じじぃの「科学夜話・第6講・時空・世界の仕組みを物理学で知る!宇宙の雑学」

この場で速読して本紹介 その119「文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る Kindle版」松原 隆彦 著

動画 YouTube
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SB新書 宇宙とは何か
【目次】
第1講 宇宙像の広がり
第2講 宇宙の地平
第3講 ミクロの世界へ
第4講 マルチバース
第5講 微調整問題と人間原理
第6講 時間と空間

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『宇宙とは何か』

松原隆彦/著 SB新書 2024年発行

第6講 時間と空間 より

相対性理論量子論は相性が悪い?

宇宙には時空のゆがみ、ねじれがあるということからタイムマシンの話になりました。

ブラックホールワームホールは、時空の物理学である相対性理論から予言されているものです。相対性理論によって、時空は我々が普段思っているものとは違うということはよくわかりました。観測者によって変わる「相対的」なものだし、重力によってゆがめられてしまいます。しかし、その中身を詳しく見たいと思っても、よくわからないのです。

量子論は1つのキーになりそうですが、一般相対性理論量子論は相性が悪いと言われています。
重力という大きな世界の話と、ミクロの世界の話を矛盾なくくっつけることがなかなかできないんです。普通は別々の世界の話なのでいいんですが、宇宙の初期について考えるには組み合わせる必要が出てきます。

昔からこれは大きな問題だったのですが、量子論相対性理論を部分的にくっつけることに成功したのがホーキングです。ホーキングの「量子重力論」によれば、ブラックホールは量子効果によってわずかに光を出します。光さえ出てこられないと考えられていたブラックホールですが、量子効果でエネルギーが漏れ出てくることを計算で示したんです。まだ観測はされていないので確実ではありませんが、理論的には正しそうです。

ブラックホールが光を出すということは、ブラックホールが見えるんですか?

光が弱すぎるので、通常の手段では見えません。ただ、ブラックホールはエネルギーを放射してどんどんやせ細っていき、最後の最後になるとものすごいエネルギーを出すため、そこを観測できるのではないかという話があります。ブラックホールがなくなる瞬間にぶわっと明るくなり、そこが観測できると考えられています。

時空とは何か?

相対性理論量子論を結びつけることは、今後の課題です。
ある量子論的な仮説によれば、時間はないほうが自然にも見えます。なぜかというと、計算をしているうちに、方程式から時間の変数が消え去ってしまうことが知られているんです。不思議ですね。時間を計算に入れる必要がなくなってしまうんです。

いったい、時間とは何なのでしょうか?

本当は、物理的な時間などというものは存在せず、人間が勝手に発明したものなのかもしれません。「お金」がモノの価値を記述し、交換を簡単にする発明品であるように、「時間」も物事の相関関係を記述するための発明品であって、自然に本質的に備わっているわけではないかもしれません。

「空間」もそうです。人間がこの空間にこういう距離があると認識しているだけであって、正体はよくわかっていません。

ホィーラーの参加型人間原理によれば、時間も空間も情報処理の一環でしかありまえん。時間も空間も、我々が思っているようには存在いていないのです。

観測的宇宙論

最後の最後に、また混乱してきましたね。
いいんです。宇宙についてわかったふりをせず、混乱しながらも追及していくことが大事なんです。

あまりにも大きく未知の部分が多い宇宙に対し、無力感を感じた人もいるかもしれませんが、理論と観測によって少しでも真実を知りたいという気持ちは大事です。

私が専門にしているのは、一言で言うと「観測的宇宙論の理論研究」です。
これは、観測に基づいて宇宙の全体構造を知ろうとする研究です。本来、物理学は実験測定に基づいて研究するものですから、わざわざ「観測的」なんて加える必要はないのですが、宇宙論については理論のみで突き進む時代が続いていたため、純理論的な宇宙論の研究と区別してこう呼んでいます。
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現在研究を進めているのは「宇宙論的摂動論」です。初期の宇宙で星ができたり銀河ができたりしていくとき、どういう振る舞いをするのかを調べるにあたって「摂動論」という手法を使ってやっているんです。宇宙の初期から現在までの複雑な構造が時間的にどう変化するかというのを、ひたすら手計算を主にして求めていくということをしています。

宇宙の変化は、手計算でなくコンピュータのシミュレーションを使っていく方法もあり、以前はそちらの手法で研究していたこともあったのですが、最近の自分には数式の手計算によってわかることを調べるほうが面白いですね。とは言っても、世界初の結果を得るために必要な必要な手計算は半端ではなく、この間、宇宙論的摂動論を使ったひと続きの研究のために計算した紙を数えてみたら1100枚以上ありました。

1人で孤独にやってばかりだと自分の精神が心配になるので、こういった孤独な研究と共同研究、学生たちとワイワイ楽しくやる研究などをとり交ぜ、平行してやっています。本書のような執筆活動も、その一環です。

宇宙を追うために数学は必要か?

手計算で何枚もの紙に計算を続けているなんて言うと、数学や算数が苦手だった方はイヤな気持ちになるかもしれません。

理論研究の中には数学ができない難しいものはあります。相対性理論はやや高度な数学を勉強しないとできません。でも、宇宙論は宇宙物理学のごく一部の分野です。天体の研究なら、物理や化学が重要ですし、シミュレーションのためのプログラムを武器にする人もいます。簡単な計算だけでも、アイデアに優れ、広く知れ渡る論文が書ける人もいます。あるいは体力や総合力を生かして宇宙飛行士になるという人もいるでしょう。

宇宙研究」の意味する範囲は広いです。子どもの頃、文系や理系の区別もなく、誰もが自由研究に夢中になったように、科学=数学ではありません。

宇宙とは何かを追い求める人類の根源的あ営みに加わるなら、宇宙が好きかどうかがいちばんだと思いますよ。

私も、宇宙が好きなんです。
もともと、こび世界はどうやっできているのかという子どもの頃の疑問から始まって、紆余曲折ありながら観測的宇宙論にたどり着きました。さまざまな面白い宇宙の理論を、観測データを使って解いていくなんてすごく楽しいじゃないかと思ったんです。それに、観測技術の発展はめざましいものがあり、これからさらに伸びていく分野だと思います。

まだまだ謎の多い宇宙だからこそ、さまざまな形の参加があり、また多くの面白い発見が出てくることでしょう。
「宇宙とは何か」がわかる時は、そう遠くないかもしれません。

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じじぃの日記。

松原隆彦著『宇宙とは何か』という本の最終章に、「宇宙を追うために数学は必要か?」というのがあった。

「いったい、時間とは何なのでしょうか?」

「本当は、物理的な時間などというものは存在せず、人間が勝手に発明したものなのかもしれません。『お金』がモノの価値を記述し、交換を簡単にする発明品であるように、「時間」も物事の相関関係を記述するための発明品であって、自然に本質的に備わっているわけではないかもしれません」

私も何となく「時間」は「エネルギー」の遷移状態を別の尺度で表現するための道具ではないか、と思っています。

「宇宙を追うために数学は必要か?」

「『宇宙研究』の意味する範囲は広いです。子どもの頃、文系や理系の区別もなく、誰もが自由研究に夢中になったように、科学=数学ではありません」

私は文系や理系とに分けたとすれば、理系ではないです。

やはり、真理を拓いていく人は理系の人のような気がします。

ブラックホールが光を出すということは、ブラックホールが見えるんですか?」

もしかしたら、ブラックホールが見えるかもしれない。

なんか、ワクワクします。