じじぃに「カオス・地球_73_デンジャー・ゾーン・閉じつつある包囲網」

空母化進む「いずも」でF-35B発着試験(2021年10月5日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=VPIqWHgJ2D8

護衛艦「いずも」に着艦する米海兵隊のF35B


海兵隊のF35B戦闘機2機が護衛艦「いずも」で発着艦試験実施――軽空母化への大きな一歩

2021/10/5 Yahoo!ニュース
防衛省は10月5日、米海兵隊のF35Bステルス戦闘機が3日に海上自衛隊護衛艦「いずも」で発着艦試験を実施したと発表した。いずも型護衛艦の軽空母化に向けた歴史的な大きな一歩を踏んだことになる。
防衛省の発表によると、実施海域は四国沖で、米海兵隊岩国航空基地に属するF35Bが参加した。防衛省報道室は筆者の取材に対し、2機のF35Bが発着艦試験を行ったことを明らかにした。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e5e4ca4882035d44ec0e961df5bc3fdf927f98d0

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国

第3章 閉じつつある包囲網

第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第3章 閉じつつある包囲網 より

徐々に、そして突然に

中国を狙い撃ちにした法案は、アメリカの科学研究への投資を増やし、北京を重要なサプライチェーンから切り離し、アメリカの立場を強固にすることを目的としたもので、これは超党派の幅広い支持を集めた。

また、バイデンはこれがイデオロギー面での戦いであるとも指摘し、民主主義と権威主義との間の画期的な闘争が進行中であると宣言した。
そして北京の抑圧的なモデルを打ち負かすために、ワシントンは技術、貿易、防衛、その他の問題において仲間の民主国家たちと手を結ばなければならないと宣言したのである。中国外交部(外務省)の副部長は、2021年7月に「中国を崩壊させることを狙った全政府と社会全体のキャンペーンが行なわれているようだ」と不満を述べている。

もちろんこれらの措置は、競争的な戦略の端緒にすぎない。ただし厳しい現実として存在するのは、北京から見れば「中国共産党が世界的な超大国の第1の標的になってしまった」という事実だ。ある中国の軍事専門家は「アメリカでは統一戦線が形成された。中国への敵意はワシントンで超党派の意見が一致するポイントになった」と書いている。

そしてアメリカの中国接近が1970年代以降に非常に多くの扉を開いたように、アメリカの中国からの撤退は、それらの扉を閉じることにつながった。
アメリカ主導の世界秩序から利益を得てきた国々は、北京によって運営されるシステムのリスクを理解し始めている。中国が優位に立とうとするあらゆる場所で、ライバルたちが反撃しはじめたのである。

すべての前線で

トランプとバイデンの両政権下で、ペンタゴンは台湾防衛を軍事計画の中心に据えている。アメリカ政府高官たちは自分たちの台湾支援を「盤石」であると公言し、アメリカが中国の侵略に武力で対応することをかなり明確にほのめかしている。台湾海峡の軍事バランスは中国に有利な方向へシフトしているが、台北とワシントンはこの状況を打破しようとしている。

アジアの海域にある国々も同様だ。東シナ海で中国の強要のターゲットとなっている日本は、冷戦以降で最も積極的な軍部増強取り組んでいる。日本は10年連続で防衛費を増やし、南西諸島に沿った狭い海域に対艦ミサイルや高品質の潜水艦を配備して、中国の太平洋へのアクセスを遮断する計画を立てている。

もちろん現時点では全体的な海軍艦船の総トン数は北京に有利だが、日本は依然として中国よりも水上戦闘艦を多く保有している。この数には長距離対艦ミサイルで武装した、急速に増えつつあるF-35ステルス戦闘機を搭載する予定の、空母に換装された輸送揚陸艦などが含まれる。

中国の戦略家は「第一列島線」(西太平洋におけるアメリカの同盟国およびパートナー国の戦略的包囲網)を断ち切ることを夢見ているが、東京はそれを「血なまぐさい夢」に変えることができるのだ。

日米同盟もまた、反中的な傾向を帯びてきている。歴代のアメリカ大統領たちは、日米同盟が係争中の尖閣諸島をカバーするものであると表明しており、尖閣諸島をめぐる日中間の戦争は米中戦争に発展することになると警告している。日本側も憲法を解釈し直して、自衛隊アメリカと共に戦いため、より積極的な役割を果たすことを認めた。

日本の艦船や航空機は、中国の近海を通過するアメリカの軍艦や航空機をエスコートしている。アメリカ軍のF-35は日本の「準空母」への着艦訓練を行っている。

中国にとって最も憂慮すべきことは、日本が2021年に、中国が台湾を攻撃した場合、アメリカと緊密に協力すると合意したことだ。日本の副首相は、台湾への攻撃は日本の生存に対する脅威を構成すると宣言し、ワシントンと東京は共同戦闘計画の作成に着手している。

この計画には、台湾からわずか90マイルの最南端の沖縄列島に強力な長距離ミサイルを配備しているアメリ海兵隊も関わっていると報告されている。その一方で、日本は2017年にアメリカの離脱後もTPPを維持することにより、中国の経済覇権に対する地域の抵抗を主導してきた。

中国の指導者たちが東シナ海の方を向いてみると、彼らは「小さくて脆弱な敵」ではなく「世界最強の大国に支えられた地域の主要な敵」の姿を見ることになるのだ。

南シナ海周辺の諸国はそれほど強くなく、反中的な取り組みも弱い。だが完全に無防備なわけではなく、北京を寄せ付けないための軍事力の整備と、戦略的な友好関係の構築を進めている。

ベトナムは陸上の移動式の対艦巡航ミサイルの砲兵部隊や、ロシア製の攻撃型潜水艦、高性能地対空ミサイル、新型の戦闘機、高性能の巡航ミサイルを装備した水上艦を獲得している。
これらの兵器によって、ベトナムはその沿岸200マイル以内で活動する船舶と航空機を破壊することは可能となった。この海域は、南シナ海の西側3分の1と、海南島にある中国の巨大な軍事基地を含む。また、ハノイアメリカの軍艦を受け入れており、対米関係はかつてないほど緊密になっている。
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インドは2017年に、10年前から停滞していたクアッド(日米豪印4ヵ国)を復活させることに合意した。インド海軍は、ベトナムの軍艦と並んで南シナ海を通過した。アンダマン・ニコバル諸島(戦時における中国の通商封鎖の中継点)にミサイル発射装置を設置し、世界で最も進んだ対艦ミサイルを装備した艦船を建造している。

もちろん「非同盟」はインドで依然として強力なイデオロギーだが、もはや妥当な戦略とは言えない。ニューデリーは「北京からの迫り来る脅威を相殺するためにワシントンに傾倒する」というアンバランスな三角形を追求している。

インド太平洋の先に目を向けると、中国の世界的な野望が世界的な反応を引き起こしていることがわかる。2019年に欧州連合は、北京のことを「システム上のライバル」とレッテル貼りし、多くの加盟国が中国のテクノロジーによる5Gネットワークを禁止したり、静かに排除したりした。
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反撃しているのは大国だけではない。2020年には「宥和のための犠牲」になることの意味をよく知っているチェコ共和国が、思いがけない形でアメリカのファーウェイへの攻撃に加わることになった。チェコ上院議員台北を訪れ、ジョン・F・ケネディの有名な西ベルリンへの旅を思わせる言葉で「私は台湾人だ」と宣言したのだ。

その翌年、カナダは、外国人を「外交的な人質」として勾留――これはまさに中国が2018年、2人のカナダ国民に対して行ったことだが――する国を孤立させることを約束する、58ヵ国による外交イニシアチブを開始した。

リトアニアは、台湾が首都ビリニュスに外交代表部(非公式の大使館)を開設することを許可し、一方で中・東欧における中国の影響力に対抗するキャンペーンを開始した。同時に地域を超えた民主国家のグループは、新疆ウイグル自治区での大虐殺に関与した政権関係者に制裁を科すことで、中国共産党の支配体制の弱点を突いたのである。

これに対して北京は猛反発した。中国共産党は欧州の高官だけでなく、シンクタンクにさえも制裁を加えた。その結果、北京が米欧間のくさびとして期待していたEUと中国の投資協定は頓挫した。ある学者が鋭く指摘しているように、これこそ「中国の負け方」の典型的な例だ。つまり、高圧的で反射的な強硬さによって、多くの国々は中国共産党主導の世界で生きることがどれほど嫌なものかを思い知らされたのだ。