じじぃの「カオス・地球_275_すばらしい医学・狂犬病・致死率ほぼ100%の病気」

狂犬病の犬に噛まれるとどうなるのか?【致死率100%】

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=6YJliG-tgRE


パスツール 狂犬病との闘い


【漫画】パスツール 狂犬病との闘い - 歴史人物に学ぶ!

2021-02-03 Hatena Blog
狂犬病ワクチン
現在の日本において、人が狂犬病で死ぬニュースはほとんど聞きません。
それは法律による狂犬病予防接種が徹底されているからに他なりませんが、世界では毎年約5万人もの死者が出ています。
発病すれば、必ず死に至る恐ろしい狂犬病に、パスツールは果敢に取り組みました。

実は彼が9歳の時、狂犬病のオオカミに噛まれた8人が死亡する事故を見ています。
https://cocolo.hatenadiary.jp/entry/2021/02/03/174919

すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険

【目次】
はじめに
第1章 あなたの体のひみつ
第2章 画期的な薬、精巧な人体
第3章 驚くべき外科医たち
第4章 すごい手術

第5章 人体を脅かすもの

おわりに

                  • -

『すばらしい医学―あなたの体の謎に迫る知的冒険』

山本健人/著 ダイヤモンド社 2023年発行

第5章 人体を脅かすもの

発症すると必ず死ぬ病気 より

狂犬病は多くの人命を奪う

致死率ほぼ100パーセント。世界でもっとも致死率が高い病気としてギネス記録にも掲載される感染症がある。狂犬病だ。

毎年、世界で5~6万人が狂犬病で死亡している。大半は狂犬病にかかったイヌに噛まれて感染したケースだが、ネコやコウモリ、キツネなどの野生動物から感染することもある。世界のほとんどの地域で狂犬病は絶えず発生し、多くの人命を奪っている。

ところが、日本でこの事実はあまり知られていない。イヌやネコに噛まれたことのある人は少なくないだろうが、日々狂犬病のリスクに怯えている日本人はいないはずだ。日本は世界でもまれに見る、狂犬病清浄地域だからである。

狂犬病清浄地域とは、狂犬病が蔓延(まんえん)していない地域のことだ。日本以外の狂犬病清浄地域は、アイスランド、オーストラリア、グアム、ニュージーランド、ハワイ、フィジー諸島の6地域しかない。つまり、ごく一部の島国や島嶼(とうしょ)地域だけである。

日本なら狂犬病にかかる心配はないという事実は、当たり前ではない。これは、1950年の狂犬病予防法の公布以後、先人たちが命の危険に晒さながら築き上げた貴重な環境だ。

1950以前は、日本でも多くの人が狂犬病で亡くなっていた。だが、狂犬病予防法によって飼い犬の登録やワクチン接種が徹底され、1957年に狂犬病が撲滅されたのだ。

それ以後、日本での狂犬病感染例はない。1970年に1人、2006年に2人、2020年に1人、いずれも海外でイヌに噛まれたのち日本で発症し、死亡した例があるのみである。

だが、この恵まれた環境を維持することは、さほど容易ではない。狂犬病に感染した動物が日本に侵入する危険性は常にあるからだ。

動物検疫所では、海外からの動物の輸入について、厳密な規則を定めている。特に狂犬病清浄地域以外からのイヌやネコを日本に連れてくる場合、まず皮下へのマイクロチップの埋め込み、2回以上のワクチン接種と抗体検査、さらには日本到着まで180日間以上の待機期間が必要となる。

こうした地道な努力があるからこそ、私たちは日本で狂犬病の心配をすることなく生活できるのである。

紀元前から知られた狂犬病
狂犬病は、狂犬病ウイルスが引き起こす人畜共通感染症である。人間を含むすべての哺乳類が狂犬病に感染しうるが、人から人に感染することはない。またワクチン接種によって予防が可能だ。

感染から発症までの潜伏機関は1~2ヵ月と長いのが特徴である。ひとたび発症すると治療法はなく、ほぼ100パーセント助からない。一方、狂犬病の蔓延地域でイヌやネコなどの野生動物に咬(か)まれ、狂犬病に感染した可能性がある場合は、発症を予防するためにワクチン接種を受けなければならない。これを暴露後ワクチン接種という。

日本から一歩外に出れば、狂犬病は日常的な病気である。海外での動物咬傷(こうしょう)のリスクを知っていることが何より大切だ。

狂犬病はさまざまな症状を引き起こす。発熱や頭痛、食欲不振、嘔吐などの感冒症状から始まり、興奮、錯乱状態になって幻覚が現れ、攻撃的になる。最終的には昏睡状態になり、呼吸停止に至って死亡する。

狂犬病の特徴的な症状に、「恐水症状」がある。その名の通り、「水を恐れる」というものだ。狂犬病ウイルスは神経に侵入し、その機能を侵す。水を飲もうとすると、神経が過敏になっているために喉の筋肉が痙攣(けいれん)し、患者が水を飲むことに過剰な恐怖を抱くのである。

こうした過敏反応は風が吹くだけでも起こり、これを「恐風症状」という。症状に対する恐怖が、こうした特異な現象につながるのである。

狂犬病は紀元前から知られた病気で、古代バビロニアハンムラビ法典にも狂犬病に関する記載があるという。また1世紀の古代ローマ医学書『医学論』で、この病気は「恐水病(hydrophobia)」と命名されている。はるか昔から、この恐ろしい症状は知られていたのだ。

だが、何千年もの間、病気の実態は知られず、予防法もないままだった。予防法もないままだった。狂犬病ワクチンが開発されたのは19世紀になってからだ。その最大の功労者は、フランスの化学者ルイ・パストゥールである。