プーチン氏は何を考えているのか ロシアの新聞編集長や政治家に聞く
プーチンとメドヴェージェフ元大統領
15年前に発せられていたプーチンのNATO、アメリカに対する“ぶちギレ”演説
デイリー新潮
2008年当時、プーチン首相はメドヴェージェフ大統領（左）との二頭体制を敷いていた。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/03040607/?photo=3
プーチンは何をしたかったのか？
【目次】
はじめに
第1章 プーチンは、何をしたかったのか？――なぜクリミア併合、ウクライナ侵攻へ至ったか
第2章 プーチンとは、いったい何者なのか？――スパイを夢見た少年時代、若き日の挫折、そして一大転機で権力者へ
第3章 どうやってロシア大統領になったのか？――最高権力者まで上り詰めた疾風怒涛の4年間
第4章 権力者となったプーチンをとりまく人々――政治を動かすオリガルヒ、愛すべき家族や親族
第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは？――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る
第6章 プーチンの支配はいつまで続き、どう倒れるのか？――プーチンの哀れな末路と、ロシア再生への道
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第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは？――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る より
なぜメドヴェージェフ元大統領は、プーチンになめられっぱなしなのか？
――大統領を1期務めたメドヴェージェフもシロヴィキですか？ 大統領になったので、プーチンの後継かと思ったら違うようですね。どんな人物なのでしょう？
以下、強調印字は筆者による。
後継というほどの人物ではなく、プーチンのプロテジェ（子分）にすぎません。もっとも、ペテルブルク出身で中央の大統領になったのは、プーチン以外には彼だけです。メドヴェージェフはもともと法律に詳しい政治家です。諜報機関や軍の経歴もなく、純粋な、あるいは典型的なシロヴィキではありません。ただし、シロヴィキ集団の安保会議メンバーだけではなく、副議長ですから、ここで詳しく見ておきます。
65年生まれで、まだ50代と若いメドヴェージェフは、レニングラード大学講師だったときサブチャーク教授に誘われ、彼の顧問に就任。プーチンと出会い、プーチン議長の対外関係委員会で5時間法律顧問でした。その後、ロシア最大の林業会社イリムパルプの法律顧問から社長となり、99年11月にプーチンに呼ばれてモスクワへ出ました。
00年プーチン最初の大統領選挙に貢献した後は、大統領府第1副長官、同長官、第1副首相などを歴任。林業会社の株を買い増して大株主となり、ガスプロムのCEOや取締役会長も務めたことがあります（大統領就任時に辞任）。
メドヴェージェフは08年、プーチンに指名されて大統領選挙に出馬し、70％以上の得票で当選。12まで大統領1期を務めました。これは憲法上プーチンが2期8年しか大統領をできなかったからで、ようはプーチンの”つなぎ”。その間、プーチンは首相です。
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もっとも彼は、プーチン以外からも、なめられています。
08年にはリーマンショックが起こって、金融危機は「すべてアメリカが始まりだ」と非難しましたが、何も解決できません。そこで、経済に苦しむ大衆の支持を得ようと、反汚職を大々的に取り上げ、大統領令で、「反汚職評議会」を発足させました。
プーチンから引き継いだ「オリガルヒ・ロビー」連中を集めて汚職問題を話し合ったときのことです。彼が「賄賂はよくない」と切り出すと、デリパスカが「裁判所は汚職の根源だ」、フリードマンが「刑期の決定がでたらめだ」と突っ込み放題。みんな「俺ら全員、大なり小なり”盗人稼業”じゃねえか」と思っています。「汚職はダメ」と自分だけいい子のメドヴェージェフに、ふざけんなと言い返したくもなったでしょう。
実際、メドヴェージェフは汚職まみれの男です。5800万ドルかけたクラスノダール地方の「メドヴェージェフの冬の宮殿」に一家で出かけて長期休暇をエンジョイ。モスクワに2つとペテルブルクに1つマンションが、ほかにソチやヴァルダイにも別荘があります。
プーチンが首脳だと、大統領はよほどヒマなのか、よく「黒海宮殿」に出かけてジムに精出していました。黒海宮殿は、ナワリヌイが15億ドル以上すると糾弾したとき、プーチンの柔道仲間のローテンベルグ（ロシアの富豪、プーチンの親しい友人）が「私が所有」と説明した豪華な建物です。もちろん事実上プーチンのものとされています。
