『絶対に明かされない世界の未解決ファイル99』
ダニエル・スミス/著、小野智子+片山美佳子/訳 日経ナショナルジオグラフィック社 2022年発行
ロンゴロンゴの木版 より
【未解決ファイル 木片に刻まれた未解読の言語】
太平洋に浮かぶイースター島は謎に満ちている。西暦1100~1700ごろに彫られた900体もの不思議な巨大石像群はあまりにも有名だ。だが、島にはそれに劣らず不可解な謎がある。失われた文字といわれるロンゴロンゴが刻まれた木製の板だ。今もなお、なんとか解読しようと言語学者たちを躍起にさせている。
イースター島の先住民はラパ・ヌイと呼ばれ、彼らの母語を書き表わしたものをロンゴロンゴという。
19世紀にやって来たヨーロッパ人の記録によれば、島には幾何学模様や人間、動植物を表す記号を刻んだ木製の加工品が多数存在していたという。言語学者の多くは、これらの象形文字は人々の豊かな思いを表現する書き言葉だと考えている。近隣の島々には書き言葉が存在した証拠がないことから、他の言語の影響を受けずに独自の発達を遂げたと思われる。人類史上、きわめて希少な文字体系の一つだという。
この文字が生まれた時期についてはさまざまな謎がある。研究者の多くは、スペイン人がやって来てイースター島の領有権を主張した1770年よりも後のことだと考えている。ところがロンゴロンゴは100年ほどの間に忘れ去られ、解読できる者もいなくなってしまった。これは、征服者が自国の言語や文化を押し付けようとしたことと、ラパ・ヌイの人々が先祖から受け継いだ秘密を守ろうとした結果だと思われる。
19世紀には島の住民は激減してしまった。西洋から持ち込まれた疫病で死んだり、ペルーからやって来た奴隷商人たちに連れ去られたせいである。さらに、宣教師たちはラパ・ヌイの言葉には深く異教が根ざしていると怯えて弾圧し、ロンゴロンゴが刻まれた品々を破壊してしまった。1860年代に宣教師ヨセフ・エイローがロンゴロンゴを記録しようと試みたが、残存しているテキストを翻訳できる者を見つけることはできなかった。
文字を読む知識を持つ人が誰もいなくなってしまったのか、それともラパ・ヌイの人々はかつて文化を無惨に踏みにじった外国人の子孫などには協力しようとしなかったのか。1870年代後半には島の先住民は100人ほどにまで減っていた。ロンゴロンゴを読める者はすべて死んでしまったか、島から連れ去られてしまった。
今日、この象形文字が刻まれた木板は世界中でやっと25個が現存しているが、イースター島には一つも残っていない。ロンゴロンゴはイースター島の人々のことだけではなく、彼らの言葉についても、私たちに多くのことを教えてくれるはずだ。残念なことに、先人達が文化に対する敬意を持ち合わせていなかったばかりに、現代の私たちは謎の闇に閉ざされたままだ。
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じじぃの日記。
ダニエル・スミス著『絶対に明かされない世界の未解決ファイル99』という本に、「ロンゴロンゴの木版」というのがあった。
ロンゴロンゴは、イースター島で19世紀に発見された文字で書かれた記号のことだ。
ロンゴロンゴの記された25の木片(文字板)が19世紀後半に収集されたが、風雨による損傷などで破損されたのが多い。
「ロンゴロンゴ」という語は、これらの絵文字群を指す呼称であり、イースター島の土着語であるラパ・ヌイ語で、「暗誦、朗誦、詠唱」という意味であるという。