じじぃの「科学・地球_487_温度から見た宇宙・生命・地球・太陽の温度」

結月ゆかりと量子力学03【シュテファン・ボルツマンの法則】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BCEHaGu9BiU&t=15s

ウィーンの変位則


シュテファン・ボルツマンの法則

nagatabi-p ページ!
前回はプランクの法則の導出をしたが、今回はプランクの法則を使って、それ以前に知られていた黒体放射に関する法則の導出をしてみたいと思う。
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『温度から見た宇宙・物質・生命――ビッグバンから絶対零度の世界まで』

ジノ・セグレ/著、桜井邦朋/訳 ブルーバックス 2004年発行

第3章 地球を読み解く より

温室効果――その科学

ヨーゼフ・シュテファンというウィーンの物理学者が、1879年に放射の法則を発見した。彼は、すべての物体が放射する電磁波の単位面積あたりの強度は、その物体の温度だけに依存することを発見したのだ。強度の温度依存性は極めて強く、温度の4乗に比例している。温度が2倍になれば、放射のエネルギー密度(即ち、強度)は2x2x2x2、つまり、16倍になる。もちろん、このことは、温度が正しいスケールで測られた時にのみ正しい。つまり、このスケールはケルビンで測った温度で、ゼロは摂氏でマイナス273度である。すべての物体が電磁波を放射するのだが、シュテファンの法則によれば、温度が下がるにつれて、放射は急激に減少し、絶対零度でゼロになるのである。
シュテファンには、前章で述べたルートヴィッヒ・ボルツマンというとても有能な学生がいた。ボルツマンは熱平衡にある分子の統計的な挙動に関するマクスウェルのアイディアを取り上げて、改めて検討し、分子運動を説明する上でエントロピーの概念を導入したのだった。
シュテファンは、ボルツマンにマクスウェルの論文を紹介し、これらをドイツ語に翻訳する手助けに、英語の辞書を貸した。ボルツマンは、10年後に、マクスウェルのアイディアに基づいてシュテファンの法則を拡張し、この恩に報いたのであった。この法則は現在、シュテファン=ボルツマンの法則として知られている。この法則は、ある温度の物体の表面、1平方フィートまたは1平方メートルから、どれだけの放射が出ていくかを予測してくれる。例えば、太陽の表面温度と、太陽の表面積がわかると、太陽の総放射量がわかるのである。
だがしかし、シュテファン=ボルツマンの法則は、放射がどんな周波数分布をもっているかについては、何も語ってくれない。これは、1894年にウィルヘルム・ウィーンが提唱した法則から導かれる。この法則は、放射強度を周波数に対してプロットすると、放射体の温度(ケルビン単位)に比例する周波数のところに、非常に鋭いピークを示すというものである。図(画像参照)は、3つの温度に対する曲線を示している。こうした曲線は、強度対波長というグラフでも表せることに注意しておこう。周波数と波長は互いに反比例の関係にあるからである。波長が大きくなれば、周波数は減少するのである。
温度に応じてどの周波数で放射の強度が最大になるかを考えると、地球と太陽は興味深い対照をなす。地球が放射する放射強度のピークがどこに位置するかは観測できないが、このピークが遠赤外のところにあることはわかっている。それは、地球の温度が実際に測れるからである。他方、太陽の温度は直接測れないが、太陽放射の強度のピークがどこかは観測できる。
このピークはちょうど、可視領域の真ん中にある。人間の目は確かに、明るい日光で最もよく機能するように何百万年をかけて進化してきたのである。目は太陽の表面温度に対応しながら形成されたといってよいであろう。太陽の温度が今よりごくわずか低かったら、人間の目はそれに応じた適応をしていやであろうから、もう少し低い周波数のところに最も鋭敏であったろう。太陽の表面温度は、太陽放射の強度対周波数の曲線に見られるピークからわかる。この温度は5800Kである。
太陽表面の温度がわかると、シュテファン=ボルツマンの法則から、太陽の放射量を決定できる。したがって、ちょっとした幾何学的な考察をすれば、どれほどの太陽放射が地球に届くかがわかる。
では、地球はどれほど再放射するのだろうか。熱平衡は流入する熱と出ていく熱とが同量であることを意味している。どれほどの再放射がなされるのかがわかると、次いで地球の温度が決まる。熱の出入りが釣り合うとした簡単な計算では、地球の平均温度がマイナス18度C、つまり255Kとなる。だが、実際の温度は、約16度Cである。どうして、こんな差が出るのだろうか。
この差が温室効果によるものだというのは正しいが、事はそんなに単純ではない。大気は、体積にしてほぼ78%が窒素、21%が酸素、残り1%がアルゴンである。足すと100%となる。これら3種の気体はすべて、流入してくる太陽放射と出ていく地球放射をどちらも透過させるのである。例のごとく、悪魔は細部に宿っている。これら3種の気体は、大気のほぼ100%を占めるが、これですべてというわけではない。

地球の温度の計算値と実際の値との間の約34度Cの差は、微量の水蒸気、二酸化炭素、メタンや他のガスが大気中にあることで起こる。

水蒸気は、赤道の最も多湿な大気中に堆積にして4%、南極では1ppm(part per million)以下含まれている。面白いことに、一般的なイメージとは逆に、この南極の乾燥状態は、南極にほとんど雪が降らないことを意味するのである。気温が低いため、一旦降った雪は融けないのである。
二酸化炭素は大気中、体積にしてわずか360ppmを占めるにすぎないが、地球温暖化に関する国際的大論争の的となっている。二酸化炭素と他の「温室効果ガス」は、それら特有の化学的性質のために重大な役割を果たしているのである。それは、この気体が、太陽放射には透過性をもつが、赤外放射はよく吸収するという分子構造をもつからである。これらの気体は、いわば一方通行のフィルターで、地球温度を34度Cも引き上げる原因となっているのである。これらの気体の存在量が増え続ければ、将来、地球全体の気温を上昇させる原因となるであろう。
雲による遮蔽があるため、詳細に関してはそんなに単純ではない。また、地球内部の放射から作りだされる少量の熱もある。こうした要因は影響がごくわずかなので、議論を複雑にするだけで、結論を変えることはない。温室効果ガスが温度差34度Cの主な原因である。