワシントンDCにある米国海洋大気庁のふたりの研究者、真鍋淑郎とリチャード・T・ウェザラルドが立てた予測だ。

  彼らは、大気の下層部と成層圏は、まったく逆の働きをし、前者があたたまると後者は冷えるのではないかと考えた。成層圏の観察は困難だったので、この現象は2011年まで確認できなかった。しかしまちがいなく確かめられたのだ。当初の予測から12年後、真鍋とほかのふたりの科学者は、別のことも予測した。陸域は海洋よりも温暖化が速く進むこと、そして、温暖化がもっとも緩慢なのは南極大陸のあたりであることを推測したのだ。これもまた実証された。ほかにもこのような例が数多く存在する。

原著は2018年発行の『The wizard and the prophet: two remarkable scientists and their dueling visions to shape tomorrow's world』です。