じじぃの「科学・地球_365_気象の世界ハンドブック・行動のとき・未来のシナリオ」

The RCP 8.5 Cheat: Debunking the IPCC's favorite climate-change forecast.

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=6SOEs0LzZCg


Manabe pushed Japan’s supercomputer progress

October 8, 2021 The Japan News
Syukuro Manabe, a cowinner of the 2021 Nobel Prize in Physics, is not only a meteorologist but also a contributor to the development of a domestic supercomputer in the 1990s.
His contribution is now linked to the Fugaku supercomputer, the world’s fastest, developed by Japanese research institute Riken.
In the past, weather maps were generally based on observations of clouds and atmospheric pressure. Manabe thought of creating formulas to numerically predict the flows of the Earth’s atmosphere and oceans based on the laws of physics.
https://japannews.yomiuri.co.jp/society/general-news/20211008-30483/

『地図とデータで見る気象の世界ハンドブック』

フランソワ=マリー・ブレオン, ジル・リュノー/著、鳥取絹子/訳 原書房 2019年発行

行動のとき より

気候にかんする学際的で国際的な科学研究がはじまってまもなく30年、おかげでわたしたちは気候変動の正確な分析を手にすることができている。この変動の背後にくっきりと影を落としているのが産業革命だ。それを機に、化石燃料が人間活動全体に導入され、そうしてわたしたちは現在、生活様式を見なおさざるをえなくなっている。

現在進行中の転換は、おもに2つの軸に沿っている。温室効果ガス排出の軽減、さらには削減と、もはや避けられない気温上昇のさまざまな結果に、わたしたちの社会が適応することだ。

未来のシナリオの研究

2014年に発表されたIPCC第五次評価報告書は、大気中の温室効果ガス濃度による結果の変化を、4つのシナリオで紹介している。温室効果ガスに対応する社会の選択と、気候変動のコストを比較し、行政の決定者に、対処する責任をとるよううながしている。そのなかでただ1つのシナリオが、地球の平均気温の上昇を2℃に抑えられるのだが、しかし、そこにいたるにはいくつもの道をたどらなければならない。

IPCCの仕事

気候変動に関する政府間パネルIPCC)は、1988年11月、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により、G7の主導で創設された国際的組織である。課せられた業務は、気候変動を対象とした科学的研究の点検と、気候変動の影響の評価、わたしたちの社会の未来を展望して、温室効果ガス排出緩和と、気候の新しい状況に適応する戦略に取り組むことだ。

未来のための4つのオプション

IPCCの科学者が、文献として発表された300のシナリオから最終的に決定したのが、21世紀から2300年までの温室効果ガスとオゾン、エアロゾルの前躯体濃度の変化を予測した4つのタイプのシナリオ、いわゆるRCP(Radiative Concentration Pathways=代表濃度経路)シナリオだ。これら4つのRCPモデルはそれぞれ、大気中の温室効果ガス濃度の変化と、地上ですべき社会・経済対策に対応したものだ。

RCPシナリオ

RCP 2.6 これは未来にかんする最初のオプションである。放射強制力が2100年のかなり前に3W/m2でピークになり、以降、地球全体の気温上昇を2℃以下に抑える政策が功を奏して排出量は減少に転じる。
RCP 4.5 これは2100年以降に放射強制力が4.5W/m2で安定する予測で、平均気温上昇は最高で2.6℃。
RCP 6 これは2100年以降に放射強制力が6W/m2としているが、この場合の気温上昇は1.4℃から3.1℃のあいだである。
RCP 8.5 これは2100年以降に放射強制力が8.5W/m2になるもので、平均気温の上昇も高く2.6℃から4.8℃。もちろん最悪のシナリオである。

すべては生活様式しだい

気象学者がこれらRCPに対応した気候の展望に着手したのに対し、それと並行して、社会学者や経済学者も社会的・経済的発展(都市化、消費、輸送、人口…)のシナリオ作成に着手、各RCPの温室効果ガス排出に対応する緩和と適応にかかるコストを計算した。これらの研究は、5種類のシナリオで発表された。
それがSSP(Shared Socio-economic Pathways=共通社会経済経路)シナリオで、各RCPに応じて、社会変化のさまざまな組みあわせを描いたものだ。それによると、一部のSSPはRCPの排出モデルと部分的に両立するが、ほかはそうではなく――つまり、想定されたSSPに対応する生活様式では、温室効果ガス排出量を必要なレベルに抑えることができないのである。このことからわかるのは、政治の責任者や経済の決定権者のほうが、より政策を決断できる立場にいるということだ。