じじぃの「カオス・地球_79_デンジャー・ゾーン・情報技術の覇権争い」

米が中国通信5社の販売・輸入禁止(2022年11月26日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=x5YHAvJKVNY


【独自】日本製「5G」普及へ米英と連携強化…ファーウェイ排除念頭に調達先多様化

2021/01/11 読売新聞
高速・大容量通信規格「5G」の通信網整備に向け、日本と米国、英国政府が、日本製の機器や技術の普及に向けて連携を強化することが明らかになった。
米英は、中国通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)製品の排除に乗り出す一方、調達先を多様化する方針を掲げている。市場占有率(シェア)で見劣りするNEC富士通など日本勢にとって、劣勢を挽回する好機が訪れている。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20210111-OYT1T50011/

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること

第7章 デンジャー・ゾーンへ

第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第7章 デンジャー・ゾーンへ より

デジタル時代の反帝国主義

その差し迫った危険のひとつが、中国の「ハイテク帝国」の出現だ。だがアメリカは、世界中で、中国のインフラプロジェクトに対抗する必要はない。財政的にも戦略的にも疲弊してしまうからだ。しかし中国がペンタゴンのいう「重要な」技術、つまり莫大な経済的・軍事的利益を生み出す可能性のある技術を独占し、その支配力を使って世界中の国々を陥(おとしい)れるような事態は阻止する必要がある。

歴史が示すのは、ある時代の重要な技術を支配する者がその時代を支配することだ。イギリスが「日の沈まない帝国」を築けたのは、主として蒸気、鉄、電信などを他国より早くマスターしたからだ。今日のアメリカの覇権は、鉄鋼、エレクトロニクス、航空宇宙、化学、そして最近では情報技術(IT)における優位性に依拠するところが大きい。

ところが最近の中国は人工知能、通信、量子コンピュータ、合成生物学などの分野で優位に立ちつつ、他国に圧力をかけて強制できる立場を目指している。中国が支配するハイテク勢力圏を永久に排除するには、アメリカが、技術革新への長期投資と、世界経済を管理する制度(たとえば世界貿易機関など)の改革に向けた骨の折れる努力をしなければならず、しかもこのような取り組みが成果を上げるには数十年かそれ以上かかる。

中国は、アメリカの研究開発の成果の成果を盗み、国際貿易協定を迂回することに、素晴らしい才能を発揮している。また、補助金やスパイ活動は中国の経済成長モデルにとってあまりにも中心的な存在であるため、その侵略的な経済手法をすぐに変えることができないのは明白だ。

現在のアメリカは、関税引き上げて威嚇するにせよ、新たな貿易協定でおびき寄せるにせよ、北京に公正で開かれた経済秩序のルールを守らせることをあきらめる必要があるだろう。その代わり、アメリカの政策は、北京の相対的な技術力を弱める。鋭いが範囲の限定されたものにすべきだ。それこそ今の時代の権威主義的な帝国を阻止する道であり、これはまさに20世紀にアメリカが権威主義的な帝国を次々と阻止した前例と同じである。

最良の方法は、中国を排除し、中国に対抗する非公式な経済同盟を結ぶことだ。このような強力関係のゴールドスタンダードは、冷戦時代に成立している。アメリカは世界で最も経済的に発展した民主主義国を「カントリークラブ」のような形で集め、排他的な貿易・投資ネットワークを築いた。
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もしアメリカが、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、イギリスの7ヵ国(いずれも緊密な条約を交わした同盟国だ)を参加させることができれば、強力な経済同盟を構築できる。

これらの国々は研究開発の分野で中国を凌駕しており、世界経済の4分の1近くを占め、アメリカがまだ支配していないチョークポイント技術のほとんどを生産している。このような活気のある同盟ができれば、将来的にその他のパートナーを惹きつけることも可能となる。

同時にアメリカとそのパートナーたちは、形よりも機能を優先させる必要がある。この非公式な同盟は、本格的な「経済NATO」になることはない。つまり加盟国が中国の経済的な圧力から互いを守ることを誓う、正式な拘束力のある条約に署名するような関係にはならない。その代わり、加盟国が課題に応じた柔軟なパートナシップを構築できるような、ネットワークを基盤とした構造を持つことになる。

たとえば半導体連合には、理想的にはドイツ、日本、オランダ、韓国、台湾、アメリカなど、最先端半導体の製造サプライチェーンのほぼすべてを構成する国々に参加してもらう。量子コンピュータと次世代の暗号技術の同盟は、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカからなる諜報同盟の「ファイブ・アイズ」が主導できる。運用のレベルでは、自由世界の経済同盟は重なり合うパワーブロックの集合体で、重要な課題において団結することになる。

これらの分野で成功するには、こちらが速く動くと同時に、相手のペースを落とすことも必要となる。臨時に結成された各同盟は、重要技術で北京を上回るという、ポジティブな目標を追求する。そのために共同で研究開発を行い、国際的な技術基準を設定する。

それと同時に、この同盟は中国のイノベーションの足枷(あしかせ)となり、北京による最先端の技術へのアクセスを不可能にする厳しい輸出規制や投資規制(もちろん加盟国は旧モデルを中国に自由に販売してよい)を行い、中国共産党と共謀する企業を有利にしてきた資金の動きを制限する。

したがってこの同盟は実質的に、冷戦時代にソ連圏への先端技術を禁輸した「対共産圏輸出統制委員会」(通称ココム)を改良した「ミニ・ココム」として行動することになる。

アメリカとその同盟国は、すでに中国が先進的な半導体やそれに関連する製造装置などにアクセスできないよう動いており、ファーウェイ社の通信分野の契約の履行能力に壊滅的な影響を与えている。

クラウドコンピューティング、先端ロボット工学、機械学習など、その他の分野でも北京の勢いを止めるため、同じような多国間禁輸措置が必要となるだろう。
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したがって「選択的な多国間デカップリング」は、コストはかかるが達成可能であり、経済面のデカップリングのコストは誇張されるべきではない。仮にアメリカの対中輸出が半減したとしても、それはGDPの0.5%以下の減少にしかならないからだ。ただし、特定のアメリカ企業と同盟国の企業は、中国からの収益で数十億ドルを失う可能性がある。したがってこの多国間デカップリングは、金儲けの計画ではなく、ダメージを限定する措置なのだ。

カップリングによって何百万人分ものアメリカの雇用が戻ってくることはないが、中国の略奪から多くの既存の雇用と企業を守ることはできる。アメリカと同盟国の企業たちは中国市場へのアクセスを失うかもしれないが、中国の強制とスパイ行為からの保護は得られる。とりわけ後者は、アメリカの企業に対して毎年2250億ドルから6000億ドルの被害を与えているのだ。たしかにデカップリングのコストは大きいが、北京との「日常的なビジネス関係」を維持するためにかかるコストとは比較にならない。

ただし、中国のハイテク帝国が崩壊しても、北京はまだ強力なイデオロギーのツールのような、その他の手段を自由に使える。

中国の経済的な影響力に対抗する一方で、アメリカとその友好国は自国の民主制度を権威主義の攻撃からも守らなければならない。民主制度の促進は評判が悪いかもしれないが、民主制度の保護は、ますますかけがえのないものになっている。