じじぃの「狂犬病・パスツールが開発したのは何のワクチン?池上彰のニュース検定」

The life of Louis Pasteur

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CE2lnMorlqo

Louis Pasteur

池上彰のニュース検定

2020年6月10日 テレビ朝日 【グッド!モーニング】
きょうのキーワード 「細菌学の父」。

問題 「“細菌学の父” コッホが発見したのは?」

結核
ペスト菌
・ピロリ菌
正解 結核
池上彰さん解説】
 「狂犬病のワクチンを開発したルイ・パスツールに対し、ロベルト・コッホ結核菌を発見しました。18~19世紀、産業革命期の英国で結核が大流行しました。農村から都市に人口が集中し、労働者は長時間労働で免疫力が低下していきました。さらに当時は住宅の衛生状態も良くありません。その後、産業革命が各国に広がると、結核も世界に広がっていきました。こうした中で、コッホが結核菌を発見。結核は咳やくしゃみなどで結核菌が飛び散ることで、人から人にうつる病気だということがわかりました。結核治療の薬がいくつも生み出されたのです。コッホはコレラ菌も発見。コレラは激しい腹痛に襲われ、感染後1~2日で死に至る恐ろしい病気です。コッホはパスツールと並んで細菌学の父と呼ばれ、1905年、ノーベル生理学・医学賞受賞したのです」

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池上彰のニュース検定

2020年6月9日 テレビ朝日 【グッド!モーニング】
きょうのキーワード 「パスツールの仕事」。

問題 「パスツールが開発したのは何のワクチン?」

・ペスト
・インフルエンザ
狂犬病
正解 狂犬病
池上彰さん解説】
 「英国の医師エドワードジェンナーが天然痘ワクチン開発。それから約100年後、フランスの科学者ルイ・パスツールがワクチンを大きく発展させます。天然痘以外の病気にも応用が可能だと考え、様々なワクチンを成功させました。ワクチンはウイルスの濃度を弱くした薬です。それを体の中に入れると免疫ができて、細菌やウイルスと闘う力がアップすると考えました。免疫の仕組みを利用したのが予防接種です。最も有名なのは狂犬病のワクチンです。ウイルスを持つ犬などに噛まれると傷口からウイルスが体内へ侵入し強い不安感やけいれんの後に呼吸障害などがおき、死に至ります。発症すれば死亡率ほぼ100%という恐ろしい病気です。パスツールはフランス・パリに研究所を設立。そこで生涯研究を続け、近代医学創始者の1人となりました」

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『銃・病原菌・鉄 (上)』

ジャレド・ダイアモンド/著、倉骨彰/訳 草思社 2000年発行

家畜がくれた死の贈り物 より

進化の産物としての病原菌

病原菌は、その進化の過程で、ある個体(動物または人間)から別の個体へ感染するためのさまざまな手段を編みだしてきた。自然淘汰においては、うまく伝播して感染個体の数を増やすことができ、より多くの子孫を残すことができる病原菌が結局は生き残る。病気になったときに出てくるさまざまな「症状」は、じつは、病原菌が感染を広げる手段に人間を使おうとして、感染個体の体のはたらきをいろいろ巧妙に変化させていることの表れなのである。
自分の子孫を広めるためにもっとも何もしない病原菌は、受動的に、つぎの犠牲者にうつされるのを待つタイプである。たとえば、すでに感染している卵や肉を食べた人間に感染するサルモネラ菌も、誰かが口にしてくれるのをじっと待っている。旋毛虫症を引き起こす寄生虫は、十分に火の通っいない豚肉を食べた人間に感染する。寄生虫が引き起こすアニサキス症は鮨(すし)好きの日本人や、最近ではアメリカ人がときたま生魚を食べてかかる。こうした寄生虫は、動物を食べた人間にうつるが、ニューギニア高地の笑い病(クール―病)の病原体は、人肉を食べた人間に感染した。食人(カニバリズム)のあったニューギニア高地では、母親が料理していた感染者の脳に触った赤ん坊が指をなめたのがもとで笑い病にかかることもあった。
病原菌のなかには、感染個体から昆虫の唾液経由で別の個体に感染するタイプもある。マラリアを媒介する蚊、ペストを媒介するノミ、チフスを媒介するシラミ、睡眠病を媒介するツェツェバエなどは、病原菌をただ乗りさせる昆虫である。受動的に感染する病原菌でもっともたちの悪いのは、妊娠中の母親から胎児にうつるタイプである。梅毒、風疹、そしてエイズは、こうした感染をするので、性善説を信じる人びとは、倫理的なジレンマと闘わなくてはならない。
病原菌によっては、早く別の個体に感染できるように、感染者の体のはたらきを変化させるものがある。梅毒にかかれば性器が腫れる。この症状は、人間から見れば屈辱的な不快感でしかないが、梅毒菌にとっては、新しい感染者を増やすための仕掛けである。天然痘は皮膚に発疹を生じさせ、天然痘患者との接触を通じて直接的に伝播することもあれば、感染者の使用した衣類や寝具を介しての間接的伝播もある(白人は、「好戦的な」アメリカ先住民に、天然痘の患者が使っていた毛布を贈って殺すということもしている)。
もっと強烈な手段で伝播するのが、インフルエンザ、風邪、百日咳に代表されるタイプである。これらの病原菌は、感染個体に咳やくしゃみをさせ、新たな犠牲者にうつっていく。コレラは、感染個体にひどい下痢を起こさせ、新しい犠牲者となる可能性のある人の、飲料水の供給源に入り込んでいく。腎症候性出血熱(韓国型出血熱)を引き起こすウイルスは、ネズミの尿に入り込んで広まる。

感染個体の体の働きを変えてしまうことにかけては、狂犬病のウイルスに勝るものはない。このウイルスは、感染した犬の唾液に入り込むだけでなく、犬を凶暴な興奮状態におとしいれて噛みつかせては、その唾液を介して新たな犠牲者に伝播する。

しかし、病原体自身がいろいろ動きまわるという点では、鉤虫や住血吸虫にかなうものはない。これらの寄生虫の幼虫は、感染個体の排泄物に混じって河川や土壌に出てきて、みずから活発に動きまわって、つぎの犠牲者の肌に穴をあけて入り込むのである。
このように、性器の炎症、下痢、そして咳は、人間から見れば、「病気の症状」にすぎない。しかし、病原菌から見れば、進化の過程を通じて獲得した、より広い範囲に伝播するための方法なのである。