じじぃの「カオス・地球_119_なぜ世界はEVを選ぶのか?テスラとBYD・垂直統合の果実」

テスラ モデルS を4年間所有してみての感想 クルマの価値観が変わる衝撃!! E-CarLife with 五味やすたか

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DWJm8F9koCU


実際に乗ってみてどうだった?テスラモデルSについて教えて!

2021年4月28日 GoGoEV
●今回の対象車は、テスラ「モデルS」です!
テスラは、電気自動車やエネルギー関連製品を幅広く開発・販売するアメリカの自動車メーカーですが、日々なにかと世界の耳目を集める話題性の高さは抜群です。

そんなテスラの「モデルS」は、洗練されたパフォーマンスと高い安全性を持ったセダンタイプのEVです。
レバー操作で簡単に使用できる様々な自動機能を持ち、1充電あたりの航続距離も300㎞以上、加速もパワフルな電気自動車です。
とにかくスマートなイメージで人気の高い車ですが、一度は乗ってみたいという方も多いのではないでしょうか。
https://ev.gogo.gs/forum/1617251760

なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘

【目次】
はじめに

第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW

第2章 フォルクスワーゲン “地獄”からのEVシフト
第3章 これはトヨタの未来か VWが直面する5つの課題
第4章 「欧州の陰謀」論から世界の潮流へ
第5章 EVユーザーの実像 もはや「ニッチ」ではない
第6章 高級車勢は「EV専業」 ボルボメルセデスの深謀遠慮
第7章 フェラーリとポルシェ 半端では生きられぬエンジン
第8章 テスラとBYDの野望 電池と充電が生む新ビジネス
第9章 EVリストラの震源地 部品メーカーの下克上
第10章 EV化で仕事がなくなる?労働者たちの苦悩
第11章 「出遅れ」トヨタの課題と底力

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『なぜ世界はEVを選ぶのか――最強トヨタへの警鐘』

大西孝弘/著 日経BP 2023年発行

第1章 攻めるテスラ、BYD どうするトヨタVW? より

テスラとBYD 「垂直統合」の果実

テスラのマスクCEOは日本と浅からぬ縁をもつ。テスラは三洋電気(後のパナソニック)から電池を調達して、初代のEV「ロードスター」を完成までこぎ着けた。

日本が危機の際には駆けつけた。2011年3月に日本を揺るがした東日本大震災東京電力福島第1原子力発電所の事故が起き、エネルギー問題が日本を襲った。震災直後にマスク氏は太陽光発電装置を福島県相馬市に寄贈し、7月には着工式のため来日した。着工式では「寄贈が未来への希望につながればと思う」と語っている。

太陽光発電装置の寄贈自体は震災復興のボランティアの側面が強い。ただ、テスラのビジネスモデルの一端も示している。テスラは創業当時から単にEVを手掛けるだけではなく、太陽光発電や蓄電、給電などエネルギーインフラを含めたビジネスモデルを志向してきた。

「EVはもうからない」定説を覆す

「EVはエンジン車よりもうからない」。これが自動車大手の間では定評だった。しかし、テスラとBYDはEV時代に稼ぐビジネスモデルを確立しつつある。

キーワードは「垂直統合」だ。両社は10年ほどかけて、商品開発から材料の材料の調達、生産、販売までのバリューチェーンの主要部分を自社で手掛ける体制を整えてきた。

テスラはEVの企画・開発から主な部材の調達、EVの生産、販売を自社で一貫して狙っている。特に電池の生産にはこだわっており、半導体設計やソフトウェア開発も早くから重視してきた。電池材料を生産する鉱山会社とも直接契約し、充電インフラも整備するという徹底ぶりだ。

また、販売ディーラーを通さずにオンラインで直接販売できる点も大きい。ディーラーは消費者との接点としてきめ細かいサービスを提供できるが、その分コストがかさみ、販売価格を押し上げる要因になっていた。テスラはその役割を排除して大幅なコストダウンを実現している。既存の自動車大手はディーラーとの長い関係があるため、直販への移行は簡単ではない。

さらに、自前で急速充電規格「NACS」をつくり、充電ネットワークを整備。自社EVユーザーのためのサービスとみられてきたが、23年に入るとその利便性の高さに目を付けた自動車大手が相次いでNACSの採用を表明。米国のゼネラルモーターズフォード・モーターだけではなく、スウェーデンボルボ・カーや日産自動車など世界中の自動車メーカーがテスラ方式になだれ込んでいる。テスラは、こうしたメーカーのEVユーザーが充電設備を利用する度に課金収入を得られることになる。米テック大手の「GAFA」のようなプラットフォーマーになる可能性を秘めている。

BYDも垂直統合モデルに磨きをかけている。もともと電池メーカーであり、原材料の調達には強みがある。自社の工場では、「プレードバッテリー」と呼ぶ剣のように細長いセルの電池を生産している。EVモーターの制御などに使うパワー半導体の開発や生産も手掛ける。

電池やパワー半導体は自社のEVに使うだけではなく他のメーカーに外販し、量産効果を高めてコストを低減している。これらはいずれも供給量の制約があるため、BYDの価格決定権が強い。このため「他社のEVコストを上昇させてBYD製EVのコスト競争力を高めている」との指摘もある。

当然ながら、自社開発には時間とコストがかかる。このためテスラとBYDは長い間、収益が低迷していた。黒字化するまで創業から約20年を要したテスラは、経営危機がささやかれる時期が何度もあった。それでも両社は苦しい時期を何とかしのぎつつ、外部からスペシャリストを厚遇で招いて必要な技術を修得。開発や生産の力を高めていった。電池や半導体の不足が起こった時、多くの完成車メーカーは生産量を減らしたが、両社は内製品の活用で影響を抑えた。世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱が、両社にとっては存在感を高める追い風となった。

テスラの初期モデルである「モデルS」「モデルX」については、クルマとしての品質に疑問を呈する人も少なくなかった。だが、その後の「モデル3」「モデルY」は、走る・曲がる・止まるという基本性能が大幅に向上したと評価されている。テスラは今後、生産工程の大幅な見直しにより、次世代車の生産コストを従来車の半分に抑える方針だ。マスクCEOは2万5000ドル(約350万円)のEVの開発を明らかにしている。

あつれきを乗り越えて

既存の自動車大手もとって大一番となるのが、25年以降の”第3世代”のEVだ。用途に合った乗り心地や車内の機能をソフトウェアで定義するEVであり、第2世代以上の量産効果を狙える。

しかし、開発は簡単ではないだろう。
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既にテスラのEVはソフトが定義する領域が広くなっており、第3世代EVに足を踏み入れているともいえる。だからこそ、トヨタVWにとって、第3世代EVの開発が急務になっているのだ。

さらに根本的な問題もある。08年のリーマンショック以降、自動車大手は開発効率を高めるために、自動車開発の重要な部分の多くをサプライヤーに委託してきた。結果として強大な力を持つ部品メーカーが生まれ、「メガサプライヤー」ともてはやされた。エンジン車の開発における効率的な分業を追求してきた分、EV時代に合わせたビジネスモデルへの変化が難しくなっているのだ。

自動車大手は今こそ、EV時代に合ったビジネスモデルと製品をつくり上げなければならないが、まだその理想像は見えていない。あつれきが生じることを恐れず、変化に悩まなければ、第2世代のEVで先行する企業たちに先行する企業たちに市場の多くを奪われてしまうだろう。

では、巨大な企業が大胆な事業構造の転換を図る際には、どのような課題が立ちはだかるのだろうか。そして、それをどのように乗り越えればいいのか。

その参考になる存在が、EVシフトにいち早くかじを切ったVWだ。15年に発覚したディーゼル車の不正問題によって変わらざるを得ない状況に追い込まれたことで、経営資源を大胆にEVとその周辺領域に投じている。既存の自動車メーカーの近未来を占う「先兵」として改革に挑むVWの実情を次章で見ていこう。