じじぃの「科学・地球_352_健康の世界ハンドブック・狂犬病・レプトスピラ症」

The global burden of leptospirosis


Leptospirosis in India: a forgotten tropical disease

14 Jul 2021 RSTMH
Leptospirosis, essentially a zoonotic disease that is bacterial in origin, is caused by pathogenic strains of Leptospira and is prevalent worldwide.
https://rstmh.org/news-blog/blogs/leptospirosis-in-india-a-forgotten-tropical-disease

レプトスピラ…洪水と犬の意外な共通点

2018年3月4日 毎日新聞「医療プレミア」
●重症型は「死に至る病
衛生環境の改善により、国内での患者数が大きく減少したため、この病気について耳にしたことがない人も多いのではないかと思います。
原因となるレプトスピラは、スピロヘータと呼ばれるグラム陰性(グラム染色でピンクに染まる)のらせん状の細菌です。感染すると、2~26日程度(平均10日)経た後、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、眼球結膜の充血などで発症します。約9割は軽症で自然治癒が期待できますが、一部は重症化します。
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20180302/med/00m/010/008000c

『地図とデータで見る健康の世界ハンドブック』

ジェラール・サレム、フロランス・フルネ/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

世界へのアプローチ より

健康のアトラスが、グローバルなアプローチなしですますわけにはいかないだろう。データがかならずしも比較可能なものではなく、国内の格差が国内平均値を無意味なものにしているとしてもである。本書のタイトルは、世界の健康をめぐる状況の一致点と不一致点を示というす意図を示している。平均余命、栄養状態、慢性病、医療の提供、母体の健康など、ほとんどすべてに関連性があること、そして健康とその決定要因への包括的なアプローチが必要であることはいうまでもない。
とはいえ本書では指標ごとに作業を進めて現状を示し、健康のダイナミズムを理解すること、すべての政策で健康を考慮に入れること、最重要課題の定義のむずかしさ、医療制度の持続性などの重要な問題を紹介している。
そして、特定の集団、疾患グループ、ニーズへの対応という観点から、現在のおもな健康問題に関連する指標を順次とりあげていく。

狂犬病レプトスピラ症――その他のおそろしい人獣共通感染症

イヌやネズミとのほぼ日常的な接触は、リスクとなる可能性がある。狂犬病は制御できない脅威であり、レプトスピラ症の重要性はまだ十分に認識されていない。

ことわざや格言を生み出させたもうひとつの病気があるとすれば、それは狂犬病である。このウイルス性の人獣共通感染症は、家畜や野生の哺乳類を宿主とする。狂犬病に感染したおもに肉食の動物から、かみ傷やひっかき傷により、あるいは傷口や粘膜をなめられることで、唾液を介してほかの動物や人間に感染する。狂犬病はほぼ世界中に分布しているが、報告数がきわめて少ないため、実際の負荷を評価するのはむずかしい。

狂犬病、犬だけでなくコウモリからも

人間と動物、とくに犬との密接な接触は、狂犬病のリスクを高めている。予防薬がないため、動物や人間の感染例は数多い。手あてをほどこさなければ、ほとんどの場合、臨床症状があらわれたあと死亡する。10分にひとりが狂犬病で亡くなっていて、アフリカでは犠牲者の95パーセント、アジアでは40パーセントが子どもである。死亡事例の80パーセントは、農村部で発生している。
アジアやアフリカでは、狂犬病の症例は症例はおもに犬によるものだが、アメリカでは人間の狂犬病の症例はほとんどコウモリによるもので、オーストラリアや西ヨーロッパにもその脅威がある。犬から伝染した狂犬病にかけられる総経済コストは、世界全体で86億米ドルと推定されている。世界で狂犬病の可能性がある犬にかまれた人への曝露後予防策にそそがれた資金の10パーセントがあれば、ペットや家畜の狂犬病を感染源から根絶するのに十分だとみられている。

レプトスピラ

ネズミの病気として知られるレプトスピラ症の世界的な有病率は、年間160万人と推定され、6万人が死亡している。(BEH[フランスの週間疫学報告書]、2017年)。レプトスピラ症はきわめて多様なレプトスピラ属菌によってひき起こされる細菌感染症である。熱帯の湿気の多い環境(アジア、ラテンアメリカ)やフランス本国など温暖な環境で暮らす人間や多くの動物に被害をあたえている。
その症状は、自覚症状のない病原体保有から、急死にいたる可能性のある激しい症状までさまざまで、あまり特徴的ではない。この病気は、診断がまだむずかしいため過小評価されており、もっとも貧しい人々に影響をおよぼしている。
手遅れにならないうち適切な抗生物質治療がほどこされれば、レプトスピラ症は治る病気である。
レプトスピラは環境のなかで生き残る能力にすぐれている。灌漑稲作が主要資源である東南アジアでは、長い雨季のあいだにレプトスピラに感染しやすい環境になっている。人間に追いやられた野生種が姿を消してしまうと、ほとんどの哺乳類、なかでも齧歯類が感染して、尿中のレプトスピラをさらに伝染させる可能性がある。たとえばタイでは、2000年からレプトスピラ症の診断が強化されているが、北東部の貧しい農民に影響をおよぼす重大な病気であることは以前からいわれてきた。レプトスピラ症は地表の水の存在に大きく依存しており、気候変動、大雨や洪水などの災害は、エピデミックが発生しやすい環境をもたらす。