【COP26】 合意採択前に議長、謝罪し涙ぐむ 石炭めぐり
COP26「グラスゴー気候合意」で高まる日本への圧力、各国の削減目標と比較
気温上昇を1.5℃に抑える努力追求へ
2021/11/24 MONEY PLUS
英国グラスゴーで10月31日から開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、11月13日に「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕しました。
地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で合意された、産業革命前からの気温上昇を2.0℃に抑える目標から前進し、1.5℃を重視して排出減に向けた取り組みを進めることで一致しました。
日米欧は2050年のカーボンニュートラルを長期目標としていますが、中国やロシアは2060年を目標年にしており、前倒しを求める声も出ています。また、このままでは水没してしまう懸念が強いモルディブなど島しょ国は、早急な気候変動対策を要請しています。
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気候変動は、ここで今まさに起きている 気候変動を止める より
【主要人物】バート・ボリン(1925~2007年) 気候変動に関する政府間パネル(1988年~)
産業革命以降、人類は二酸化炭素(CO2)の排出を増加させることで、地球の自然環境を変えてきた。人類社会は時代を追うにつれて科学技術によりますます進歩を進めてきたが、その科学技術――石炭のエネルギーを使う汽車、船、工場から石油を燃料とする自動車や飛行機まで――が、自然界とそこで生きる生物種に悪影響を与えてきた。気候変動が人為的な原因で起こっていることを科学者たちがより強く認識すると、この現象を研究し、生じている被害をもとに戻すことはできなくとも止める方策について提案するために、世界規模の研究チームが形成された。
気候変動の影響は多岐にわたる。大気中のCO2が増加することで地球温暖化が進み、極地の氷帽を溶かし、海水温を高め、海面を上昇させ、海水温の上昇に適応できない生物種を死滅させる。また、地球の気象パターンを変化させ、北大西洋地方ではハリケーンが活性化して猛威をふるい、その進路には死と荒廃がもたらされる。乾燥地域では山火事と旱魃が頻繁に発生し、寒冷地方では冬が厳しさを増す。
また、すでに世界は極端な気象による大災害にさらされやすくなっており、熱帯の季節風による災害が発生しやすい地域は、人命と生物のハビタット(生息・生育場所)の喪失において、とりわけ著しい影響にさらされている。
IPCCの創設
1988年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:the Intergovernmental Panel on Climate Change)」が2つの国連機関、「国連環境計画」と「世界気象機関」により、スイスのジュネーブを本部として設立された。IPCCの前身である「温室効果ガスに関する諮問グループ」の一員だった、スウェーデンの気象学者バート・ボリンが初代議長に就任した。
IPCCは、人間の活動に起因する気候変動への、国際的に強調した取り組みに寄与するために創設された。IPCCは、気候変動に関する主要な国際条約で、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」で採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC:the United Nations Framework Convention on Climate Change)」を支援するため、科学的研究に基づいた報告書を発行している。また、気候変動がもたらす人間と環境への脅威に対する各国政府の理解を促すために、気候変動研究の概念を提供する「政策立案者向け概要」の発行も、その仕事に含まれている。
京都議定書
IPCCの創設から9年後の1997年に、国連加盟国は温室効果ガス排出の国際的規制の改善を目指す「京都議定書」を採択した。この議定書は、温室効果ガスの生態系への悪影響を抑えられるレベルまで排出を抑制することを目指し、国ごとの削減目標の設定を求めた最初の合意文書である。採択は1997年であったが、京都議定書は2005年まで効力をもたなかった。
「パリ協定」と将来
「京都議定書」は、2005年から2020年までに達成すべき削減目標を各国に課した。2020年以降、締約国は新たな議定書「パリ協定」を遵守することになる。国際協力による気候変動への積極的な対処が呼びかけられてから数十年のときを経て、2016年11月に、ニューヨークの国連本部で、この「パリ協定」にUNFCCC締約国195ヵ国が署名した。「京都議定書」と同様、「パリ協定」の主要目的も、各国の温室効果ガスの排出を合意レベルまで引き下げることにある。
苦肉の策
「パリ協定」の条項によれば、各国政府が協力し、産業革命以前の水準からの地球の平均気温上昇を2℃以下に抑えなければならない。その上で、できれば1.5℃未満の上昇にとどめることを目指すとしている。2016年に『アース・システム・ダイナミクス』誌に掲載された研究報告で、気候科学者カール=フリードリヒ・シュロイスナーとその共同研究者らは、平均気温が1.5℃上昇した場合、現在も経験している最高気温とよく似た地球環境になるが、2℃の上昇は、人類がいまだ経験したことのない「新たな気候状況」を到来させると主張した。
これに続くいくつかの研究は、1.5℃の目標も達成が難しいことを示した。2018年に、IPCCは「パリ協定」で課せられた責務に従い、地球温暖化に関する「特別報告書」をまとめた。報告された内容は驚くべきものであった。1.5℃の目標に向かうどころか、世界は産業革命以前の平均気温から3℃近くの上昇に近づこうとしているというのである。1.5℃の目標に向かい、それを達成するのは、各国政府には前例のない抜本的対策が必要とされるだろう。
全世界で人間活動により排出されるCO2を、2010年から2030年までの間に45%減らし、2050年には排出量を実質ゼロにする必要があるが、それは排出する分だけ大気中からCO2を取り除くことを意味する。
IPCCの2018年の報告書は、個々人がCO2排出削減における役割を担う必要を強調している。IPCCが変化の必要性を示唆する主要な分野は、土地利用、エネルギー、都市、産業であり、人々は電気自動車を受け入れ、もっと歩くか自動車で移動し、飛行機は温室効果ガスの排出量が多いので乗る回数を減らすべきであるとしている。
IPCCはまた、肉、ミルク、チーズ、バターの消費を減らし、その生産過程で放出される温室効果ガスを減らすよう推薦している。京都とパリで交わされた国際協定が、国際交渉において尊重されているうちに、CO2削減に向けてあらゆる手を尽くさなければならないことは、明らかである。