じじぃの「カオス・地球_81_デンジャー・ゾーン・台湾・長期戦に備える」

「中国が武力統一すると思いますか?」台湾の人に聞いてみた【WORLD REPORTS】|TBS NEWS DIG

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uicvauiuRFE

福建省・アモイ 中国台湾の統一を訴える看板


福建省・アモイ 中国台湾の統一を訴える看板

2020/11/13 毎日新聞
●中国、対米「持久戦」覚悟 強硬策備え、軍事・経済着々
「一国両制(2制度) 統一中国」。
海岸の近くに、台湾側へ向けた巨大な政治スローガンの看板がある。逆に台湾側の島を双眼鏡で見ると「三民主義民族主義民権主義民生主義) 統一中国」と中国側に対抗するような看板が同様に設置されていた。
https://mainichi.jp/articles/20201113/ddm/003/030/115000c

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること

第7章 デンジャー・ゾーンへ

第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第7章 デンジャー・ゾーンへ より

台湾を救う

最後に、アメリカは中国に「台湾での戦争は拡大するだけでなく長期化する可能性がある」と認識させる必要がある。
アメリカが多くの同盟国やパートナーを参戦させられるなら、北京にとってその戦争はさらに魅力を落とすことになる。人民解放軍は「東京が台湾侵攻の邪魔をするなら、日本を核攻撃する」と豪語するかもしれないが「世界の超大国」と「地域で最も強力なその同盟国」と同時に戦うことを本気で喜ぶことなどできない。

同様に、インドとオーストラリアの海軍は、マラッカ海峡を通過する北京のエネルギー輸入を阻止することで、ワシントンを助けることができる。

長期戦

産業革命と大規模な軍隊の出現以来、大国間戦争は短期間よりも長期間に及ぶことが多くなった。ナポレオン戦争アメリカの南北戦争第一次世界大戦第二次世界大戦は、いずれも急速な殲滅戦(せんめつせん)ではなく、執拗な消耗戦によって決着した。

もし中国が台湾への侵攻を試みて失敗した場合、その後も戦いを継続しようとする強いインセンティブが働く。習近平は「台湾という反逆者」と「アメリカという帝国主義者」に敗北を認めてしまえば、中国が地政学的困難に陥り、中国共産党の正統性が脅かされ、自身が打倒されることにつながることを恐れるはずだ。彼は戦争を続けることで、敗北寸前での勝利をもぎ取るか、あるいは単に面子(メンツ)を保とうとするかもしれない。
中国の台湾侵攻を阻止することは、第一次世界大戦の初期にフランスがマルヌ川で行った戦いに匹敵するかもしれない。つまり長引く流血の激戦の部隊を設定した、英雄的で必要不可欠な防衛線、という位置づけだ。

そのような紛争に勝つには、まずアメリカと台湾の弾薬が不足しないようにすることだ。アメリカは、中国の最も貴重な艦船や航空機を遠距離から破壊できる長距離ミサイルを大量に備蓄すべきだろう。台湾にとっては、短距離ミサイル、追撃砲、機雷、ロケットランチャーなどが重要な武器となる。アメリカと台湾は、これらの兵器をするだけでなく、戦時中にも新兵器の生産能力を向上させる必要がある。これはアメリカが歴史上ほとんどすべての主要な紛争で行ってきたことでもある。

台湾の兵器工場は中国のミサイルの標的(ターゲット)になることが明白なので、同盟国の生産力を活用することが重要だ。例えば日本の造船能力を利用して、シンプルなミサイル発射用のはしけを迅速に設計し、生産規模を急速に拡大させることなどが挙げられる。

同時に、アメリカと台湾は、中国が仕掛ける懲罰的な作戦を持ちこたえる必要が出てくるかもしれない。戦争が長期化すると、第一次世界大戦でドイツが無制限潜水艦戦に頼ったように、戦争当事者たちはたいてい、新たな効果的な戦力を探し求めるようになる。

たとえ上陸艦隊が台湾海峡の底に沈められたとしても、北京にはまだ台湾とアメリカを威圧する方法が多く残されている。たとえば海上封鎖で台湾を経済的に締め付けることもできるし、サイバー攻撃アメリカや台湾の電力網や通信網を麻痺させることもできる。また、台湾を空爆して屈服させようとしたり、または核兵器を使用したり、その使用を警告して脅すこともできるかもしれない。この戦術は、近年の急速な核兵力の増強のおかげで、北京にとり現実的に映る可能性もある。
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同盟国やパートナーたちと中国の海洋貿易を遮断する能力を示す演習を行うことで、アメリカは中国共産党に対し「戦争の長期化は経済的破局につながる」と脅すこともできる。中国の重要インフラ――さらには中国共産党統治機構にも――に対して厳しいサイバー攻撃を実施する能力を開発すれば、アメリカは北京に戦争被害の発生を警告することもできる。

西太平洋上のあらゆる場所で中国海軍の艦艇を撃沈し、北京が建設した基地やその他のグローバルな軍事インフラを標的に収める準備をすることで、アメリカは中国共産党に、台湾を巡る戦争でこれまで1世代かけて行ったきた軍事近代化と拡張を台無しにするリスクを背負わせることができる。

アメリカは台湾をめぐる戦争を、核が使用されない状態で維持することを明らかに望んでいるが、それでも「限定的な核オプション」、すなわち湾港、飛行機、艦隊、およびその他の軍事目標に対して低出力の核兵器を使用する能力を持つ必要がある。これによってアメリカは、中国の核の脅し対して信憑性のある対応ができ、抑止もできるようになる。

要するに、アメリカは北京に対して根本的な主張を突きつけるべきなのだ。つまり「戦争が長引けば長引くほど、アメリカは中国とその支配体制に大きな打撃を与えることになる」ということだ。

最後に、アメリカは戦争準備と同じくらい、戦争の終わらせ方について真剣に備える必要がある。核武装した敵との戦争は、アメリカの完全勝利や中国の完全降伏で終わるとは考えにくい。アメリカが戦争を有利に進めるほど、怯えた中国共産党はますます予測不可能になるかもしれない。

北京に戦争をやめさせるためには多くの持続的な強制と破壊が必要となるが、それと同時に面子を保つための外交も必要になるかもしれない。

たとえば台湾が政治面での独立を求めず、アメリカもそれを支持しないと約束する代わりに、中国が最終的に台湾への攻撃をやめるとすれば、アメリカはそのような取り引きを受け入れる方が賢明かもしれない(このアプローチの逆のものとして「銃撃が続けばアメリカの戦争目的はエスカレートし、おそらく台湾の正式な独立を含むことになるだろう」と静かに警告するかもしれない)。

そうなれば、アメリカは中国の拡張を阻(はば)む障壁としての台湾を守れたと示せるし、習近平は(実に怪しげではあるが)「台北に教訓を与えた」と主張することもできるかもしれない。
戦争を始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。したがってアメリカには攻撃的な中国をすり潰(つぶ)す必要がある一方で、その逃げ道を残しておく必要もあるのだ。