じじぃの「カオス・地球_72_デンジャー・ゾーン・コロナで変わった世界」

国連総会でトランプ氏「新型コロナは中国の責任」(2020年9月23日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=TB_FsUtJWow

国連総会、アメリカと中国が対立 新型ウイルスめぐり批判


国連総会、アメリカと中国が対立 新型ウイルスめぐり批判

2020年9月23日 BBC
国連総会の一般討論演説が22日、米ニューヨークの国連本部で始まった。ドナルド・トランプ米大統領が中国について、新型コロナウイルスを拡散したと批判するなど、米中の対立が鮮明になった。
今年の国連総会は新型ウイルスの影響で、大部分がオンラインで開催されている。各国は事前録画した首脳の演説を提出。代表は1人だけで、反論の機会はほとんどない。
トランプ氏は演説で、新型ウイルスの世界的流行(パンデミック)をめぐり、中国の責任を問うべきだと訴えた。
https://www.bbc.com/japanese/54260712

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国

第3章 閉じつつある包囲網

第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ
第8章 その後の状況

                    • -

『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第3章 閉じつつある包囲網 より

徐々に、そして突然に

アーネスト・ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』の中のある登場人物は、自分が破産するまで「2つの段階があった。それは徐々に、そして突然にやってきた」と説明している。これは米中関係の崩壊をうまく言い表している。

アメリカの政府関係者は、ある日当然、中国が「地政学的いナンバーワンの敵」であることに気づいたわけではない。2000年代初頭のアメリカが「責任あるステークホルダー」論を宣伝していた頃にも、当時のジョージ・W・ブッシュ政権はアメリカの太平洋地域における軍事態勢を静かに(そして非常に目立たない形で)強化していたのである。

オバマ政権の「アジアの軸足移動」は、アメリカの同盟関係を強化し、空軍と海軍の戦力をこの地域に移し、北京の人工島埋め立てキャンペーンに対抗するもの(あまり効果的ではなかったが)であった。しかし関与政策は2016年まで続いていた。ホワイトハウスペンタゴンが中国を「ライバル」と公言するのを禁止していたほどだ。

米中関係の断絶は、2017年にようやく訪れた。これは最も型破りな大統領ドナルド・トランプが、関与政策のパラダイムを打ち破って全面的な競争を開始したからだ。トランプ政権時代の戦略文書は、怒りの言葉に満ちあふれていた。

2017年12月に発表されたトランプ政権の「国家安全保障戦略」では、中国は国際的な無法者であり、「アメリカの価値と利益に反する」やり方で世界を作り変えようとしているとされた。その1ヵ月後に発表されたペンタゴンの「国家防衛戦略」では、アメリカの戦略的指針は「修正主義勢力」との「長期的、戦略的競争」にあると宣言された。
国家安全保障会議の報告書では、中国共産党が技術革新の主導権を握り、自由社会を脅かし、西太平洋を「中国の湖」にすることを阻止するための、実に詳細な計画が示されていた。

国務省も負けずに、冷戦の黎明期にジョージ・ケナンが書いた有名な「長文電報」を摸倣して「中国共産党は本質的に有害な攻撃性を持っている」と主張する。さらに長い文書を発表している。
    ・
アメリカ海軍は南シナ海での中国の領有権の主張に挑戦するために「航行の自由作戦」を強化し、前線に位置する脆弱な国家たちへの武器売却と軍事支援を増加させた。トランプ大統領の閣僚たちは世界中を飛び回り、ヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカの聴衆に、中国の「新帝国主義」の脅威を説いた。

貿易取引さえも競合的な武器となった。2019年に署名されたアメリカ・メキシコ・カナダの貿易協定は、署名国が北京と個別の自由貿易協定を結ぶことを事実上禁止している。もしアメリカが中国との競争での遅れを取り戻そうとしているように見えたとしたら、それはトランプの部下たちがまさにそのような観点で問題を捉えていたからだ。

確かにアメリカの政策は、必ずしも効果的でなかったし、一貫性があるわけでもなかった。だからこそ習近平政権はトランプ政権に脅威と同じくらいチャンスを見出した。全世界を相手に「アメリカ・ファースト」を標榜するトランプ大統領は、「アメリカは敵だけでなく同盟国からも被害を受けている」という考えを持っていたために、自身の反中国の指向性を打ち消してしまっていた。

トランプは就任早々に「環太平洋経済連携協定」(TPP)から離脱したが、これは前の2つの政権が中国の影響力に対抗するものと見なしていたものだ。また、彼はアメリカにとって最も親密な民主主義の仲間に対しても貿易戦争を開始し、数十年来の同盟関係を破壊することに喜びを感じていた。

最も奇妙だったのは、自称「強者」であるトランプが、習近平の国内での残虐行為をたびたび賞賛していたことだ。これは自分の政権がまさにその習近平の犯罪を罰しようとしたことと矛盾する。だがどのような矛盾があるにせよ、トランプは米中関係を不可逆的に破壊しており、ワシントンの大半はそれを称賛したのだ。

新型コロナウイルスは、トランプが始めたこの仕事を終わらせた。中国共産党の驚くべき行動は、中国の国際的な評判を大きく失墜させるものだった。なぜなら彼らは最初に「世紀のパンデミック」の存在を隠蔽しようとし、次に新型コロナウイルスが作り出した混乱を利用してライバルを打ち負かそうとしたからだ。

中国政府からリークされた報告書の中身や欧米の独立系機関の分析によると、中国に対する否定的な見方は天安門事件以来の高さにまで上昇した。中国を好ましくない存在だと答えたアメリカ人の割合は、2017年の47%から2020年には73%に上昇している。
    ・
バイデン大統領はトランプ政権の対中制裁の大半を維持する一方で、アメリカの半導体産業を強化するため500億ドルの取り組みを提案し、人民解放軍中国共産党の情報機関と関係のある中国企業アメリカの資本市場から追い出し始めた。

中国を狙い撃ちにした法案は、アメリカの科学研究への投資を増やし、北京を重要なサプライチェーンから切り離し、アメリカの立場を強固にすることを目的としたもので、これは超党派の幅広い支持を集めた。

また、バイデンはこれがイデオロギー面での戦いであるとも指摘し、民主主義と権威主義との間の画期的な闘争が進行中であると宣言した。

そして北京の抑圧的なモデルを打ち負かすために、ワシントンは技術、貿易、防衛、その他の問題において仲間の民主国家たちと手を結ばなければならないと宣言したのである。中国外交部(外務省)の副部長は、2021年7月に「中国を崩壊させることを狙った全政府と社会全体のキャンペーンが行なわれているようだ」と不満を述べている。

もちろんこれらの措置は、競争的な戦略の端緒にすぎない。ただし厳しい現実として存在するのは、北京から見れば「中国共産党が世界的な超大国の第1の標的になってしまった」という事実だ。ある中国の軍事専門家は「アメリカでは統一戦線が形成された。中国への敵意はワシントンで超党派の意見が一致するポイントになった」と書いている。

そしてアメリカの中国接近が1970年代以降に非常に多くの扉を開いたように、アメリカの中国からの撤退は、それらの扉を閉じることにつながった。
アメリカ主導の世界秩序から利益を得てきた国々は、北京によって運営されるシステムのリスクを理解し始めている。中国が優位に立とうとするあらゆる場所で、ライバルたちが反撃しはじめたのである。