じじぃの「カオス・地球_108_プーチンは何をしたかったのか?クレプトクラシ―(盗人支配)」

【中村逸郎氏の独自解説】プーチン政権が関与?相次ぐ新興財閥「オリガルヒ」の不審死 侵攻後に少なくとも7人死亡 背景にメーデーでの反戦アピールを警戒か(2022年4月29日)

動画 YouTube
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プーチンが最も恐れる男 ホドルコフスキー


プーチンが最も恐れる男の告白 M・ホドルコフスキー(石油会社「ユーコス」元社長)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な怨念から始まった」

2022年6月10日 文藝春秋digital
プーチン体制打倒とロシア再建への思い
ロシア大統領ウラジーミル・プーチンが、最大の「政敵」とみなした人物がいる。「石油王」と呼ばれたロシア石油大手ユーコス元社長、ミハイル・ホドルコフスキー(58)だ。

ホドルコフスキーはソ連崩壊後、ボリス・エリツィン時代の民営化で国有資産を買収し、1990年代に30代の若さでユーコスを設立した。同社はロシアの石油生産の2割を占め、彼は新興財閥「オリガルヒ」の筆頭格に台頭し、政財界での影響力を強めた。
https://bungeishunju.com/n/n25a5de8b85b4

プーチンは何をしたかったのか?

【目次】
はじめに
第1章 プーチンは、何をしたかったのか?――なぜクリミア併合、ウクライナ侵攻へ至ったか
第2章 プーチンとは、いったい何者なのか?――スパイを夢見た少年時代、若き日の挫折、そして一大転機で権力者へ
第3章 どうやってロシア大統領になったのか?――最高権力者まで上り詰めた疾風怒涛の4年間
第4章 権力者となったプーチンをとりまく人々――政治を動かすオリガルヒ、愛すべき家族や親族

第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは?――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る

第6章 プーチンの支配はいつまで続き、どう倒れるのか?――プーチンの哀れな末路と、ロシア再生への道

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プーチンは何をしたかったのか?』

寺谷弘壬/著 アスコム 2023年発行
妻に恐怖の「ヴァンパイア」と言われたプーチンの真実!ロシア研究60年の著者がQ&Aでズバリ回答!

第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは?――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る より

プーチンを頂点とする「クレプトクラシ―(盗人支配)」体制とは?

――ソ連崩壊の大混乱で、さまざまなオリガルヒ(新興財閥)が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)。そのなかからプーチンは、より使える者や信頼に足る者を仲間に引き入れ、ますます大金持ちとし、支配体制を固めていったわけですね。その”手口”を解説してください。

以下、強調印字は筆者による。
「クレプトクラシ―」は、ギリシャ語の「盗む」(クレプテス=kleptes)と「支配」(クラトス=kratos)を合わせた造語で、つまりは「泥棒政治」「盗人支配」。少数の政治家や官僚らが、国民や国のカネや資産を横領し、私服を肥やす政治・支配体制をいいます。

「クレプトクラット」は、その体制をつくる泥棒政治家や盗人大富豪たちです。

ソ連崩壊の混乱に乗じて富を築いた「オリガルヒ」たちを前章で見ましたが、プーチンは彼らを使って自らの地位を高めて、体制を安定させ、強いロシアを構築していくつもりです。

そこで、オリガルヒ全般を育てるのでなく、自分に忠誠を誓い”熱心なファン”のように信奉し、自分の信頼に足るオリガルヒを選んで育成することに、プーチンは精力を傾けました。

そのために彼らをクレプトクラットに仕立てます。社会主義ソ連は、なんでもかんでも国有の無責任経営でしたから、これを民営化するようなふりをして、独占的に彼らに経営させて、盗み取らせます。

プーチン本人が“盗人大統領”の烙印を押されてはまずいので、ごく少数の近しい者たちに富を築かせ、その富を自分が密かに、かつ自由に入手し利用できる仕組みをつくるのです。

クレプトクラットは、小はトルストイ家の館、中は1企業や1業種、大は1州や国全体にわたるものまで、さまざまなものを盗みます。それで権力を持ち、クレプトクラシ―体制の一角を築きますから、ふつうのオリガルヒ(新興財閥)とはちょっと異なります。

もっとも、これまで検討したオリガルヒの一部や、後に触れるシロヴィキ(治安・国防関係省庁の職員とその出身者をさす)の一部とは重複するようです。

クレプトクラットに国家資産をわたす典型的な手口として「ユーコス事件」を見ましょう。ユーコスはホドルコフスキーが、マフィアが一部乗っ取っていた国営油田を買い取り、近代化して統合してつくった石油会社です。彼は1995年から共同所有者・責任者で、外国資本を入れてさらに巨大な会社にしようとしていました。2003年ごろホドルコフスキーの財産は150億ドルと推定され、ロシアどころか世界有数の大金持ちの1人だったのです。

ところが、03年ロシア当局が横領と脱税容疑でホドルコフスキーを急襲して逮捕。その前に彼はプーチン批判を公言し、野党に献金していました。逮捕は「そんな者はこうなる」というプーチンの見せしめであり、ほかのオリガルヒたちへの警告でした。

彼は05年に脱税・詐欺・マネーロンダリングなどで有罪が確定して収監され、13年にプーチンの恩赦で釈放。そのあとドイツをへてロンドンへ事実上、亡命しています。

では、元のユーコスの企業資産がどうなったかというと、きわめて巧妙な手続きによってロシア最大の国策石油会社ロスネフチの傘下に入りました。ロスネフチのCEO・会長の地位に12年からいるのが、長年プーチンの秘書的な存在だったセチンです。