じじぃの「科学・地球_351_健康の世界ハンドブック・ペスト」

The Black Death Interactive History Map

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-wUJbjGmv9w

The Path of the Black Death


The Path of the Black Death

NEH-Edsitement
https://edsitement.neh.gov/lesson-plans/path-black-death

遺体とダンス 死者敬う風習がペスト感染リスクに マダガスカル

2017年10月30日 AFPBB News
西インド洋の島国マダガスカルには、家族や先祖の遺体を掘り起こして新しい布で包み直し、遺体と共にダンスをするという神聖な儀式がある。
だが、同国でのペストの流行に伴い、遺骨や遺体を改葬するこの行事がさらなる感染リスクとなる恐れがあるとして当局が警鐘を鳴らしている。
https://www.afpbb.com/articles/-/3148550

『地図とデータで見る健康の世界ハンドブック』

ジェラール・サレム、フロランス・フルネ/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

世界へのアプローチ より

健康のアトラスが、グローバルなアプローチなしですますわけにはいかないだろう。データがかならずしも比較可能なものではなく、国内の格差が国内平均値を無意味なものにしているとしてもである。本書のタイトルは、世界の健康をめぐる状況の一致点と不一致点を示というす意図を示している。平均余命、栄養状態、慢性病、医療の提供、母体の健康など、ほとんどすべてに関連性があること、そして健康とその決定要因への包括的なアプローチが必要であることはいうまでもない。
とはいえ本書では指標ごとに作業を進めて現状を示し、健康のダイナミズムを理解すること、すべての政策で健康を考慮に入れること、最重要課題の定義のむずかしさ、医療制度の持続性などの重要な問題を紹介している。
そして、特定の集団、疾患グループ、ニーズへの対応という観点から、現在のおもな健康問題に関連する指標を順次とりあげていく。

ペスト――いまなお存在する人獣共通感染症

国際獣疫事務局(OIE)のよると、ヒトに感染する1400の病原体のうちの60パーセントは動物由来であり、動物の新興感染症のうちの75パーセントは人獣共通感染症である。人獣共通感染症には害のないものもあれば、きわめて危険なものもある。

人獣共通感染症の特徴は、共通の環境にいる人間と動物のあいだで、病原体が複雑な伝播のしかたをするということである。その出現、再出現、伝播、地域特性化が、人間の行動(狩猟、移住など)、社会経済的要因(劣悪な居住環境、衛生状態、貧困など)、気候変動(降雨、湿度、温度など)、保健政策(不十分な監視システム、地域管理など)の影響を受けることは、ペストや、狂犬病レプトスピラ症の例が示している。

古代から第3のパンデミックまで

ペストが根絶されたと考えるのはまちがいだ。1850年代に中国の雲南省で発生し、おもに海上貿易ルートをつたって世界に広がった第3のパンデミックが進行中である。
アジア大陸は歴史的にもっともベストの影響を受けて大陸だった。しかし近年では、おもにマダガスカル、次いでコンゴ民主共和国(2013年から2018年までのあいだにそれぞれ2323年、410件の奨励が確認されている)で蔓延している。この2ヵ国で、世界で報告された症例の95パーセントを占めている。ペストは、媒介動物の吸血が介して動物から人間に伝染する。したがってその分布は、病原を保存する齧歯類(世界には感受性のある動物が約200種類いる)、ペスト菌(イェルシニア・ペスティス Yersinia pestis)、そして媒介動物(ペスト菌保有するノミであり、すべてのノミが感染源となるわけではない)が同時に存在するかどうかにかかわっている。もっとも多い腺ペスト(ノミによる刺し傷から感染してリンパ節が腫れる)と、人から人への直接感染によって発症する肺ペストという、ふたつの病型が存在する[リンパ節の腫れがみられないまま敗血症をおこす敗血症型ペストとよばれる病型もあり、全身が黒いあざだらけになることから「黒死病」という呼称のもとになった]。肺ペストは感染力が強く、致死率もひじょうに高いので、公衆衛生上の大きな脅威だが、この病型が症例の10パーセントを越えることはめったにない。
マダガスカルでは、ペストの病原保有率はクマネズミ(ラットゥス・ラットゥス Rattus rattus)で、媒介動物はシノプシルス・フォンケルニイ Synopsyllus fonquerniei[マダガスカル固有のノミ]や、ゼノプシラ・ケオピス Xenopsylla cheopis[ケオピスネズミノミ]などのノミである。1980年代に再出現して以来、腺ペストは高度800メートル以上の農村地域で猛威をふるっている。しかし、首都アンタナナリヴォの貧しい地区、また1991年から2000年にかけては港湾都市マハジャンガでも、日常的に症例が確認されている。そこでは、ペスト菌が小型哺乳類の集団のなかで存続しているということだ。
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伝染性が強く致死率が高い肺ペストは、おもに都市部、とくにそれぞれ港と空港があるふたつの都市で流行をひき起こしている。それをマダガスカル島住民の健康にかんする直接の公衆衛生問題であるだけでなく、地球規模ではないにしても、すくなくともインド洋規模に拡大するリスクへの憂慮すべき警鐘である。